目覚め2
少しの後、先ほどの女とともに若い男が部屋に現れた。
身綺麗な服に整った顔。どこかの偉い一族の息子か。ルーナとなった氷は黙って男を観察していた。
「ルーナ、良かった! 君が泉に落ちたと聞いた時は悪い夢を見ているのかと思ったよ」
男はそう言ってルーナの手を握った。
ルーナが困惑していると、男は「ああ」と言って手を離す。
「すまない、記憶がないんだったね。僕はロクデム。いきなりこんなことを言っても驚かせてしまうだろうけど、君の婚約者なんだ」
「婚約者……?」
ルーナは首を傾げる。
「今は何もわからなくていいよ」
ロクデムと名乗った男は優しく微笑むとルーナの頭を撫でた。ルーナは不快に感じながらも、おとなしく頷いた。
「じゃあ、何かあったらすぐに呼んでくれ」
ロクデムは爽やかに微笑むと部屋を出る。
「?」
ルーナは手が震えていた。先ほどの男に握られた手が小刻みに震え、熱を帯びていた。
「…‥ルーナ?」
氷は、もう片方の手で震える手を優しく撫でた。
「大丈夫、もういない」
何度も撫でるうちに、徐々に震えが収まっていく。ルーナは自らの手を見つめながら問い掛ける。
「敵なの?」
ルーナは答えなかった。
その後、医者を名乗る者が現れ、体調面を確認すると、問題なしとして解放された。そして、今日は休むように言われ一日が終わる。
ルーナはベッドの中で考える。
まずはルーナに何が起きたのかを調べよう。
彼女がなぜ、命を絶とうとしたのか。
それを突き止めなければならない。
氷の天使は、自分の中の奥底で眠るルーナに思いを馳せる。
ねえ、ルーナ。仮にすべてを終わらせたとして、あなたは起きてくれるのかな。




