襲撃
帰りの馬車に乗り込んだルーナは孤児院について考えていた。
あの狼と子供がいれば、孤児院は問題ないだろう。正直なところ、底の見えない院長一人でも、昨夜の騒動は解決できたのではないか。そんな気さえしていた。
「大丈夫ですか、ルーナ様」
車内にいる護衛の一人が、ルーナに声を掛ける。今日の移動には、馬を見る御者以外に、ルーナの護衛が二人いた。護衛といっても、戦闘経験はほぼなく、警戒心も薄い二人組だった。ルーナからすれば護衛の有無は問題ではなかったが、「初めての任務だあ」などという発言を護衛対象の前で繰り広げる二人の未来が心配だった。
「そこで止まりな」
男の低い声が響いた。
「検問かな。物騒だし」
護衛は脳天気な声で外を覗いた。
「あれ、御者がいなくなっている」
「中にいるやつは外に出ろ」
馬車内の護衛は顔を見合わせながら外へ出る。ルーナも黙って二人に続いた。
「あ、あ、まさか」
外に出た護衛が、馬車を止めた男の様子を見て、ようやく状況を理解する。
「賊だ! ルーナ様、下がってください!」
「は、はい!」
「やれ」
男の号令で茂みから四人の男が飛び出した。全員が大きなナイフを持っており、護衛たちはたじろいだ。
「逃げましょう!」
ルーナは声を上げる。この護衛たちは、ロクデムが適当な金で雇っただけの、訓練も受けていないただの素人だ。目の前の賊には勝てない。
「で、でも……」
「私は大丈夫です! 散り散りになって逃げましょう!」
「わ、分かりました!」
護衛は護衛とは思えないほど素早く動いた。一目散に脇の林道に駆け出して消えていく。ルーナもそれに続く。
「人目のないところへ逃げてくれれば都合が良い。追いかけて殺せ」
「はっ」
男たちは素早く走り去る。




