第五話 借りを返しに
水売りの船が、もう店ではなくなっていた。
船腹に吊られていた値札がない。水を注ぐ蛇口は栓をされ、その下の台も畳まれている。船首から床へ延びていた鎖も外れていた。
市場の床と船の乗り口をつなぐ渡し板だけは、まだ掛かっている。
「ネリさん!」
走ったせいで、声が裏返った。
乗り口にいた赤茶色の短髪の人が、こちらを向く。夕方、水運びの賃金を払ってくれた水売りだ。小柄だが肩は広く、茶色の前掛けを締めた腰にも厚みがあった。
「乗るなら早く。置いてくよ」
板を駆け上がり、ネリさんの前で足を止めた。
「道具を借りたいんです。コハク号の鎖を外すための、持ち運べる巻き上げ機。そういうの、ありませんか」
ネリさんの視線が、俺の顔から背後へ飛んだ。
向こうではコハク号がまだ低くうずくまっている。船首に立ったオルド船長の灰色の上着が、家々の灯りを背に見えた。
「あそこの六本脚か」
「はい。機械を見られる人はいます。引く力を別の道具で受ければ、外せるって」
「空の樽を積み下ろすやつがある。重いよ」
「運びます」
ネリさんは船内へ身を引き、足元の木箱の蓋を開けた。
丸く平たい鉄の道具に、鎖が何重にも巻かれている。先端の鉤だけで、俺の握り拳ほどもあった。
両手で持ち上げようとして、膝を曲げ直した。
重い、という言葉の想像を越えていた。
「一人で抱えるもんじゃない。そこの棒を通しな」
言われた木の棒を取っ手へ通す。ネリさんが反対の端を持ち、二人で箱の縁へ引き上げた。
「どうして、こっちは鎖が外れてるんですか」
「売る水がなくなったから、さっさと帰るつもりでね。あんたらが飯を食ってる間に、出る支度をしてた。助かったよ」
乗り口の下には、車軸の折れた荷車がまだ鉄の台に載っていた。さっきまで俺たちが水を汲んでいた樽も、その上にある。
ネリさんも、俺の視線の先を見た。
「あれは置いてく。船さえ無事なら、また買える」
樽の縁を見ていた目が、俺へ戻った。
「ただ、こいつまで失くすと商売にならない。返しに来られる船は、あるんだろうね」
「外せれば。リゼが動かせます」
今、俺が言い切れるのは、それだった。
「失くしたら、働いて返します。金は、今、一枚しかないので」
ネリさんの鼻の周りに、細かなそばかすがあった。そこへ皺が寄った。
「最後の四杯、ちゃんと届けた男の言い分なら聞くよ。持ってきな」
胸の奥が熱くなった。
礼を言いかけると、ネリさんはもう棒の端を持ち直していた。
「あたしも行く。この道具、扱ったことないだろ」
「船は」
「先に出す。あたしと道具を送り届けて。それが条件だ」
船内へ首を向け、大声を出す。
「下で待ってな! コハク号へ乗ってく!」
「承知!」
窓から、髪を短く刈った痩せた男が手を上げた。三十代くらいか。今はこの船の舵を任されているらしく、もう片方の手は操縦桿を離さない。
床下で、重い歯車の音が速くなった。
市場の入口へ目をやると、広い坂の先端がさっきより高い。巨船の甲板と砂漠をつないでいた道が、両脇の鎖に引かれ、ゆっくり持ち上がっている。
あれが上がり切ったら、小さな船は一隻も下りられない。
「急ぎます」
「転ぶなよ。落としたら、足が潰れる」
二人で棒を持ち、板を渡って市場の床へ下りた。平らな場所で肩へ担ぎ直すと、ずしりと重さが食い込んだ。
前を行くネリさんと歩調を合わせる。走りたいのに走れない。
背後で渡し板が引き上げられ、水売りの船が脚を伸ばした。こちらを避けて踏み出した一歩が、鉄の床を腹の底まで鳴らす。
*
「いいのを借りたな」
巻き上げ具を地面へ置くと、ボルグさんは鉤と鎖を確かめ、太い指で本体の刻印を拭った。
船首から見て右側の、黒い巻き取り箱のそばだった。
コハク号の前には、左右二本の鎖が張っている。
それぞれの鎖を、床に据えつけられた黒い箱が巻き取っていた。リゼが船を歩かせようとしても、この二本が船首を引き戻す。
だから、まず箱を止める。それから鎖を緩めて、船の金具から外す。
「コハクの機関を見てる、ボルグだ」
「水売りのネリ。樽を吊る道具で足りるかい」
「船の重さは脚が支えてる。こっちへ引く力だけなら、これで受けられる」
ボルグさんが箱の蓋の内側を指した。
「巻く筒を、点検用の留めで止めた。勝手に巻き足しはしねえ。ただ、船に引かれて部品が噛んでる。まだ外せん」
ボルグさんが、借りた道具の片端を箱の頑丈な枠へ掛け、もう一端を、船へ延びる鎖の途中に留めた。
ネリさんが手元の輪になった細い鎖を引くと、道具の中で小さな歯車が鳴った。
ちり、ちり、ちり。
船を引き留める太い鎖のうち、箱に近い短い部分だけが、わずかに垂れた。
代わりに、借りた道具の鎖がぴんと張る。
「よし。そのまま」
ボルグさんが、箱の中の短い棒を引いた。
抜けない。
肩を入れ直す。首の手拭いがずれ、四角い顎の下へ汗が走った。
俺は、そばに落ちていた蓋を通路の端へどかした。道具を持って走る時、ここに躓くわけにはいかない。
触っていいと言われていない鎖には、手を出せなかった。
がつん、と音がした。
ボルグさんの肘が後ろへ動く。
箱の奥ではまだ何かが回っていたが、鎖を巻く筒は、それと離れて止まっていた。
ボルグさんは巻く筒の留めを解き、顔を上げた。
「もう箱には引かれん。ゆっくり緩めてくれ」
ネリさんが道具を操作するたびに、かち、かち、と硬い音がする。
張りつめていた鎖が、少しずつ弓なりになった。
船首に屈んだ船長が、掛け金を持ち上げる。
外れた鎖が、床へ落ちた。
じゃらん!
「一本!」
思わず声が出た。
操舵室の窓から、リゼがこちらを見る。
「分かった。まだ動かさない!」
窓枠に触れていた彼女の指が、すぐに操縦桿へ戻った。
船は、脚を踏み替えず待っている。
その向こうの黒い船から、甲高い笛が鳴った。
セヴランだ。
市場の通りに止めた回収船から、床に落ちた鎖を見ていた。片手を大きく振り、入口のほうを指す。
「坂を上げろ! 速度を上げていい!」
甲板の開き戸から顔を出した革帽子の男が、その声に頷き、下へ消えた。
入口の両脇で、大きな鎖が跳ねた。
がら、がら、がら、と間を置いていた音が、一続きの唸りへ変わる。
坂の先が、目に見えて持ち上がった。
「反対へ!」
ボルグさんが立った。
緩んだ巻き上げ具を外し、俺とネリさんで再び棒を担ぐ。船へ渡る板の下をくぐらず、床まで下りた端を回って、左側の箱へ運んだ。
背後から、金属の筒を通した声が追ってきた。
「道具も手間も惜しまんねえ。水運び」
黒い回収船の上で、セヴランが拡声用の筒を口から離す。
こちらへ向ける、右の手袋の指先が白く擦り切れていた。
「間に合わなきゃ、お前までここに残るぞ。降りる橋はあっちだ」
人を逃がす救難船は、巨船の外でまだ待っている。細い橋を、荷物を抱えた人が一列で渡っていた。
その橋なら、今からでも走れば間に合うかもしれない。
家も、店も、リゼも、全部置いていけば。
棒を握り直した。
「道具だけでも、えらい重さだろう」
顔を上げ、聞こえるように返した。
「ええ。持ち主ごと、無事に返しに行きます」
ネリさんが鼻を鳴らした。
「荷物みたいに言うんじゃないよ」
「大事に運びます」
「まず、それを静かに下ろしな」
二人で膝を曲げた。
鉄の道具が床につくまで、指を離さなかった。
ボルグさんはもう左の箱を開けている。
巻く筒を止め、借りた道具を掛ける。ネリさんが細い鎖を引き始めた。
俺は船首を見上げた。
「船長! 水売りの船へ、この人と道具を送り届けたいんです。下で待ってもらってます」
「分かった。先にその人を上げろ!」
オルド船長が片膝をつき、二本目の鎖の掛け金へ手を掛ける。眉の太い顔から汗が滴っていたが、目はずっとボルグさんを見ていた。
緩む前には外さない。
入口の坂が、さらに上がる。
もう坂の先端と砂との間には、はっきり隙間がある。
向こうの水売り船は、先に下り切っていた。砂を蹴った脚が白い煙のようなものを立て、少し離れた場所で止まる。
ここからは、俺たちの番だ。
「リゼ!」
ボルグさんが窓へ声を飛ばした。
「もうすぐ外れる。前へ出したら、入口へ頭を向けろ!」
「分かってる!」
低い返事だった。
いつもの、食べ物を見つけた時の明るい声とは違う。
ちり、ちり、とネリさんの手元で歯車が鳴る。
それをかき消すほど大きな唸りが、床の下を走った。坂を吊る鎖が動くたび、足の裏へ細かな震えがくる。
早く。
頼むから、早く。
自分でやったほうが遅くなる仕事を、ただ待つのが、こんなにきついとは思わなかった。
ボルグさんが短い棒を引く。
がつん。
「切れた!」
ボルグさんが筒の留めを解くのを待って、ネリさんがゆっくり鎖を戻す。
急げと言いそうになった口を閉じた。ここで手を滑らせれば、誰かが怪我をする。道具の中の硬い音を、一つずつ数えた。
かち。
かち。
かち。
船長が腕を振った。
二本目の鎖が外れ、重たい蛇のように床へ崩れた。
「乗れ!」
借りた道具を外したボルグさんと俺で、棒を持つ。
ネリさんを先に板へ上げ、その後を続いた。上では赤い頭巾の若い船員が待ち構えていた。頬の細い、鼻の頭に油をつけた男だ。
「そっち、もらう!」
ボルグさんの持つ端を引き受け、船内へ引き上げる。
俺が最後の一歩を上がると、船長はもう渡し板の綱を引いていた。
足の下から、さっきまで踏んでいた道がなくなった。
「これを、どこへ」
「通りの脇へ寝かせろ。留めるのは俺がやる。お前は中へ入れ」
船長の指す場所へ道具を置いた。
ネリさんは家の壁際にある手すりを掴む。ボルグさんが隣につき、赤い頭巾の船員が二人の前へ身を入れて、作業の綱を片づけていた。
俺は乗降台の隣の扉へ駆け込んだ。
「戻った!」
リゼの肩が、ほんの少し下がった。
振り向きはしなかった。
「腰掛けに座って。両手で掴まって」
腰掛けにあったリゼの袋を足元へ下ろし、体を押し込む。壁の取っ手を握った。
俺が座ったのを横目で確かめてから、リゼは踏み板を深く踏んだ。
ごん。
船の腹で、太い棒を押し込むような音がした。
脚の踏み替えが、床を二度、小さく揺らした。
窓の外の黒い箱が、後ろへ流れた。
進んでいる。
鎖に引き戻されず、コハク号が、自分の脚で進んでいる。
*
正面にあった向かいの船が、ゆっくり右へずれていった。
市場の大通りへ出たコハク号が、入口へ向かって曲がっている。
リゼは片方の操縦桿を引き、もう片方を小刻みに戻した。窓の下へ振り出される前脚が床を掴むたび、景色が少しずつ回っていく。
家の窓ガラスが、かたかたと鳴った。
通りの端に、鍋が一つ転がっていた。
さっきまで商売をしていた町が、空き箱と畳み損ねた天幕を残して、灯りだけの場所になっていく。
入口まで、邪魔をする船はなかった。
自由になれた船はもう下り、鎖に繋がれた船は両側の列に残っている。
その間を、俺たちだけが歩いていた。
船長が操舵室の戸口へ来た。
「十六人、全員乗ってる。行けるか」
「坂の先まで、まだ足が届く」
リゼは窓の外を見たまま答えた。
「でも、下りる間も坂が上がる。家の中、物を押さえてて」
脚は左右に三本ずつ。前から順に、あの隙間を越えて砂へ下ろすのだ。
「俺は後ろの脚を見る。着いたら知らせる!」
船長はすぐに通りへ戻り、家々へ物を押さえるよう声を掛けながら、船の後ろへ走った。
目の前に、広い鉄の坂が迫る。
市場の床から外の砂へ下る、船のための道。その先端が、今は砂を離れて持ち上がっていた。
コハク号の前脚が坂を踏むと、分厚い鉄板の下で、ぼおん、と鐘に似た音が鳴った。
坂の両脇では、鎖が巻かれ続けている。
リゼは一度、舌で唇を湿らせた。
帽子の下からこぼれた細い髪が、頬に張りついている。
「途中で傾くよ」
「分かった」
「手、離さないで」
「大丈夫。こっちは掴まってる」
怖くないわけがなかった。
取っ手を握る手が汗で滑る。掌の皮が痛い。こちらへ来る前、トラックの車輪が迫ってきた時の音を、なぜか思い出した。
けれど、今は目を閉じなかった。
リゼが左の踏み板を押し、右の桿を引いた。
船の前が下がる。
後ろの家々から、戸棚を押さえる声が聞こえた。
「あと少し……」
彼女が見ているのは、坂の先の砂だった。
先端が持ち上がるより早く、前脚をそこへ届かせる。
窓の下へ鉄板の縁が近づき、消えた。
コハク号の船首が、坂の外へ出たのだ。
窓の下へ見える前脚が、坂の向こうへ踏み出した。
鉄の足が下がっていく。
まだ、砂に届かない。
体が、腰掛けごと前へ引かれる。
取っ手に縋った肘が伸び切った。
ざんっ。
鉄を叩く音ではなかった。
重い砂袋を、地面へ落としたような音だった。
「前、着いた!」
リゼが叫んだ。
右。左。
二本の前脚が砂を踏み、船の傾きが止まる。
息を吐く暇もなかった。
坂に残った四本の脚が、鉄板ごと持ち上げられている。船の前は砂に支えられ、後ろはせり上がる坂の上だ。
ゆっくりしていれば、尻からひっくり返される。
リゼの腕に筋が浮いた。
「真ん中、下ろす!」
踏み板を戻し、今度は反対を踏む。
背後で何かが倒れた。
続いて、「押さえた!」という声がした。
リゼは振り返らない。
船体の下で、がん、がん、と二つの関節が鳴った。
次の瞬間、その下から砂を踏み崩す音が返ってきた。
残りは、後ろの二本。
俺の目からは、もう坂が見えなかった。リゼも前を向いている。
後ろを確かめに行った船長の声だけを待った。
「右、離れた!」
家々の間を、声が抜けてくる。
ぎい、と長く軋んだ。
「左が縁に掛かってる!」
船長が叫んだ。
リゼの顎が上がる。
「左、持ち上げる!」
彼女が桿を手前へ引いた。軋みが止まる。
間を置かず、踏み板を押し込んだ。
「もう、一歩!」
ぐん、と背中が腰掛けへ押しつけられた。
床が大きく揺れる。
奥歯がかちりとぶつかった。
ざあっ。
船の後ろで、砂が崩れた。
「全部下りた!」
船長の声がした。
リゼはまだ手を止めず、コハク号を三歩、四歩と進ませた。
砂を踏む、低く柔らかい響きが続く。
床下を伝わっていた、あの大きな巻き上げの唸りは、もうなかった。
俺たちは、巨船から下りていた。
*
リゼが踏み板から足を外した。
コハク号が止まる。
家の戸が、一つ、また一つと開いた。誰かの「割れてないか」という声に、「鍋は無事」と返事がした。
その後から笑いが起きた。短く、少し震えた笑いだった。
リゼは、操縦桿を握ったままだった。
「リゼ」
返事がない。
肩が細かく上下している。
俺は取っ手から指を一本ずつ剥がし、足元の袋を開けた。
塩の包みの横に、自分で買った木の杯がある。席の脇に掛かった彼女の水筒を指した。
「これ、もらっていい?」
「……うん」
杯へ水を注ぐ。
底が広いおかげで、棚へ置いても倒れなかった。けれど水筒の口は、なかなか杯の上に止まってくれない。
俺の手も震えていた。
「半分、こぼしてる」
「初仕事じゃないんだけどな。水運び」
やっと、リゼがこちらを見た。
口元が笑いかけて、うまく笑いにならなかった。
杯を差し出すと、彼女は片方の手を桿から離した。
もう片方の手も離し、両手で受け取る。
「家、出せた」
小さな声だった。
「うん」
「みんな、いる」
「お客さんも一人増えた」
水筒の蓋を締めて、席の脇へ戻した。
リゼが目を伏せた。
杯の縁の向こうで、長い睫毛が濡れていた。
俺は窓の外へ目を向けた。
彼女が水を飲む、小さな音がした。
夜の砂漠に、船の窓の灯りが浮かんでいた。
水売りの船がいちばん近い。その先にも、巨船から逃げられた船が何隻か止まっている。
屋根のない救難船では、細い橋を引き上げる人影が見えた。甲板には、手荷物を抱えた人が大勢座っていた。
あの人たちの家は、まだ向こうだ。
巨大な船が、砂漠の暗がりに壁のように立っていた。
上には、小さな窓の灯りが幾列も並んでいる。夕方には一緒の町だった船が、今は持ち主の手の届かない高さにあった。
水売りの船から、鐘が二度鳴った。
「おーい! ネリ!」
「いるよ!」
戸口に来たネリさんが、外へ怒鳴り返した。
前掛けの胸のところが油で黒く汚れている。手には、巻き上げ具を担いだ棒を持っていた。
「道具は船長が縛り直してくれてる。近くへ寄せられるかい」
「はい」
リゼが杯を俺へ返した。
頬を手の甲で拭い、ずれた帽子を被り直す。
まだ少し鼻にかかった声だったが、前を向く目は、もう水売りの船との距離を測っていた。
「ネリさんを送ったら、寝る場所まで案内するね」
「ありがとう。横になったら、すぐ寝そうだ」
そう言うと、リゼも目元をこすった。
「私も、今日は早く寝たい。朝ご飯は一緒に食べようよ」
「いいね。寝てたら起こしてくれ」
「じゃあ、呼びに行くね」
リゼは笑ってから、ネリさんへ向き直った。
「そちらの船の、どっち側に寄せればいいですか?」
「左側。あそこに乗り口があるから」
ネリさんが窓越しに指さすと、水売りの船からも手が上がった。
リゼは操縦桿を握り直した。
俺は杯を棚へ置き、取っ手を掴んだ。
コハク号が水売りの船へ向かって、ゆっくり歩き始めた。




