レベル124 他の皆も同じように考えてくれてるようです
さすがに二千という目標には到達出来なかったが、一日の成果は一千五百に到達した。
十人で捌いたにしては上出来である。
最後の方は解体が追いつかなくなったので、トオル達も手伝いに回る事になった。
と言っても、解体作業そのものはそれほど滞っていない。
問題なのは、倒したモンスターの回収と、解体したあとの残骸の処理だった。
回収の方はさほど時間もかからず終わったが、残骸の放棄はそうはいかなかった。
トオル達はさばき終わった残骸をひたすらに運び出す事に残りの時間を費やす事となった。
素材の運搬も含めて。
数が多ければ手間も増える。
当たり前の事だが、おかげで何回も往復する事になった。
ともかく人手が足りない。
素材の数で稼ごうとすると、どうしてもそこに問題が出てしまう。
(こりゃ、本当にどうにかしないと)
やはり、上を目指す必要があった。
「それはそう思います」
食事後の話し合いで、珍しくサツキが一番に口を開いた。
「素材はたくさん取れると思います。
でも、その分人が必要になってますから」
「俺もそう思うよ」
アツシも続いた。
他の者も同意見のようだった。
「妖犬みたいに値段の高いものを狙わないと、負担は大きくなるだけですから」
「レベルが上がったらそうした方が良いと思う」
「あんだけあると、解体するのも面倒だし」
「運ぶのだってきつい」
思うところは皆同じのようだった。
「そうなると、全員レベルを上げないといけないけど。
それは分かってるんだな?」
すぐに上がるようなものではない。
今までのペースでも、一年かけてレベル3か4といったところだった。
その間我慢できるのかというのが問題である。
「まあ、それは仕方ないですね」
「すぐには無理なのは分かってるよ」
「来年くらいまではお預けだね」
「そうなれば解体ももうちょっとはかどるだろうし」
「……意外とあっさり受け入れるんだな」
これには少し驚いた。
「焦っても仕方ないですから」
「今でも結構稼げてるし」
現状に不満がないのはありがたかった。
そこに安住してもらっては困ってしまうが。
「それに、レベルが上がれば妖犬に行けるんでしょ」
「だったらそれまで頑張ればいいんだし」
上を目指す意志があるのが確認出来た。
「じゃあ、暫くは妖ネズミ退治でレベルを上げるか」
言ってる事がゲームっぽいが、レベルというものが確認出来るのだからこう言うしかなかった。
「でも、出来る奴は増やさないとな」
「そうですね。この人数だと妖犬は難しいですし」
「出来れば十人くらいでやりたいよ」
「解体場所も広くとってもらわないと」
「残骸の放棄も上手くやりたいし」
だんだんと要望が出て来る。
それらがこなさなければならない課題であるので、無視も出来ない。
「他に何かあるか?」
聞くだけ聞いておこうと思い、そう言ってしまう。
おかげでその日の会議(雑談)は思った以上に長引いてしまった。
多少は目的意識が出て来たからだろうか。
次の日からの動きが少し変わった。
二千匹の目標というのはとりあえず無くしたが、それでも全員がモンスターを効率よく倒す事に集中していた。
おかげで前日ほどではないが、一千以上の素材を確保出来た。
その後も一千を超える調子を続けていく事が出来た。
各自が自主的に目標や目的を見つけた時の強さを発揮していた。
それ故の無茶をしないように、トオルは適切に抑えるよう努める事になる。
体力や気力の配分を間違え、一気に燃え尽きる事の無いように考えていった。
当面の目標として、自分達の小屋を造る事を提案したのも大きいのかもしれない。
あれこれと必要なもの、欲しいものを提示された中で、トオルが提案したものだった。
こちらの村に人を呼ぼうにも、村に収容能力がない。
そのため、今現在の人数が限界となっている。
人を増やして負担を軽減しようと思ったら、それを自分達で用意するしかない。
必要になる金額については、以前の食後雑談という会議で述べていたから、驚く者はいなかった。
出来るかどうか分からないので、幾分不安を抱いてはいたが。
それでも当面の目標としてそれを手に入れようという流れにはなった。
必要になる土地と、それを手に入れる方法は別ではある。
それについては、このあたり一帯の権利者であろう村やトモノリに話をもっていくしかない。
話しが上手く進めば良いが、これがどうなるかは分からない。
この世界における土地の権利や売買がどうやってなされるかも分からない。
だから、上手く話しが進められる自信はなかった。
それでも、やるだけやろうとは思っていた。
駄目でもともとである。
その開き直りが、「とりあえずやってみる」という事につながっていく。
回収した素材を運び込む時に、その事を提案してみようと思った。
ただ、それに伴って色々と考えていった結果、必要になる施設は小屋だけでない事も分かってきた。
収容能力が足りないのは人数だけではない。
素材の保管場所も足りない。
倉庫も必要になる。
それに、人が住むとなると、寝床だけというわけにはいかない。
食事を作る炊事場や、風呂に便所も必要になる。
水を引き、洗濯も出来るようにならないといけない。
モンスターの襲撃に備えて、柵や堀を作っておく必要もある。
モンスター除けの魔術的な備えも必要になるだろう。
それらを考えると、小屋だけの値段ではおさまらないのが分かってきた。
最低限必要な部分を、と思っていたが、それだけでも色々必要なのが分かってくる。
小屋だけで三百銀貨(職人による作業付)では済まないがよく分かる。
土地代を考慮しなくても、一千銀貨は必要なんじゃないかと思えてきた。




