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第百十七話 東の森脱出

「よし!ソフィア準備しよ?」

「うん!」

「わしらもすぐに出発出来る様に行っとくか。」

「そうだね!」

夕食を食べ終わり満腹になったみんなはターニャを皮切りに出発の準備を始める。

マットとロジェは布で包んだロックリザードの胴体を持つようで前後で待機し、ターニャとソフィアはその他の肉を乗せた簡易そりの前で話したりしてソワソワとジャック達からの出発の合図を待ち始める。



「ニコ君?いつもこんな感じなのか?」

「そうだが何か問題があるのか?」

俺はやっと自分も食べられると焼き終わったピザを切り分けていると、とても不機嫌そうなジャックが話しかけてくる。


「食事を作る人間は大事にしないと駄目なのに・・・しかも一番戦闘力のあるニコ君をこんな蔑ろにするのは異常だ。」

「まぁ俺達は鉄級の学生冒険者だからな。」

俺の言葉に三人は納得してくれたようで何も言わなくなるのだが、ジャックだけでなくブランとグレイもとても機嫌が悪そうな様子だ。



「待たせたな。」

ピザをジャック作のスープで流し込んでから、みんなが使った食器をマジックバッグに放り込みながら言う。

「とんでもない!じゃあみんな出発だ!今日中に森を出るぞ!?」

「あの!すみません!!」

俺の言葉にジャック達が反応して森を進もうとするとソフィアが手を挙げて呼び止める。



「ソフィア・・・君だったな?どうした?」

「あの!ニコ君はどうして何も運ばないのでしょうか?運んでくれれば私達の負担が減ると思います!」

ジャックが振り向いて笑顔で聞くとソフィアが隣のターニャや後ろのマット達に同意を求めるように言う。

四人の奥にいるブランとグレイを見やると一様に俯いて額に手を当てながら首を横に振っている。

ジャックは?と思って振り返ると顔を真っ赤にしたジャックが激高して怒鳴ろうとしている所だった。


「馬鹿かっ!一番強い人間に荷物運びさせる馬鹿がどこにいるんだっ!?そんな事したら有事の際に初動が遅れるだろうがっ!」

「ジャック?その言い方だと俺はジャック達よりも強いことになるぞ?」

ジャックの言葉は大変ありがたいのだが、みんなの中で俺が銀級冒険者よりも強くなるのは絶対に許容出来ない。

四人には見えないようにジャックの背中を軽くパンチしながら注意しておく。


「怒鳴ってすまなかった。ニコ君は報酬はいらないそうだ、その分君達が頑張れば荷物運びだけで一人一万ゴールドは払えるだろう!頑張ってくれ!」

「「「「はい!」」」」

俺の言葉にジャックはバツが悪そうに頭をポリポリと搔きながら、今にも泣き出しそうな四人に言う。

四人は一人一万ゴールドと聞いて一瞬で笑顔になり元気よく返事をして今度こそ森を出るべく歩き始める。

「(現金なものだな・・・)」

俺はそんなみんなを見てそんな事を思いながら前を向いてジャックの隣を歩く。



「ニコ君?左前方をお願いできるか?」

「わかった。」

ジャックに言われ四人を囲むように陣形を組む。

俺は左前方を隣のジャックは右前方をブランとグレイは後方を警戒をするようだ。




「おいジャック。ジャイアントフロッグだ。」

「ん?・・・いた!こんな緑の多い所でよくわかるもんだ・・・ブラングレイ!ジャイアントフロッグだ行くぞ!」

「「おうっ!」」

しばらく歩いていると、ジャイアントフロッグを発見したのでジャックに教えるとブランとグレイを引き連れて走って行く。



ジャック達に気付いたジャイアントフロッグが食べようと舌を伸ばしている。

さすがは銀級冒険者だ、ターニャ達とは違いジャックは舌を腕にしっかりと巻き付かせてそのまま掴んで踏ん張ってジャイアントフロッグの動きを止める。

その間にグレイはジャイアントフロッグの舌を根元から切り落とし、ブランは例の弓で矢を放ちしっかりと頭に矢を命中させ、とても安全に戦闘を終え解体を始める。

俺と出会う時はいつも魔物に追われて死にそうになっているので、少し心配していたのだが、杞憂だったようで安心する。



「さすがは銀級冒険者、見事の一言だ。」

「へへっ!ニコ君の前では不甲斐無い場面しか見せられてないからよかった!」

「どうだ?弓扱えてただろ?」

「フフフ。さぁっ!獲物を乗せてさっさと出発しますよ?」

マット達を護衛しながらジャック達に追いついて思ったままに賞賛の言葉をかける。

ジャック達は照れながらターニャとソフィアが引くそりに解体し終えたジャイアントフロッグの肉を乗せている。

ターニャとソフィアはそれを報酬が増えるから嬉しい反面、そりが重たくなって嫌なのだろう。

とても不思議な表情でそりに荷物を追加するグレイを見つめている。


「さぁみんなの報酬額が増えたぞ?」

「そうだそうだ!頑張れよ!?」

「みんなもう少しですよ!」

ジャック達が四人を激励して森を出るために歩き始める。

マット達はゾンビのようにただただ虚ろな目で俺とジャックに合わせて歩き始める。



「暗くなってきた・・・おいブラン!松明を点けるぞ!」

日が沈み辺りが暗くなってきて、ジャックとブランが松明の準備を始める。

「おう!ニコもいるだろ?」

「俺はいらん。魔力光(ライト)。」

ブランがニヤニヤと俺を見ながら言って来る。

なぜかブランの顔がとても腹立たしかったのですかさず拒否をし、魔力光(ライト)を発動して辺りを照らしながらドヤ顔でブランを見る。



「さすがはニコ君だ・・・」

「驚いてねぇ、俺は全然驚いてねぇ・・・」

「相変わらずの無詠唱ですか・・・」

ジャック達が俺の魔力光(ライト)を見て何やらコソコソと話しているが、驚いているせいか声が大きいので丸聞こえだ。

マット達は荷物を運ぶのに一生懸命で俺達のやりとりを見る余裕は無い様で、一心不乱に前だけを見て歩いている。




「おい!出口が見えたぞ?」

「よっしゃ!先に行って準備しておくぞ?」

「さぁブランやる事は多いですよ!?」

更に数時間経って森の出口が見え、ブランとグレイが遠くに見える月明かりに照らされた平原に向かって走って行き、闇の中に消える。


「ニコ君?我々は最後の最後まで気を抜かずに護衛だ!」

「わかってる。気を抜いた時が一番狙われやすいからな。」

ジャックの言葉にしっかりと周りを警戒しながら返すと、ジャックは笑顔で頷いて俺とは反対側の闇に視線を戻して警戒しながら森の出口を目指す。




「では皆さん運んできた肉をこの穴にお願いします!」

「どうだぁ?ニコ!俺の土魔法で開けた穴だぜぇ?」

森を出て少し離れた所で焚き火を囲んでいたグレイが指示をして、ブランがドヤ顔で俺に自慢してくる。

こんな穴に肉を入れて何をするのだろうかと思って見ていると、グレイが氷を作り出して肉を入れた穴の中を満たして行く。


「なるほど。こうやって痛みにくくするのか。」

「そして上を・・・こうやって土で覆うから動物や魔物がやってこないって訳だ!」

俺が成程と思って見ていると、ブランが穴の上に土を被せながらドヤ顔で説明をする。


「それはわかった。で?焚き火を焚いているのはなぜだ?」

「なぜって・・・森を出たとは言え見張りをしなくちゃ駄目だろ?」

「そうか。俺の魔法でゆっくり休むつもりなのかと思っていたが見張りがしたいのなら止めはしない。俺は認識阻害魔法をかけたテントで寝させてもらおう。」

「あっ!ちょっ!忘れてた!リーダー?リーダァァァァァ!!」

ドヤ顔のブランが分かりやすく焦った顔になってテントを張るジャック達の下に走って行く。

俺はドヤ顔のブランに一泡吹かせたと溜飲が下がり、みんなと寝るテントを張り始める。



「あの・・・ニコ君?」

「なんだ?」

テントを張っていると揉み手をしたジャック達がにじり寄ってくる。

「我々のテントにも魔法をかけて頂けないでしょうか?ついでにあの肉を隠してる所も・・・」

「それだとあの折角用意した焚き火が可哀想じゃないか。」

「グレイ!」

「はい!精霊よ我に力を!水の玉で我の敵を消し去りたまえ!」

俺の言葉に即座にグレイが焚き火を敵と言い切って、水の球を撃ち込んで消化する。

焚き火に当たって一息ついていたマット達が驚いて引っくり返る程度には余剰な攻撃魔法だ。



「わかった。おいみんなテントが張れたから休めるぞ?」

俺が引っくり返る四人に声をかけると、声を出す元気も無いらしい。

無言のまま立ち上がってゾロゾロとテントの中に入って行く。

「さて。魔法をかけて俺も休むか。」

「ニコ君のおかげで死なずに済んだし、ゆっくり出来るし言うこと無しだな!」

「よーしっ!じゃあ寝ようぜ?」

「今日は疲れましたねぇ?」

俺の言葉にジャックがお辞儀をし、ブランとグレイは大きく伸びをしながらテントに入って行く。


「お礼もせずに・・・あぁいつぅぅぅらぁぁぁぁぁ」

ジャックが二人が入って行ったテントを今にも剣を抜いて飛び込みそうな表情で睨んで唸り始める。

このまま俺のせいでジャックが怒ってチームが分解なんて事になってはシャレにならない。

俺はしっかりとジャックを諌めておく。


「ジャック?気にせず寝てくれ。」

「わかりました!ではニコ君ありがとう!そしておやすみなさい!」

俺の言葉にジャックがとても陽気な口調で答えながらテントに向かうが、表情は先程から変わっておらず、皿に目も血走り始め野盗と見間違う風貌も相まってとても恐い。

俺は何も言えずに一つ頷く事しか出来なかった。



「枕投げでもしているのか?」

俺が認識阻害魔法をかけようとジャック達のテントに向かうと、テントが激しく揺れている。

とりあえずジャック達のテントは後回しにして肉を埋めた穴と自分のテントに魔法をかけ、改めて静かになったジャック達のテントに魔法をかけて、自分のテントに入る。


「みんな土足だと?・・・それよりも俺の寝る場所が無い・・・」

みんな余程疲れたのだろう。

靴も脱がずにみんな着の身着のままで大の字で眠っているので俺の寝るスペースが無い。

仕方ないのでジャック達のテントに行く。


「あ・・・ニ、ニコ君どうしました?」

テントの入口を開けるとジャックがブランに馬乗りになって殴りつけていた。

そしてテントの端には外を向いてビクビクと痙攣しながら寝転ぶグレイらしき人物が見える。

「・・・テントを間違えたようだ。」

「これはニコ君だからじゃなく、常識的な普通の行動が出来てない二人が悪いので・・・」

俺は何も見なかった事にして、すぐにテントの入口を閉める。

ジャックのような物体が俺に向かって何かを言っていた気がするが、俺は何も見てないので気のせいに違いない。

しっかりと自分に言い聞かせてから土魔法で正方形の簡易小屋を作り出して中で眠る。

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