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第百十八話 朝食そしてウランの登場

朝日に照らされ目を覚ます。

「窓を大きく作りすぎたな・・・」

全身を朝日に照らされ若干汗ばんで目を覚まし、反省する。

初めて寝るための小屋を作って寝たが、窓の大きさなどはしっかり考えないととても寝苦しい思いをして起こされる事を学んだ。

さっさと寝袋から出て普段着に着替えて外に出る。


「ふむ。誰も起きてないか。」

朝特有の清清しい空気に満たされた平原のど真ん中に立つ二つのテントを見て一人ごちてから適当な丸太を椅子にして朝食作りを開始する。



「ニコ君!?おい!二人共起きろ!ニコ君が朝食を作っているぞ!」

テントから顔を出したジャックが俺を見て驚いてテントの中に顔を引っ込めて二人を起こし始める。

「(そんなに焦らなくてもいいのだがな。)」

あまりにもジャックが焦っているので思わずそんな事を考えながら昨夜と同じく揺れるテントを眺める。


「ニフォフン、ふぉふぇんふぇ・・・」

「何を言ってるかわからん。そこに座れ。」

顔がボコボコのグレイが出て来て喋るのだが、何を言ってるのか全く理解が出来ない。

とりあえずグレイを隣にに座らせて料理の合間に治癒魔法を施す。


「ふぉぉ!痛みが引いて・・・ん?普通に喋れる?・・・ありがとうございます!」

「ただの治癒魔法だ。一々お礼をしないでいつも通りに接して欲しい。」

俺の治癒魔法の効果に驚いたグレイが俺に向かって頭を下げる。

おそらくジャックの教育の賜物なのだろうが俺としてはとてもやり辛いので、テントから顔を出してこちらを見ているジャックにも聞こえるようにしっかりと言っておく。




「フォフ!ニフォ!フファン!」

続いてブランがフォフフォフ言いながらテントから出て来る。

我ながら何を言ってるか意味がわからないが、フォフフォフ言ってるので仕方ない。

「ブラン?ここに座れ。」

「ファフェッ!?ブフェイファンフェファオファッッッ!?」

「僕もこんな感じだったのですね・・・ブラン?座りなさい?」

いつも通りの男前に戻ったグレイを指差しながらブランがフォフフォフ言っている。

ボコボコの顔すぎて表情もわからないので、何一つとして理解出来ないのでただただフォフフォフと煩い。

グレイがブランの肩を持って俺の隣に座らせるので、同じように料理を作りながら片手間に治癒魔法をかける。


「フィファみが引いて・・・普通に喋れる!さすがはニコだ!ありがとよ!」

「グレイにも言ったがいつも通りでいい。ジャック?普通でいい。」

ブランも柄にも無く頭を下げてくるので、テントから顔を出して満足そうに頷くジャックを睨みながら言っておく。



「わかった!で、ニコ?これは何だ?」

「朝食だからな。軽くあっさりと思って海鮮スープだ。」

「へぇ?昨日のピザに乗ってたクラーケンか?」

「それ以外に食材がないからな。」

「さすがはニコだ!俺は何も言えねぇ!」

ブランが鍋を指差して尋ねるので、俺は丁寧に答える。

ブランはジャック達と顔を見合わせてとても失礼な事を言いながら頷きあっている。


「お前ら喧嘩を売ってるのか?」

「まさかぁ?俺がニコに喧嘩を?嘘だろ!」

「そうです!ニコ君に喧嘩を売るくらいなら喜んでドラゴンに喧嘩を売ります!」

「そうですよ!ニコ君?僕達はニコ君の人となりを分かった上で納得しているのですよ?」

ジャック達が慌てて言っているが、更に喧嘩を売られたようにしか聞こえない。

思わず顔を顰めながら朝食を作っていると黒髪の女性が近づいて来る。

南の山脈の集落に住む水竜の魔族ウランだ。

噂をすれば影がさすと言うがグレイが噂をした途端に本物のドラゴンが現れる。

前に会った時は裸同然の目のやり場に困る服装だったが、今はワンピースを着てとてもオシャレな服装で外見からは人間にしか見えない。



「ル・・・今はニコかの?ちょっといいかの?」

「あぁ問題無い。どうした?」

「その森の奥で異常な魔力を感知して赴いたらお主の魔力を感じたでな?とりあえずこっちに足を運んだのじゃ!」

「ふむ。まぁとりあえず朝食を食べるか?」

ウランと話すと、ジャック達の言う通りに水竜が感づいて見に来るほどに東の森は異常な状況のようだ。

ウランと落ち着いて話をするためにも俺の隣をポンポンと叩いて促しながら、ウラン用の目玉焼きとトーストを追加で作る。



「かたじけないのじゃ!」

「もう少し待て。今出来るからな?」

ウランは嬉しそうに俺の隣に座り、ウランに見惚れていたジャック達が俺に詰め寄ってくる。

「ニコ君!その女性は誰ですか?是非紹介を!」

「森から出てきたぞ!?・・・にしても綺麗だ!

「ジャックもブラン気を確かに!綺麗過ぎます警戒するべきです!」

ジャックとブランが詰め寄ってくる、グレイが必死の形相で二人を我に戻そうとビンタしているがジャックとブランはお構い無しにウランに見惚れて効果は薄そうだ。


「ヒョッヒョッヒョッ!人間は面白い行動をするのじゃの?」

「お前の顔が綺麗過ぎるからだ。」

「ニコに言われると満更でもないのぅ!今宵は交尾かの?」

「朝っぱらからその冗談は何も返す気が起こらんな。」

朝日に照らされたウランがとても清清しい表情で生々しいことを言い出す。

なぜ少し褒めただけでそんな所まで話が飛ぶのかウランの思考回路が理解出来ない。



「ヒョッヒョッヒョッ!ニコが望むならいつでもいいのじゃぞ?」

「安心しろ。望んでない。」

ウランが何か言ってるが俺はしっかりと断わって、ウランに朝食を渡す。


「お替りはその()で一杯だけだぞ。」

「ぐぬぅ・・・突然押しかけて食べられるだけでも有り難いのじゃ・・・」

前のように鍋から直接飲んで、一杯なのじゃ!とドヤ顔をされてはたまったものでは無いので、しっかりと忠告をする。

ウランは恨めしそうに左手に持った空になった器を見て悲しそうに唸っているが、ここで甘い顔をするとまだ寝ているターニャ達の分が無くなってしまう。


「グレイ?ほら、隣に回してくれ。」

「え?あ、はい。ジャック、ブランに。」

「ん?あぁ、ほらよ。」

「お、おぉ。美味そうだな・・・」

俺が新たにトレーと取り出して食器を並べてスープを注ぎ、トーストと目玉焼きを乗せてグレイに渡す。

グレイに朝食を渡すとウランに見惚れていて朝食の乗ったトレーをノールックでリレーしているのでひっくり返さないかと心配になるが問題ないようだ。

同じようにジャックとグレイの分も用意して、最後に自分の朝食の準備を終え朝食を開始する。


「頂きます。」

グレイ達は自分の膝の上にトレー乗せたまま、美味しそうにトーストを頬張るウランを眺めていて朝食を食べ始める様子はない。

そして逆隣のウランはすぐに自分の朝食をすでに完食して暇そうにソワソワとし始める。

暇そうにしているだけならいいのだが、涎を垂らしながら俺の朝食を見つめ始めるので俺の朝食を取らないか本気で心配だ。



「色々と話したい事はあるが今は人目がある。後でいいか?」

「わかったのじゃ!ここら辺におるでの?そうじゃ!ついでに色々と欲しいものがあっての?」

「わかった。フィルも連れてこよう。食器はそこに置いといてくれ。あとで纏めて洗う。」

「美味い馳走だったのじゃ!」

ウランに言うとトレーを足元に置いて森の中へと消えて行く。

俺は朝食を取られる危険は回避できたとホッと一息吐いて朝食を再開する。



「ニコ君?」

「なんだ?」

「先程の女性は?」

「ちょっとした知り合いだ。」

森へと消えて行くウランを眺めていたジャックが俺に聞いて来る。

まさか水竜の魔族と説明する訳にもいかないので適当に答えておく。


「へ、へぇ?何者ですか?」

「・・・普通の・・・女だ。」

「普通の女は武装もせずに森の中から出てこないし、森の中に消えない!」

「細かい事を気にしてると禿げるぞ?」

俺がルドルフと気付いているジャック達には教えてもいいかも?っと一瞬考えたのだが、ジャック達を巻き込みすぎるのも駄目だろうと考えて適当にはぐらかしておく。

ジャック達も俺の言葉を受けてコソコソとニコの知り合いだからと話して納得しているようだ。


「じゃあ俺はみんなを起こしてくる。」

「ニコ君あれこれ任せてすまないね?」

「あ!ニコ君?治癒魔法は掛けちゃ駄目だよ?」

「へへへあいつらどんな顔でテントから出て来るかな?」

朝食を食べ終えたので、まだ朝食を食べているジャック達に一声かけて俺のテントへと向かう。

ジャックの言葉に首を傾げているとブランが楽しそうに話しているので、合点がいった。


「つまりあれか?筋肉痛だろうけど、治すなって事か?」

「そうです!ニコ君に治してもらっては正当な報酬を出せませんからね?」

「まぁよく分からんが了解した。」

「お願いします!」

ジャックに尋ねると俺の思惑は当たっていたようだ。

なぜ筋肉痛を治したら正当な報酬を出せないのか不明だが、それが依頼主の要望なら冒険者として答えるべきだろう。

ブランが俺の了承の言葉に笑みを深めてとても悪い顔になっている。




「臭い・・・」

テントの中は土と汗と解体中に付いたのだろう魔物の血の臭いが入り混じった悪臭で溢れていた。

よくこんな臭いのなかで眠れるものだと死んだように眠る四人を見て感心する。


「おいマット、ロジェ朝だぞ?」

とりあえず大の字で眠るマットとロジェをつま先で小突いて起こす。

「おはよ・・・痛!動けない・・・」

「おはよぉぉぉぉぉっ!??体がバキバキじゃあ!」

目を覚ましたマットとロジェが起き上がろうとして呻き散らし始める。

昨日の荷物運びでの筋肉痛で体が言う事を聞かないようだ。


「煩いわね・・・いったぁーい!」

「ターニャも煩い・・・体が動かない?金縛り?」

マットとロジェの呻き声に顔を顰めながらターニャとソフィアが目を覚まして同じようにその場でワシャワシャと引っくり返った虫のような動きをし始める。



「外で待っている。」

治癒魔法をかけてやりたいのだがジャックの、依頼主の要望なので何もせずにテントから出て焚き火の前で四人がテントから出て来るのを待つ。

「なぁニコ?四人はどんな感じだった?」

「筋肉痛で起き上がれないようだった。」

「ヘッヘッヘッ!しっかりと労働ってものを肌で感じてるみてぇだな!」

「あんな状態で王都まで行けるのか?」

「行けるのかじゃねぇ!行くんだよ!それが冒険者だ!」

ブランが楽しそうに話している。

酒を飲んでる時よりも楽しそうだ。


「おいブラン!出発の準備をするぞ!」

「へいへーい!俺は肉の取り出しだな?」

「リーダー?テント片付けましょう?」

ジャックとグレイが手早くテントを片付け、ブランが肉を土魔法で掘り出して運びやすいようにそりの上に乗せる。

「今なら誰も見てないな。」

三人共作業に集中しているので、俺は昨日から溜まっていた汚れた食器を取り出してまとめて洗浄魔法(クリーン)をかけて綺麗にして手早くマジックバッグに放り込む。


そうこうしていると体を引き摺るようにマット達がテントから出て来るので、みんなの朝食を準備して俺もテントを片付けるべく四人と入れ違いにテントへと歩を進める。

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