レベル136-2 問題はさておき、利点もなくはないかもしれません
小屋の建造に着手するのが十一月に入ってから。
話が出て来てから一ヶ月ほどなので、異例の早さと言える。
それだけこの事にかける意気込みが強いのだろう。
あわせてトオルも今後の事について考える事になる。
新しく来る者達の教育で、どのように人を割り振るか。
サトシとレンには引き続き頑張ってもらうが、それだけでは足りない。
アツシ達も教育係に回して、新人達と交代させる。
一度に大量に人間が入ってくると、受け入れる側の準備も手間がかかる。
何にしても人手不足であった。
初期の人数として二十人ほどを受け入れ予定であるが、それだけでもう手がいっぱいである。
おかげで、妖犬退治も後回しにするしかない。
その代わりというわけではないが、新しく作る宿舎は大きめに作ってもらう事にした。
収容人数に余裕を持たせ、トオル達の方の新人も受け入れられるように。
何にしても人手は必要だし、今後を考えれば増員はしていかねばならない。
トモノリもそうだろうが、トオルの方も人がいなくて困ってる。
今後、更に兵士の教育をしていくならば、増員は必須だった。
便乗するのも気が引けるが、使えるものはどんどん使っていくしかない。
トオルの方でそういう場所を用意する事も出来ないのだから。
(周旋屋に連絡入れておかないとな)
入れる時期を見極めねばならないが、先に声をかけておくべきではある。
また、行商人にも伝えておかねばならなかった。
人が増えるので素材も増加すると。
「またか」
多少呆れ気味の言葉が返ってきた。
「馬車を増やさないとな」
あわせて人も増やさねばならない。
しかし、それも簡単にできる事ではない。
今からある程度人を確保し、物を教えるとなると手間がかかる。
何でもそうだが、多少なりともやり方を知ってる人間はそう多くはない。
既に身につけてる人間はとっくにどこかで働いてるのが常だ。
一から教えるとなったら手間も時間もかかる。
猶予期間がだいたい六ヶ月ほどあるが、それでは全然足りない。
それが分かるだけに、トオルもどうしたものかと思ってしまう。
このままでは上手く商品を捌く事ができなくなってしまう。
「そしたら、他の商人に声をかけるしかないかも」
競争相手を増やしてしまう事に多少の引け目を感じるが、こればかりは仕方ない。
出来ればお得意さんを作っておきたい所であったが。
複数の業者に競争させる事の利点ももちろんある。
だが、付き合いの長い、気心の知れた相手もまた大事であった。
それを失いたくはない。
「あなたに優先して卸す事にするけど」
「そうしてもらえると助かる」
具体的な量は決めなかったが、後発の者達との差別化をそうやって図る事にした。
「あくまで、俺の所から卸すってだけだけどね」
トモノリの方がどうするかまでは決められない。
そこまで口出しできる立場ではないし、して良いことでもない。
そういった線引きをしっかりしておきたかった。
「そりゃ分かってるさ」
行商人もそこは納得はした。
「ま、今後も取引をよろしく」
「こちらこそ」
お互い、繋がりを確かめあうように言葉を交わした。
そして。
妖犬退治に向けての準備もしていく。
いずれ教育に人を取られるのは分かっているが、それまでまだ猶予がある。
それまでに金を稼いでおきたかった。
そのために、陣地・防備の形も変更していく。
今までは四角形に柵を設けていたが、それを大きく崩す。
なるべく効率よく戦えるように。
その準備に一団全部であたる。
作業自体は他の者に手伝ってもらうしかないが、人手をなるべく多く投入したい。
それに、モンスターからの防衛もしなくてはならない。
もっとも、手間のかかる作業ではないので、時間はかからない。
費やす体力は必要だが、あまり気にするほどでもないかもしれなかった。
(でも、その間は収入無しか……)
それだけは頭の痛い問題だった。




