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レベル141-2 そうまでしてこちらに来たかったのでしょうかね?

 手のかからなくなった新人と、あらためて面倒をみなければならなくなった兵士見習い達。

 それらを受け入れ、あらためてその人数に驚きながら夕方になっていく。

 食事も終わり、風呂も入り、あとは寝るだけ…………となっていく途中でトオルは呼び出しをくらった。

 何の用だろうと思いつつトモノリの部屋に出向く。

 とはいえ、だいたいの内容は察していた。

(どうせ、あのご婦人の事だろうけど)

 その予想通り、トオルを迎えたトモノリはその事を切り出してきた。



「もう知ってると思うが、今日ご来訪された方がいる。

 しばらくはここに居る事になるからよろしくな」

 まあ、そうなんだろうなと思いつつも、疑問に思った事を聞いていく。

「それで、あの方はいったい誰なんですか?」

「兵士見習いたちの付き添いというか、監督だ。

 彼らをまとめるために来てる」

「それだけですか?」

 そこから更に突っ込んでいった。

 途端にトモノリが渋い顔になる。

「まさか。

 分かってると思うが、あれが私の再婚相手候補だそうだ」

「やっぱり」

 まあ、そんな所だろうとは思った。

「でも何でこんな形でやってきたんですか?」

「たぶん、それしか方法がなかったのかもな。

 あれこれと色々な手口でこっちに入り込もうとしてたようだが。

 それを全部断っていたんでな」

「そういう事ですか」

 だから見習い兵士の監督という名目でやってきたという事なのだろう。

「よくやりますね、本当に」

「まったくだ。

 なんでそこまでやるのか理解ができん」

「開拓開墾を進めてるからじゃないですか?」

「そうなんだろうな。

 まあ、余った娘をどうにかねじ込みたいのかもしれんが」

 貴族においても嫁き遅れに未婚男子は結構多い。

 平民庶民と同じで、家を継がない者達は部屋住である。

 そのため、どこかに空きがあるなら、官位官職を得よう、嫁として娘をねじ込もうという事はある。

 今回はたまたまトモノリの所に空きが出たから、こぞって動き出してるのだろう。

 借金が有るのは分かってるが、それでも田畑の新規開拓をしてるのも注目されてるのかもしれない。

「ただ、来た以上どうにもならん。

 悪いが、面倒にならないよう注意をしておいてくれ」

「分かりました。

 変に接触しないようにしておきます」

「助かる。

 監督というのも名目だけで、そちらに出向いたりはしないだろうがな」

「そうなるよう願ってます」

 あれこれ口出しされてはたまらない。

 どんな女か知らないが、下手に首を突っ込まずにいてくれるのが一番だった。

 素人が口を出してくるのが一番始末が悪い。

 何もしないで見ているだけなら良いのだが。

 そんな控えめな性格かどうかは分からない。

 偏見かもしれないが、何かとあれこれ指図したがるのが貴族だと思っているので安心できない。

 権力や権威を持ってる存在というのは、社会にとっては必要なのだろう。

 不思議なもので、身近にいると結構困るものでもある。

「余計な口を挟まなければいいんですが」

「そうなったら言ってくれ。

 追い返す口実にするから」

 とりあえずそういう事を当面の対策とした。



 見習い達への教育はそれでも始まっていく。

 やり方を教えるという事で、穴掘りに始まる陣地の作り方からスタートしていった。

 また、必要となる回収と解体の説明も。

 予想外であったが、ここで多少の齟齬が発生した。

「あの、こういう作業は聞いて無かったんですけど」

 困惑しながら見習いの一人が口を開く。

 どうも、全員戦闘をする者だと思っていたらしく、それ以外の解体などの作業があるとは思ってなかったらしい。

 これはトオル達も予想外だった。

 ただ、モンスターを倒す事だけを考えていれば当たり前かもしれない。

 話として聞いていたのはモンスターを倒す事であり、素材を回収する事ではなかったかもしれないのだから。

「どうすっかな……」

 始めようとした途端にこれである。

 この先を暗示するかのように思えて暗澹たる気分になっていった。

 ただ、これも丁度良い機会ととらえ、有効活用してみようと思った。



「あの方に聞いてみましょう」

 とりあえずその日の作業を終えてからトモノリに進言した。

「監督として来てるなら、こういう時にどうするかを決める事も出来るでしょうし」

 名目だけかもしれないが、そういう事ならそれなりの仕事をしてもらう事にした。

 トオルの方で勝手に決めて良いとも思えない。

 そんな事をしたら、「何てことをしてくれる!」と文句を言ってくるかもしれない。

 見習達を送ってきた者達が何を考えてるかは分からない。

 戦闘だけを考えてるのなら、解体作業などを教えるのは余計な事になる。

 ただ、その確認をするために、見習い達の責任者である彼らの領主にまで聞きに行く余裕もない。

 そんな事をしたら、確認のやりとりだけで何週間もかかってしまう。

 現場における責任者というのは、こういう時に必要になる。

 今回の場合、監督としてやってきたあのご婦人になるはずである。

「あの人に決めてもらう事にしましょう。

 ただ、解体も含めて一纏めですし、それが出来ないならお引き取り願うしかないですが」

「分かった、それでいこう」

 トモノリは即決した。

 丁度良い口実が出来たと思ってるのかもしれない。

「ところで、今日はどうしてたんだ?

 全員でモンスターを倒してたら素材が手に入らないと思うんだが」

「仕方ないから、俺らが解体と回収に回ってました。

 戦闘は見習い達に任せて。

 おかげで稼ぎは散々ですよ」

「それはご苦労だったな」

「まったくです。

 だからこちらの要望をしっかり伝えてください。

 出来ないなら追い出す事にして」

 その場合の責任は、監督としてやってきたご婦人に押しつける事を言外に漂わせた。

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