レベル136-1 問題はさておき、利点もなくはないかもしれません
(面倒だよなあ)
持ち上がってきたらしいトモノリの再婚。
それほど色々思いつくわけでもないが、そう思えてならなかった。
相手がいるならその方が良いとは思うが、付随してくる諸々が鬱陶しい。
援助はありがたいが、割に合うかどうかとすら思ってしまう。
(もうちょっと打算が無ければなあ……)
トモノリの再婚についてはそれほど文句はない。
相手がいるなら、むしろ賛成したいところだった。
色々あったが独身のままよりは良いと思える。
ただ、それがこの領内の運営に影響があるなら諸手を挙げてというわけにはいかなかった。
結構自由にやっている今の現状が壊されてはたまらない。
なんだかんだで割と好き勝手にやっていられる今は貴重だ。
それを出来るだけ持続したいと思う。
自分勝手とは思うが、偽らざる心境はそんなものだった。
トモノリに幸せになってもらいたいとは思うのも確かだが、まずは我が身である。
自分を犠牲にしても、という程にはなれない。
他人の為に何かするのは、まずは自分を大事にした上での話だ。
でなければ無駄な損害を増やしてしまう。
自分と他人のどちらかを選ぶのではなく、自分も他人も良い結果を得られるように。
自分を潰すなんてまっぴらだった。
そんなの前世で十分に経験したのだから。
とはいえ、全く無関係でいられるわけもなく。
なんだかなで影響を受ける事にはなってしまう。
再婚はともかくとして、一族から適当な人間を受け入れる事にはなっていく。
領主の仕事の手伝いとしてである。
開拓開墾のおかげで仕事が増えている。
それを捌く為にも人が必要だった。
ただ、内部の情報を扱う事になるので、迂闊に人を入れるわけにもいかない。
だからこそ、身内の人間を用いる事になる。
それですら安全とは言い難いが、完全に外部の人間であるよりは幾らかマシというもの。
例え口外しないにしても、身内以外の人間が内部の事を知るのには抵抗がある。
協力を申し出てる今が良い機会だった。
離婚が成立した奥方がいる頃は、火の粉がふりかかるのを恐れてか誰も手助けを名乗り出てくれなかったのだから。
おかげで周旋屋に依頼をする羽目になった。
今だって、少々羽振りが良くなったトモノリの所と縁を持とうとしてるだけであろうが。
以前と比べれば変わったものである。
また、変わっていく何かは、それは別種の相談ももたらしてきた。
「それでだな」
一区切りつけるような言葉が、トオルの思考を中断させた。
「もっと別の話も出て来てはいる。
そちらは引き受けようかとは思ってるんだ」
「でも、面倒な事なんですよね?」
わざわざトオルに持ち出してくるのだから、無関係とは思えなかった。
トモノリも苦笑をしているのを見て、まず間違いないと思えてしまう。
「察しが良いのはありがたい。
もちろん手間と面倒がかかる話だ」
「何か、色々と出て来ますね」
呆れるしかない。
「それで、どんな話なんですか」
「また兵隊の訓練を頼みたい」
「…………どういう事ですか?」
「君にふさわしい相手がいないか探す時に、君のやってくれた事を話していたせいかね。
モンスター退治で得られた成果が結構気に入ったようだ。
だったらウチも、と思うところが結構いたんだよ」
「それで、つまり?」
頭を抱えたくなった。
あるいは、天を仰ぐべきか。
どちらが良いかは分からないが、とりあえず先を促していく。
「だから、自分達の所でもやりたいと言い出してくるのが多くてね。
でもやり方が分からない。
だから、君の所でやり方を習ってみようか、というのがいてね」
「それで、俺の所で研修を?」
「そういう事になる」
何の事はない、以前やった村人の教育をやれという事である。
ため息が出てきた。
「まあ、やれって言われりゃやりますけど。
さすがに報酬を要求しますよ」
「なに、こっちにも考えがある」
トモノリは少しだけ、人の悪い笑みを浮かべた。
何かを企んでるような。
ただ、それがすぐにため息に変わる。
「というか、これを飲んでもらわんと話にならんからな」
その後。
再婚はともかくとして、一族から兵士の候補を受け入れる事になっていった。
必要な設備を各一族が負担して作る事と引き替えに。
収容能力が限界にきていたので、これは必須であった。
また、得られる稼ぎもこちらに滞在中はトモノリの手に入るようにした。
村にいる間にかかる兵士候補の生活を請け負う事を条件にであるが。
それでもおそらく収支は黒字にはなるだろう。
人を受け入れるための施設も着工となり、半年もすれば完成する。
相応の人数を受け入れる小屋と、新たに増える素材を収納する倉庫が造られていく。
完成まで数ヶ月かかるが、十分であった。
元々の予定より早く求める物を手に入れる事になるのだから。
それに人手が増えた分だけトモノリの収入も増える。
増える手間よりも大きな利益であった。
トオルにも多少はその恩恵がもたらされる事になる。
ただ、再婚の話が無くなったわけではない。
トモノリにとってそちらは頭の痛い問題ではあるだろう。
(頑張ってください)
他人事なので、トオルは心の中で声援を送るだけに留めた。
相手が以前の奥方のような女でない事だけは願いながら。
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