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天使の終わり2
洞窟の先には大きな泉があった。どこからか光が差し込んでいるのか、泉の水は少し明るかった。生き物の気配のない巨大な水溜りは、不気味に揺らめいている。
「へえ、悪くねえ。観光地にした方が良かったかもな」
「昔、仕事で行った鍾乳洞の奥にもこんな感じの場所があった」
女は興味なさげに言うと、少し離れたところで腰掛けた。
「天使を導く泉。我々の願いに呼応し、飛び込んだものに新しい生を与える」
老いた男が言う。
「じゃあ、俺らも飛び込むとしようぜ」
若い男は泉に近付く。そして、片手を水面で遊ばせる。
「おい、氷、狼。冷たくて気分良いぜ。で、どうするんだ?」
「強く願え。そうすれば泉が応えてくれる」
壮年の男も泉に近付いた。
「はっ、そうは言ってもな。仕事しか考えないように育てられたから、わからねぇな」
「好きに願え。我が名に従って、ここは狼にでもなってみようか」
狼の天使が真面目な顔で言うので、雲の天使は呆気に取られた顔をする。
「驚いた。冗談を言う奴だったのか」
「果たして冗談かな」
「・・・・・・見えた」
泉を遠くから眺めていた女が急に立ち上がる。
「本当かよ」
「見えた。じゃあ、二人とも、もしも会えたとしても刃を向けずに済むことを願うわ」
「面白い、氷よ、何が見えた?」
「私の夢。じゃあね」
氷の天使は泉に身を投げる。




