目覚め1
目が覚める。
見慣れない天井。どうやら横になっているようだ。
氷の天使は周囲を見回す。一目見てわかる高価な寝台。部屋にはたくさんの家具が置かれている。
「ルーナ様!」
傍にいた中年女性が声を上げる。
「……」
氷は黙ってその女性を見つめた。
「よかった。えっと、あのですね、泉に落ちて意識が戻らなかったんです。あの時、巡回の兵士が見つけていなければどうなっていたことか……!」
「……」
「あ、申し訳ありません。目が覚めたばかりなのに騒いでしまって……」
「すみません。ルーナというのは……」
氷がそう言うと、女は驚き「お待ちください」と言って部屋を飛び出した。
氷の天使は部屋の隅にあった姿見に目をやる。そこに写るのはルーナと呼ばれた少女、歳は十五、六だろうか。記憶を辿る。いや、たしか、十七だった。
本当に生まれ変わることができた。しかし、なぜ彼女に。
彼女は死んだのか。いや、違う。説明はできないが、彼女の魂を感じ取ることができる。ルーナに成り変わったが、彼女が消えたわけではない。彼女は心の奥底に沈んで顔を出していないだけだ。
ルーナ。ヨーゾラ家の令嬢だ。仕事で何度か領地に来たことがあったが、遠目で見ても明るい笑顔が印象に残った。
「私はルーナ」
氷は笑顔を作る。鏡には少女が眩しい笑顔を見せている。笑うのは苦手だったが、自分の顔でなければこんなにも明るく笑えるのか。と、おかしくなった。
「久しぶり。ルーナ、少し借りるから」
ルーナは鏡の少女にそう告げた。




