レベル152-1 当然の反応ではあるかと思います
「それを逢い引きで言うかね?」
帰ってきて話しを聞いたレンが呆れて言った。
「さすが兄貴だよ。
俺にはそんな真似できねえ」
この時ばかりはいつもの敬意が全く感じられない声でサトシも続く。
「二人で出かけてそれかよ」
「確か、仕立てに行ったんだよね」
「二人で」
「それで、仕事の話を持ち帰ってきたわけ?」
「どんだけ仕事が好きなんだよ」
「結婚相手はサツキなんだけど」
言葉を重ねる二人に、周りの者達も「うんうん」と頷いて同調する。
「さすがだよ」
「俺達の大将ってだけはあるな」
「真似しようと思いたくねえ」
「いっそ見事かもしれないけど」
あちこちで声があがる。
「トオルさんらしい」
アツシも白い目で見つめていく。
そして唯一の身内は、
「サイテー」
一言で全てをあらわした。
「まあ、言いたい事は分かるよ」
「仕事としては理解出来るわね」
「それを帰ってくるまで待てないってのが大将らしい」
「いや、そこからノロケに持ち込んでくあたりがさすがというか」
「色恋と仕事を結びつけるとは」
「らしいと言えばらしいけど」
「さいってー」
誰も容赦しないままに言葉が続いていく。
それを聞いてトオルは、色々としくじったと思った。
サツキはそうでもないようだが、他の者達の受け取り方はかなり辛辣なものになっていく。
「まあ、兄貴が二人でいたいって気持ちはわかるよ」
「私らと一緒じゃ、する事も出来ないだろうしね」
その通りなので何も言えない。
言うべきでもない。
それは更なる墓穴につながっていく。
サツキも真っ赤になっているし、下手な事は言えない。
「まあ、あれだよね。
稼いでさっさと家を造りたいってのは当然だよね」
「これから子供も作らなくちゃならないしね」
「こればかりは皆で協力ってわけにはいかないな」
「二人限定の共同作業」
「頑張って励むんだろうなあ」
「トオルさんもやっぱり男だったんだなあ」
「さいってー」
「でも、兄貴の財布でも、さすがにこれはきついんじゃね?」
「家を造るのって、一千銀貨くらい必要だったよね」
「何年先になるんだか」
「焦る気持ちも、何となく分かってきました」
「でも、もうちょっとどうにかした方がいいような気も」
「それまで何年もサツキさんをまたさせるのかな?」
「さいってー」
誰もが容赦のない攻撃をトオルに加えていく。
「あー、毎度の事とは思ってましたが」
「ここって、こんな感じでいいんですかね」
先輩方のトオルへの仕打ちを見ているタカユキやシンザブロウなど新参者達は、一様に驚いている。
曲がりなりにも一団を率いる者にここまで遠慮がないというのは予想外だった。
冒険者として、村のしきたりとは違った中で活動するようになったが、こういった調子には馴染めていない。
どうしても遠慮が出る。
やった事に賛同はしかねたが。
確かにトオルの言いたい事も分かる。
一団の拡大を、それによる稼ぎの増大を図るのはありがたい。
そこは認めるが、結婚する相手と一緒の時というのはどうかと思った。
思いはする。
するのだが。
「……いや、ここまで口にはできん」
「……だな。俺ら、先輩方のようにはなれん」
普段の仕事でもそうだが、こういう所でも一団を初期から支えた彼らの真似は出来ないと思った。
するべきでもない事ではあるが。
「まあ、でも」
ひとしきり言いたい事を言ったところで、サトシが話を切り替える。
「兄貴が言うのももっともだと思う。
小屋が出来上がるのを待ってたらどんどん遅れるだけだし」
「出来上がってからやり方教えるってのも時間がかかるしね」
「悪い事じゃないと思う」
「他の人に見せる事も出来そうだし」
「良いと思いますよ、どこに誰をやるのか考えないといけないけど」
「サツキさんを放ったらかしにしなければね」
ようやく話の本題に入る事となった。
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