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幕間 ライオとネル

本日二話投稿です。

こちらは二話目です。

「さて!さっさと運んで祝杯を上げようじゃないか!」

「そうね!さっさと運びましょうライオ!」

ダンジョン十一階でルドルフことニコとアランが去った後にライオとネルはニコが仕留めた魔猪、レッドワイルドボアを必死に引き摺ってダンジョンを戻っている。



「ライオ!?重たいわ!これじゃダンジョンの出口まで運べないわ!」

「ハッハッハッ!なら腹を割いて内臓を捨てようか!」

「さすがライオだわ!そんなに男前なのに頭まで良いなんて完璧すぎるわ!」

「僕もこんな完璧な女性に褒められて最高だよ!」

ライオとネルがバカップル全開の様子でレッドワイルドボアの腹を割いて器用に剣を使って内臓を地面に向かって搔き出す。

普通は血の臭い。つまり魔力の臭いを出さないためにも地面を掘って内臓を埋めるのだが、それを注意する人間はいないので二人満面の笑みで地面にレッドワイルドボアの内臓を搔き出している。




「ライオ?なんか魔物の気配がしない?」

「そうだねネル?この魔猪の血の臭いに惹かれてきたんじゃないか?」

「そうよ!さすがライオきっとその通りだわ!どうするの?」

「ハッハッハッ!君達!この内臓は上げるから僕達は見逃しておくれ?」

そう言ってライオが内蔵を抜いて軽くなったレッドワイルドボアを担いでネルと一緒に出口に向かって鬱蒼と茂った森を走り始める。

二人が去るとすぐに魔物達が現れライオが抜いた内臓を食べ始める。

幸運なことにいきなりワイルドレッドボアを担いで大急ぎで走ったことにより内蔵が放つ強烈な血の臭いに紛れたライオ達は寄ってきた魔物に気付かれること無く逃げ延びる。

色々な幸運が重なって命拾いをしたのだがライオとネルがその事実を知る事はない。



無事に十階への階段を上りきったライオがレッドワイルドボアを地面に降ろして座り込む。

「すまないネル。僕は限界だ。」

「そんな!ライオを置いて行くくらいなら私は死ぬわ!」

階段を登りきると同時に二人は安心したからかバカップルの世界を炸裂させている。

二人がかなりの時間をかけて大声で愛を語り合っていると静かに魔猪が階段を上ってやってくる。


「ブルルルッ!」

「ライオ?やばくない?」

「・・・そうだ!この魔猪の頭蓋骨を貫く矢を使えば!」

ライオとネルの隣に横たわるレッドワイルドボアの肉を発見した魔猪は興奮し鼻息を荒くして前足で地面を蹴り始める。

それを見たライオは必死にレッドボアブルの脳天に刺さった矢を抜こうと必死に踏ん張っている。



「ブオオオッ!」

「抜けた!」

「ライオ?突っ込んできてるわ?」

「クソッ!ネルを食べるつもりだな!?そうはさせるかっ!」

「ライオとの愛の証を取られるわけには行かないわ!」

そう言ってライオが魔猪に飛び掛って何度もレッドワイルドボアから引き抜いた矢を突き刺す。

ライオが首に突き刺した矢は運よく魔猪の心臓を貫き魔猪はレッドワイルドボアを守るネルの直前でパタリと倒れる。



「ネル無事か!?」

「さすがライオ!私も・・・愛の証も無事よ?」

「証?そんなものはこれからいくらでも作れるだろう?でもネルが・・・ネルがいないと作れないじゃないか!」

「ラ・・・ライオ・・・」

ライオの言葉に目を潤ませたネルが抱きつき懲りずに二人はバカップルの世界を展開させる。


「じゃあこっちの魔猪も内臓を抜いて持って帰ろうか?」

「そうね!私も頑張るわ!」

二人は心行くまでイチャイチャしてから魔猪の腹を剣で切って内臓を剣を器用に使って搔きだし始める。

今回も二人を注意する人間はいないので、その行為が辺りの魔物を誘き寄せるとても危険な行為だと気付くことは無い。


「じゃあ行こうか!」

「わかったわ!ライオが作ってくれたそりのおかげでかなり楽だわ。」

ライオが一体のレッドワイルドボアを担ぎ、ネルはライオが剣と鎧を組み合わせて作った簡易型のそりに乗せた先程倒したレッドワイルドボアを引き摺ってダンジョンを進み始める。

普通の人が見たら剣と鎧でそりを作って魔物が出たらどう戦うのか?っと当たり前の指摘をするような行為なのだが、幸か不幸か今の二人にそれを指摘する人間はいない。

二人はラブラブとダンジョンの出口を目指して魔猪二体を運んで行く。



「お兄さん!俺があとは運ぼうか?ギルドまで運んで一体二万!あと売却額の一割だ!」

息も絶え絶えにダンジョンの七階まで戻るとポーター、冒険者の獲物を運ぶ事を生業としている人間がライオとネルが運ぶ二体のレッドワイルドボアを見て駈け寄ってくる。

「ポーターの人だ。どうしようかネル?」

「魔猪が二体もいるし頼んでもいいと思うわよライオ。」

「そっかその通りだね!さすがネルだ!じゃあ頼むよ!」

「合点だ!」

そう言ってポーターは手際よく背中のかごに一体のレッドワイルドボアを縛り付けて背負い、もう一体のレッドワイルドボアをライオが作った簡易型のそりを使って運び始める。



「楽だね!ネル?」

「そうね!ライオ。」

「あんたら・・・特に男の方は鎧も武器も無しにどうやってこの魔緒を仕留めたんです?」

ライオとネルがいちゃいちゃしながらポーターと一緒にダンジョンを歩いていると、ポーターの男が思わずと言った様子で二人に尋ねる。


「ハハハ!僕達には魔法の矢があるからね!」

「そうね!ライオとこの魔法の矢があれば魔猪なんて軽々よね!」

「そんな矢一本で・・・」

ライオとネルがニコが魔力付与した矢を取り出して自慢し始め、ポーターの男はそれを見て何を言っているのかと呆れている。

それと同時にさっさと魔緒を運んでこの仕事を終わらせようと決意を固めポーターの歩く速度が上がる。



「ねぇ?この魔猪っていくらくらいになるのかな?」

「初めて仕留めたしさっぱりだね!」

「俺の経験から行くと二体で三十万ってとこじゃねぇか?」

「ほう!ポーターさんにお金を払ってもニ十万ゴールド以上残るって事だね!?」

「ライオはなんて計算が早いの!?格好良すぎるわ!」

「普通の計算だろ・・・」

ポーターがただただ呆れて呟くがすでに二人の世界に浸っているライオとネルの耳には届かない。

「(もし俺を見失ってくれればラッキーなんだがな・・・)」

ポーターが手を握って見詰め合うバカップルを見て思わず溜息を吐いてダンジョンを上って行くがポーターの願いも虚しくライオとネルがポーターを見失う事も魔物や物盗りに出会う事も無くダンジョンを出る。



「(こんなスムーズに出られたのは初めてだな・・・こいつら運良すぎだろう。)」

本当に何も無くダンジョンから脱出したのでポーターが思わずダンジョンの道中は勿論の事、脱出して人でごった返す王都に出た今でも人目をはばからずいちゃいちゃし続けているバカップルを見やる。

「危険なダンジョンを出たしギルドもすぐだし換金したら何しようかネル?」

「私はライオと一緒にいられるならどこまでも付いて行くだけよ?」

「これが平常運転なんだな・・・。」

諦観の笑みを浮かべたポーターがギルドに向かって歩き始めるので、ライオとネルは楽しそうに話しながら恋人繋ぎで付いて歩く。




「ではワイルドレッドボア二体の素材と肉全てを売却と言う事ですので、三十六万七千ゴールドですが、宜しいですか?」

「あぁ!問題無いよ!ありがとう子猫ちゃん?」

「ライオ!?そんな事言ってこの子が本気にしたらどうするの?」

「(目の前で真顔になった受付嬢が見えないのか?何を心配してんだ?)」

ポーターは今日出会ってからライオとネルの一挙手一投足に心の中で突っ込みを入れ続けとても疲れた顔をしている。


「じゃあポーター君!食堂で食事をしながら報酬の話をしようじゃないか!僕達がおごるよ!」

「さすがはライオ!太っ腹ね!」

「(腹が減ってるのは確かだが・・・それよりもさっさと別れたいんだが・・・そして俺の名前はポーターじゃない・・・)」

一秒でも早く二人と別れたいのだが、ポーターはこの短い時間で自分が断わっても徒労に終わるのだろうと思って、心の声を漏らさないように注意しながらゆっくりと頷いて三人でギルドの中にある食堂へと行く。



「ネル?何が食べたい?」

「あたし?ライオが食べたい物が食べたいわ!」

「ハハハ仕方ないな!じゃあいつも食べたいけど我慢してるステーキ食べちゃおっか?」

「さすがはライオ!あたしもそれを食べたかったの!」

「(なぜ注文するだけでこんなに疲れるのだろうか・・・)」

ステーキが食べられるのはありがたいのだが、この二人と一緒に食事と言う事を天秤にかけてポーターが頭を抱える。


「(そうか・・・食べるだけだ!さっさと食べて報酬を貰って帰ろう!)」

ポーターは食事を食べ終われば報酬を受け取って帰れることに気付いて料理が運ばれてくると同時に二人にお礼を言って、ステーキにかぶり付く。


「おやおや?相当お腹が減っていたんだね?」

「そうね?でも私も減ってるわ?ライオのステーキ美味しそう!食べさせて?」

「僕もネルのステーキが美味しそうに見えて仕方がない、そうだ!食べさせっこしようか?」

「そんな名案を思いつくなんてさすがはライオ!はいあーん?」

ポーターがステーキをナイフで切ることもせずにワイルドに被りつき、ライオとネルはお互いが食べやすいようにと細かく切り分けて食べさせ合う。



「あの、そろそろ報酬を貰って次の仕事に行きたいんですけど・・・?」

「さすがはネルが切った肉だ!絶品だね?」

「ライオが切った肉には勝てないわ?なぜライオが切っただけでこんなに美味しいの?」

ステーキを一心不乱に食べ終えたポーターがライオとネルに尋ねるが、二人は自分達の世界にどっぷりと入っていて声が聞こえる状態ではなさそうだ。


「結局待たされるのかよぉ・・・」

バカップルに無視されたポーターが頭を抱えて机に突っ伏す。

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