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泡沫のくるり  作者: malaysia403
『泡沫』の三人と、『お客様』
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16/39

Interlude 指輪を川に投げ捨てた私が、結婚式で笑っていました



『指輪を川に投げ捨てた私が、結婚式で笑っていました』



「思ったより嘘くさいね……」

「ね、ホントの事なのに」


「何やってるんですか!早く始めましょうよ!」

 


 本通の近く。

 ビルの二階にあるバー『泡沫』。


 結婚式の二次会会場として貸し切ったこの場所は、あの時とは違って賑やかな雰囲気に包まれていた。

 


「やあっぱり、いい男だよねえ」

「えっと……ありがとうございます」


「結婚とか、考えてないの?彼女は?」

「いえ、僕はそういったものは苦手で……特には」


「苦手なら、克服しようよ!ほら、私とさ!」

「あはは……いい話ですね」


 まちはさっきから男の店員さん——航さんに猛アタックをしている。

 それを食らう航さんはたじたじの様子。



『噂の『願いを叶えるバー』は本当でした。嘘だろうと思ってましたが、本当に願いが叶いました』



「みんな、二次会も楽しもう!乾杯!」


「カンパーイ!!」

 

 


「いやー!おめでとうございます!」


 芽吹さんは大袈裟なくらい拍手をして笑っている。


「奈緒さん!悠真さん!」


 そのテンションのまま、テーブルに向く。


「それと、ローストビーフ!」

「食べたら給料ナシよ?」

「——は、冗談として!ホントに二人とも、おめでとうございます!」

 


『店員さん達は不思議な人達です』

『明るく元気な女の子と、寡黙な男のバーテンダーさん。それに、気配り上手なお姉さん』

『願いとか抜きにしても、私はすごく救われました』




「奈緒さん。指輪、見つかって良かったですね」

「そう!それが聞きたくて」


「なんですか?」

「……あれって結局『くるり』を頼んだから、見つかったんですか?」


 私の問いかけに、芽吹さんは真面目な顔をする。


 

「——はい。見つかったのは『くるり』のおかげで、間違い無いですよ」


 はっきりと言い切った後、今度はへにゃっとした顔で笑った。

 

「でも、今こうして笑っているのは間違いなくお二人の努力です!」


 

 ——私達が歩んだあの一ヶ月も、ちゃんと意味があったんだ


 私はその答えを聞いて、悠真くんと顔を見合わせて二人して微笑んだ。


 

「奈緒、何か飲みたいものある?」

「あ、じゃあ——」

 


『後日、指輪は見つかりました』

『絶対に見つからないような失くし方をしたのに、それでも見つかりました。それも、ビックリするような姿になって』

 


「——初めて来た時に飲んだ、あのモクテルいただけますか?」

「だって、航くん!作れる?」


「もちろん、喜んで」

 

 

 航さんはあの時と同じようにシェイカーを振ってミントを軽く叩く。

 

 そして、出来上がったものを航さん自ら私に持ってきた。


「茉羽さん、えらく俺に声をかけてくれるんですが……どうしたらいいですか?」

「あー……強めのお酒でも飲ませてください。『茉羽さんの為に作りました』って言っとけば、ガブガブ飲むはずです」


「……ありがとうございます。じゃあ、喜んで」


 そう言って少しだけ微笑んだ航さんは、まちの前へと帰っていった。

 

 航さん、あんな顔もするんだ。

 レビューの文章、ちょっと変えないといけないな。


 

「うーん、やっぱ美味しいっ!悠真くんも飲んでみてよ!」

「どれどれ——うわっ、何これスゴッ!」


「でしょ!深みがあるのに、飲み口サッパリで今の私にピッタリなの」

「こんなの作れるなんて、流石バーテンさんだよねえ……これ、何て名前のカクテルなの?」


「カクテルじゃなくて、モクテル!名前はね——」



 そこまで言って私は、チラッと見る。

『カクテルの名前の人』は、今日も元気いっぱいだ。


 その様子になんだか嬉しくなった私は、悠真くんに向き直って元気いっぱいに告げた。


 


「——天真爛漫、って言うの!」




 

 

『最後に』

『今、大切な想いを抱えている人は是非来た方がいいです。相談だけでも、とても良い時間となると思います』


『あと――本当に見つからなくなるので、大事なものはそもそも捨てない方がいいです』



『私からの、ささやかなアドバイスです』

 

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