幕間 ミンミ改めマジカの冒険
本日二話(+作者用の落書きが一話)投稿です!
一話目は少し長めになっております。
ハイウィッチがニコに言われて魔の森に向かい始めて二週間が経った頃。
ハイウィッチは箱型ゴーレムの中で村に着いた時の自己紹介を考えていた。
「マジカル・・・美少女・・・いや美少女は言いすぎかしら?でもあたし結構いけてるわよね?」
安全に魔族が暮らせる村と言われているのでハイウィッチの表情はとても明るく希望に満ち溢れている。
「うん!やっぱり最初はインパクトが大事よね!ゴーレムマスターマジカル美少女!ハイウィッチのミンミです!ニコ君の紹介で来ました!っね!」
ミンミはガッツポーズをして何度も何度も先程の自己紹介を反復し始める。
「マスター人間の建造物がありますがどうしますか?」
ミンミが自己紹介の練習をしていると抑揚の無い淡淡としたゴーレムの声が聞こえる。
窓から顔を出して前方を確認するとゴーレムの進む先にある塀をその奥にある森を見てミンミがゴーレムに指示する。
「あれが魔の森を囲んでる塀ね?壊さないように、あと音を立てて気付かれないように進みなさい。」
「了解しました。」
ミンミの言葉に反応したゴーレムの脚が伸び塀をひょいと乗り越えて足を縮ませながら音も無く魔の森へと入って行く。
周りには魔の森を見張る兵士がたくさんいるのだが、ゴーレムには認識阻害魔法がかけられているので誰一人としてその異様な光景に気付く事は無い。
「何よこの森魔物だらけじゃん!てかめっちゃ遠いけどあのとんでもない存在感がニコ君が言ってた村がある所なのよね?ニコ君の紹介じゃなかったら絶対に近づかないわ・・・」
ミンミは思わず森の中の魔物を見て驚き、ルル達の放つ魔素量に怯え思わず息を飲む。
「ゴーレム?どんな魔物が出るかわかんないわ、しっかり探知をして魔物に出会わない方を優先させなさい?」
「了解しました。」
ゴーレムはミンミの命令に抑揚のない声で反応して進むスピードを落としてゆっくりと注意深く森を進み始める。
「マスター個体名人型蜥蜴に発見されました。どうしますか?」
人型蜥蜴とはリザードマンの正式名称である。
それを聞いたミンミは飛び付く様に窓に張り付いて外を確認する。
「マジかよ・・・全速前進よ!」
「了解しました。」
魔の森に入って二日目の朝、リザードマンに発見されミンミが乗っている箱型のゴーレムが魔の森を疾走する。
「なんでこんな魔物がいんのよ!何が村は安全よ!おかしいってこの森!」
追って来るリザードマンを睨みつけながらミンミは思わずと言った様子でニコに対して恨み節を炸裂させている。
ニコは嘘は言っていない村は今現在も安全に平常運転であり道中が危険なだけなのだ。
長い長い鬼ごっこも終わりの時が訪れる。
ミンミが乗るゴーレムはリザードマンに追いつかれ後ろ足の一本を破壊されゴーレムはミンミを乗せたままゴロゴロと森の中を転がる。
「マスター足を破壊されました。」
「そうでしょうねっ!!もうどうにでもなれよ、お前らあのリザードマンをぶっ潰せ!」
ミンミは天井に壁にとぶつけられながら、なんとかありったけのゴーレムコアを外にばら撒きながら命令をする。
ばら撒かれたゴーレムコアは地面に沈んで行きクレイゴーレムとなって地面から現れ、リザードマンに向かって行く。
何十体ものクレイゴーレムが向かって行くが鎧袖一触と言った様子で、リザードマンの腕の一振で何体ものクレイゴーレムが纏めて吹き飛ばされている。
吹き飛ばされたクレイゴーレムはまた地面の泥を集めて復活してリザードマンへと向かって行く。
「やっぱり泥人形じゃ足止めにしかならないわね。ゴーレム修理はまだ!?」
「石が足りません。泥では胴体を支えられません。どうしますか?」
「屋根を足に回しなさい!」
「了解しました。」
ミンミの焦った指示にゴーレムは抑揚の無い声で淡淡と答えて足の修理を始める。
「急げ!急ぐのよ!もうゴーレムコアのストックは無いから本気でヤバイのよ!?」
クレイゴーレムを蹂躙しながら少しづつ迫ってくるリザードマンを見て焦るミンミがゴーレムを急かす。
「終了予定は十秒後です。」
「十秒!?・・・十秒もかかるの?」
少しづつゴーレムコアごとクレイゴーレムを破壊されクレイゴーレムの数は減ってきている。
ミンミは死の恐怖に怯えながら屋根の無くなったゴーレムの中で出来る限り小さくなって震えながら十秒をひたすら静かに待ち始める。
「お嬢さん大丈夫っすか?」
「え?ハイコボルト?魔族?」
突然ハイコボルトがゴーレムに乗り込んで来て話しかけてくるのでミンミは状況を飲み込めずにかなり間抜けな顔でコボチョウを見上げる。
「名誉のためにも手を出さない方がいいのか困ったので聞きに来たっす!」
「是非助けて下さい!名誉なんていりません!」
ミンミはコボチョウの足にすがる様に掴まって言う。
コボチョウはそんなミンミを満足そうに見てからゴーレムの外へと顔を向けて口を開く。
「ゴブチョウいいっすよ!」
「わかった。みんないつも通り行くぞ?」
「「「おう!」」」
コボチョウの声に一体のホブゴブリンが森の中から出てきてリザードマンに斬りかかる。
このホブゴブリンもコボチョウと同じくニコの部下でありホブゴブリン達の長のゴブチョウだ。
「まじか・・・」
「今日の食料調達完了っすね。」
先程までは恐怖の対象でしかなかったリザードマンを一刀の元に首を切り落としたゴブチョウを見て思わずミンミが声が漏らし、コボチョウはそれを見て当然のように口元を緩ませながらうんうんと頷いている。
「お嬢さん失礼したっす!危ない森なので気をつけるっすよ!」
「待って!あたしハイウィッチでニコ君に言われて来たの!」
コボチョウが立ち去ろうとするので、ミンミはこんな森の中をまた一人で動くのはごめんだとばかりに一縷の希望を込めてコボチョウに半ば叫ぶように言う。
「え?ニコ様に言われたっすか!?おいゴブチョウこの方はニコ様に言われて来たそうっすよ!」
ニコの名前に反応してコボチョウの耳が忙しなく動き始め、嬉しそうにゴブチョウを呼ぶのでミンミが助かった!と安堵の表情を浮かべてその場にへなへなとへたり込む。
「わかった。お前ら血抜きと内臓取り任せたぞ!」
「「「へい!」」」
コボチョウの言葉にリザードマンの血抜きをしていたゴブチョウが部下のホブゴブリン、ゴブイチ達に指示を出してミンミ達の元へと近づく。
「あ、あなた達がニコ君の育ての親かしら?」
「違うっす!おいら達はニコ様に拾って頂いた部下っす!」
「俺達は育ててもらった。ニコ様は親のような存在だ。」
ミンミは二人の話を理解しようと頑張るが、魔族を人間が育てるなどという言葉はまだ理解できたのだが。
その人間如きに育てられた魔族がリザードマンという食物連鎖で言えば圧倒的に上位のリザードマンを食料と言い切っていたコボチョウを見て訳が分からなくなって髪を掻き毟り始める。
「もういいわ・・・ニコ君に言われて安全に暮らせるって言われてこの森を紹介されたんですけど!」
「歓迎するっす!おいらはハイコボルトの長をしてるコボチョウっす!」
「歓迎しよう。俺はホブゴブリンの長をしているゴブチョウだ。さぁ着いて来なさい。」
「あ、待って!ゴーレム動けるわね?彼らに付いていきなさい!」
「了解しました。」
コボチョウとゴブチョウがリザードマンを担ぐゴブイチ達を護衛しながら森を進み始めるのでミンミは慌てて修理が完了してオープントップとなったゴーレムに指示を出して付いて行く。
「さっきまで魔物だらけだったのに嘘みたい・・・」
「これ便利っすねぇ?そりゃ魔物が少ない道を歩いてるっすからね。」
ミンミが先程までの命懸けの森から打って変わって静かになった森を見渡しながら、思わず呟くとコボチョウが興味津々と言った様子でゴーレムを調べながら魔物がいない理由を説明をする。
「あなた達何者?リザードマンを倒すホブゴブリンなんて聞いた事ないわ?あなたもリザードマンを倒せるの?」
「余裕っすよ!おいらはゴブチョウほどの力は無いんで一刀両断は無理っすけどね?」
「異常よ・・・」
「人間のニコ様が出来て魔族の俺達が出来ないのはおかしい!ってルル様に言われてニコ様に追いつくためにも血の滲む努力をしたっすよ!全然追いつけてないっすけどね!?」
コボチョウが楽しそうに笑いながら言いミンミはそれを見て、ルル様という新しい名前も気になるし、あの人間の少年ニコ君がどれ程の化物なのかと途方にくれる。
そして目の前の格下の魔物のはずであるハイコボルトを見て背筋が凍る。
「なんでハイウィッチのあたしがハイコボルトにビビラなきゃいけないのよ・・・はっ!?そういう意味じゃ!」
思わずつい口から本音が飛び出てしまい、ミンミは顔面蒼白になってコボチョウに弁明するがコボチョウは楽しそうに笑い始める。
「ハッハッハッ!その気持ちはよくわかるっす!でも村に行くとどうでもよくなるっす!」
「どういう意味?」
「ニコ様の親・・・まぁ行けばわかるっす!」
助かった。その一心だったミンミは後にその言葉の意味をもっとちゃんと考えるべきだったと後悔するのだが、その時は失言を許されて助かったという気持ちで一杯でそんな余裕はなかった。
そんなミンミの気も知らずにマイペースなコボチョウはゴーレムの中を物色し始める。
「気になってたっすけど?これは何っすか?」
「それは村のみんなにってニコ君達に渡された書物や食材ですね。」
箱の中に散乱する書物や食材に気付いて拾い上げて不思議そうにパラパラとファッション誌をめくるコボチョウに疲れた様子のミンミが説明する。
「へぇ?面白そうっすね!ゴブチョウ?おいら先に帰ってルル様達に伝えるっすよ?」
「任せた。」
ミンミの言葉にコボチョウは楽しそうにゴブチョウに言う。
ゴブチョウは振り向く事無く後ろ手を振って答える。
「じゃあまた後でっす!」
「えっ!?消えた?」
「フフフ。」
コボチョウがミンミに手を挙げてゴーレムから飛び上がって木から木へと立体機動で村へと急ぐ。
ミンミは突然目の前から消えたコボチョウを探し始め、ゴブチョウはそれを見て楽しそうに笑いながらコボイチ達と村へ歩き続ける。
「おぉ!ニコに言われて尋ねてきたハイウィッチとはお前の事か!?」
「はいそうっす!」
「さっさとこの服がいっぱい書いてる本を出しなさい?」
「ん、ゴブチョウその剣どうだった?」
「はいはーい!ゴブイチ君達ご苦労様!さっさと捌いちゃおうね!」
村に着くとコボチョウを先頭にルル、クネ、エド、ハッピーが待っていてミンミが到着するやいなやみんな思い思いに動き始める。
ルルはコボチョウと一緒に面白そうにミンミの顔を眺め。
クネはゴーレムの中に入ってファッション誌だけを厳選し始め。
エドはゴブチョウとリザードマンを一刀両断した剣の話で盛り上がり、ハッピーはホブゴブリンが三人がかりで運んでいたリザードマンを軽々と持ち上げて一軒の家に入って行く。
魔族は我が強く本来ならば多種族が絶対に群れる事はないのでこれが当たり前の光景であり、多種族を一つの村に纏めて暮らしているルル達が異常なのである。
「えと・・・あの・・・とりあえずこの村、魔素が濃すぎません?」
「ヌァッハッハッハッ!俺達がいるから仕方ない!名前を教えてもらえるか?」
「あ!わ、わ、私はマジッ・・・・マジッ!・・・マジカッ!・・・」
ミンミはルル達の尋常でない存在感に恐れ慄き、脂汗を流しながら自己紹介をするが噛み噛みでまったく練習通りに出来ない。
「ほう?マジカと言うのだな?俺は魔王のルルだ!そこで本を集めてるのがクネ、あっちでゴブチョウと話してるのがエドで、リザードマンを持っていったのがハッピーだ!あとのゴブイチやコボイチ達はおいおい紹介するとしよう!」
「マジカじゃな・・・いや私はマジカです。よろしくお願いします。」
ルルが噛み噛みのミンミの自己紹介を聞いて名前を勘違いして、お返しとばかりに村の住人を紹介する。
ミンミは必死に否定をしようとしたのだが、ルル達との絶対的な力の差に心が折れ、逆らっては駄目だと一瞬で改名を決意をしマジカと名乗る。
「すこしトラブルがあって散らかってますがニコ君に渡された書物や食料です。書物に書いてある文字を勉強する本がこちらです。」
「ぬ?絵付きで丁寧に書いてあるな。面白そうだ少し勉強するとしよう!エド面白そうな物があるぞ!」
「ん、もう見てる。」
「いつの間に・・・?」
ルルが学習本をパラパラと見ながらエドに声をする。
ミンミがルルの言葉に先程までエド様がいた場所を見るが姿は無く、不思議に思って辺りを見回しているが、エドはすでに足元散らばった本を集めてぱらぱらとめくっていた。
「ん、これ建築の本みたい。ルルさっさと文字覚えてそれを貸して。」
「ヌァッハッハッハッ!まぁ待て!晩飯の時に渡す。」
「え?今日中に覚えるんですか?」
エドが建物の絵が描いてある本を発見して目を輝かせながらルルと話している。
ルルとエドの会話を聞いてミンミが思わず尋ねるが、二人は当然と言った様子で頷き返して答える。
「ん、じゃあその間にマジカの家を建てなきゃ。マジカ?何か要望はある?」
「あ、安全に暮らせるなら何もありません!」
「ん、じゃあ適当に過ごしてて。」
「頼んだぞ!俺は文字をさっさと覚える!」
エドがハイコボルト達を率いて村を進んで行き、ルルは学習本を読みながらゴーレムから降りて一軒の家に入って行く。
「あたしはどうすれば・・・?」
怒涛の勢いで物事が進んで思考が追いつかないミンミは呆然と自由に動き回る村の住人達を眺めてゴーレムの上に立ち尽くす。
「マジカさん疲れたでしょうからとりあえず食堂で休むっす!」
「あ、はい。あ、食堂ならこの食材たちを下ろすの手伝ってもらえますか?」
食堂の前でコボチョウが手を振ってマジカを呼び、その言葉に我に返ったマジカがゴーレムの中に残った食材を見て思い出したように言う。
「わかったっす!」
「何々!?食材?あたしも手伝う!」
「ハッピーさんですね?マジカですよろしくお願いします。」
コボチョウと一緒にゴーレムの中に散らばった食材を集めていると興味津々なハッピーがやってきてマジカが深深と頭を下げる。
「コボチョウ?邪魔!」
「すみませんっす!」
ハッピーが食材を集めるコボチョウをどかせると、風魔法で器用に食材を食堂の中へと飛ばす。
「マ・・・マジか・・・」
コボチョウは楽が出来たと喜んでいるが、マジカはハッピーの魔法を見て我が目を疑って何度も目をこすって食材が食堂の中に自ら入って行くのを眺める。
「で?これどうやって料理するの!?あ、あたしハッピー!ニコのお姉さんだよ?」
「ミ、マジカといいます。おそらく・・・それはエド様が持っていかれた書物のどれかに書かれていると思います。」
「あー!気になるなぁ!早くこの未知の食材を使って料理したいのに!」
食堂に入るとハッピーが麦や塩を目を輝かせて漁りながら思い出した様に自己紹介をする。
マジカも最後の気力を振り絞ってなんとか改めて自己紹介をして椅子に座ってやっと落ち着けたと、深い深い溜息を吐いている。
「ハッピー?文字を覚えたらクネに渡して。」
「え!?あたしが先でいいんですか?」
「ん、クネは文字よりも服を作りたいって。」
夕暮れ時になり食堂に入ってきたエドがハッピーに学習本を渡しながら話している。
ボーっとそのやり取りを見ていたミンミがふと気になった事を尋ねる。
「もしかしてルル様とエド様はもう文字を覚えられたんですか?」
「ん、覚えた。今ルルが辞書を覚えてるからあたしはそれ待ち。」
「もう覚えた?てか辞書?人間の文字ってそんなに簡単なの?」
エドの言葉を聞いたミンミは驚愕する。
後に文字を勉強した時にルルとエドの異常性を再認識する事になるのだが、今のマジカにそれを知る由はないので、返事代わりに頷くエドに真剣な顔で頷き返している。
「ん、あとマジカの家建てたからあとでコボイチ辺りに案内してもらって。」
「え?あ、はい。ありがとうございます。」
この村に来てから色々と起こり過ぎて何一つとして状況が理解出来ていないマジカは意味もわからずにエドにとりあえずお礼を言う。
「さっ!今日は疲れたでしょ?御飯食べて今日は寝なっ?」
「ありがとうございます。・・・美味っ!?」
「リザードマンの骨付き肉と、スープだよ!」
「リザードマンを食べられる日が来るなんて・・・」
「いい食べっぷりだっ!骨付き肉のお替りが欲しかったら言ってね?」
ハッピーの言葉を聞いたマジカが何度も頷いてから、泣きながらリザードマンの骨付き肉にかぶりつく。
それを見たハッピーはとても嬉しそうに頷いてから学習本へと視線を落とす。
「ハッピー?これどうかしら?」
「クネ様が人型になるなんて珍しいですね?可愛いと思いますよ?」
ミンミが骨付き肉を頬張っているとワンピース姿のクネが食堂に入ってくる。
透き通るような肌。サラサラと風に揺れるアッシュブラウンの長い髪。そして端正な顔付きに完璧すぎるプロポーションのクネを見てあんな完璧な女性は神様でも作れないっと本気で思ったマジカが思わず食事の手を止めて見惚れる。
「ニコの本を参考に作ってみたの。この靴も可愛くないかしら?」
「変わった形ですね?これもクネ様の糸で作ったんですか?」
「えぇまだ文字が読めないからどういう名前かわからないのが歯がゆいわ。」
「ぬ?その服はワンピース、靴はハイヒールと呼ばれる種類の靴だな。」
クネとハッピーが話していると辞書を読みながら食堂に入ってきたルルがクネの服装を見て説明する。
「あの・・・その靴はどうやって作ったんですか?」
「糸をこの形に固めて布を縫いつけたのよ?」
「簡単に言ってますけど・・・」
クネの言葉にミンミは驚きの余り開いた口が塞がらないようで骨付き肉片手にただただ呆けている。
「簡単に出来るから簡単に言ったのよ?ほら寝袋と着替え一式よ。」
そんなミンミにクネはお構い無しにマジックバッグから着替えや寝袋を机の上に置き、今日は驚きすぎて表情が無になったマジカが確認しながらなぜかぴったりサイズの着替えを確認する。
「なぜ私の着替えが?」
「ないと困るでしょう?目測で作ったけど多分問題ないと思うわ。」
「ありがとうございます。」
ミンミはこの村の住人はどれだけ有能な人達ばかりなのかと、感心しながら受けとった着替えと寝袋をしっかりと抱えてクネに頭を下げているが、表情は無のままだ。
「あ、ですが寝袋はニコ君に頂いたこれがあるので・・・」
マジカがクネ製の寝袋がぺらぺらな事に気付いて、ニコから渡された寝袋の方が気持ち良さそうだと断わるためにクネに見せる。
「へぇ?中に何か入ってるのね?面白いわ。」
「え?上げるとは・・・」
クネが興味深そうに寝袋を調べながら食堂から出て行く。
マジカが抗議をしようとするが、始めてみる寝袋に熱中したクネの耳には届かずクネはそのまま食堂から出て行く。
「あの・・・御飯も食べ終わったので今日は休みたいのですが・・・」
マジカは諦めて食事をするルルとハッピーに声をかける。
「了解っす!エド様に言われてるっす!おいらコボイチが案内するっす!」
エドと共に食堂に入って来て、静かに食堂の隅で立っていたハイコボルトがマジカの言葉に反応して動き始める。
「あ、待ってくれてたんだ。ごめんなさいお願いします。」
存在には気付いていたけど目的にまでは気付けなかったマジカはとりあえず頭を下げて、笑顔のコボイチに案内されるままに食堂を後にする。
「あれ?あたしのゴーレムは?」
「エド様が興味津々な御様子だったので持っていかれたのだと思うっす!」
「え?あたしの命令以外は聞かないはず・・・」
「エド様っすから!」
「そ、そう。」
笑顔で話すコボイチにミンミは相変わらずの無表情で答える。
マジカとしては必死に微笑んでいるつもりなのだが、今日はもう表情筋が機能しないようだ。
そしてマジカはニコの安全に暮らせる村という言葉を信じて喜んでこの村に来た事を後悔し始めていた。
「どうぞこちらっす!」
コボイチが一軒の立派な家の前で立ち止まって言う。
「え?この家が私の家?」
「そうっす!お好きに使ってくださいっす!あと何か欲しい物があれば言って下さいっす!」
「え?あ、ありがとう。」
状況が飲み込めずにマジカは食堂へと戻って行くコボイチと自分の家をただ交互に見ながらただただ立ち尽くす。
「こ、この村の普通に馴れるのよ!」
数分家の前で立ち尽くしていたミンミが気合を入れなおして家の扉を開ける。
家の中は心地よい新築の木の匂いで溢れていた。
やっと一人になれた事と木の匂いのおかげで落ち着きを取り戻し、色々と考えたいことだらけだと気合を入れて、いつでも寝られるようにいそいそとクネから渡された寝袋に入る。
「こんなぺらぺらで寒くないのかしら・・・」
マジカはクネの寝袋に入りながら思わず声を漏らす。
クネ製の寝袋は最高級のアラクネの糸で作られているので、ぺらぺらに見えるが保温性が良くとても暖かい。
そして保湿性にも優れているのでとても快適なのだ。
寝袋に入って横になったマジカは何も考える暇無く意識を夢の中へと手放す。
面白いと思ったり続きが気になると思った方は評価や感想を頂けると嬉しいです。
もちろん誤字、脱字やお気づきになった矛盾点などの指摘もお待ちしています。




