レベル139-1 片付かない問題をいつまでも気にしてられません
「とまあ、こんな調子なのでよろしくお願いします」
色々と考えた条件をトモノリに提示する。
それを見たトモノリは苦笑するしかなかった。
「分かった、一族には伝えておく」
「はい、どうかよろしく」
「しかし、冒険者になって、しかも家族まで貴族を捨てろとは」
「それくらいしてもらわないと、こっちとしてもやってられません」
当初は本人だけを対象にすれば良いと思っていたが、それでは家族の圧力を排除しきれないと思った。
やむなく範囲を拡大する事にした。
(まあ、これで俺の方は回避出来るか)
少なくとも、結婚を理由にこちらに介入してくる者は諦めるだろうと。
実際、無理や無茶を並べた条件である。
貴族からの話はこれで消す事が出来ると思った。
(問題は村の方だよな)
村長達の方にはこういった手段は通じないだろう。
冒険者になるのもそれほど抵抗はない。
部屋住なら喜んで周旋屋に登録をするだろう。
境遇が今より悪くなるわけでもないから面倒だった。
もっとも、今は開拓開墾してる者達への嫁入りの方が優先されている。
トオルの方に面倒が舞い込む可能性はかなり低くなっている。
田畑の開墾と拡張で人手も必要だし、暫くトオル達にかまけてる余裕はないはずだった。
男は田畑を耕して自分の土地を持つ事を目指してるし、女はそんな男達への嫁入り話で持ちきりだ。
冒険者よりは田畑持ちの方が評価は高い。
いずれ再びトオルに縁談を持ってくるかもしれないが、今はそうではない。
開拓開墾が続いてるうちは絡んでくるとは考えにくい。
そしてそれは、この先五年十年と続く。
(油断は出来ないけど)
何かの拍子にトオルに声をかけてくるかもしれない。
そうなった時の対処方法が見あたらないから問題だった。
こればかりは阻止する手段がなかなか思いつかない。
(稼ぎがない事を説明してくしかないか)
危険な稼業である事を示して、相手を躊躇わせる。
残念ながら、それが精一杯だった。
煩わしい問題がつきまとう。
それだけ影響力が出て来てしまったからではある。
そこに取り入ろう、あるいは取り込もうという考えも分からないではない。
受け入れるつもりはなかったが、やむなき事と思うしかなかった。
ともかく日々の仕事に邁進するしかない。
面倒な事がまとわりついていても、稼がなければどうしようもない。
年が明けて一月二月と妖犬を倒していく。
数はやはり頭打ちになり、ある一定線を越える事はない。
それでも一日に一千六百を下回る事もない。
苦労もなく妖犬を倒せるのを喜ぶべきなのだろう。
やはり妖ネズミより稼ぎは上だ。
この調子で金を稼いでいきたい。
経験値も増やしてレベルアップも狙いたい。
残念な事は、妖ネズミと同じくらいの経験値らしく、三ヶ月ほどしてレベルアップを迎えた事だろうか。
幾分強いので、もう少し経験値が多いかもしれないと期待していたのだが。
(こりゃ、もっと強いモンスターを倒しても、経験値は変わらないかも)
少しばかり落胆はしてしまう。
続きを20:00に投稿予定




