111、新人トクトクプラン
ギルドを通して冒険者に依頼をする場合、方法は2つある。
1つは張り紙を出すこと。依頼者はギルドで受付を行い、職員がギルド内や街の掲示板に掲示。達成が確認されたらギルドから連絡をもらう。
2つ目は依頼者が冒険者と直接交渉する方法だ。
魔物退治や街の公共事業なども含んでいるため、冒険者の大半は掲示板を見て仕事を見つける。
直接交渉となると高額な報酬を期待できる分、多少厄介な目に遭うことを覚悟しないといけない。守秘義務だったり余計な恨みを買ったりとか。
どちらの方法を取るにしても、依頼者は冒険者の報酬の他に相応の額を紹介料としてギルドに払わなければならない。
「しょっ……紹介料ですかかぁ!?」
獣人で浮浪者な依頼者は、ガドラントの受付で声を上げた。
顔を青くさせる彼に対して受付嬢は無表情のまま話を進める。
「ご予約の際にお伝えしたはずですが?」
「それって『新人トクトクプラン』のことですよね。確か新人冒険者なら2人無料のはずじゃ……」
上着をさばくって財布を出しながら問いかける。緊張してるのか落ち着きが無い。見てるこっちが心配になる。
「こちらを御覧ください」
受付嬢は机の下から冊子を取り出すと、カウンターの上に広げる。
「ここの『新人トクトクプラン』は新人冒険者パーティへ依頼をする場合は2人まで無料、とあります」
「書いてありますね、確かに」
「ランク不問のパーティかつ予算を抑えてとの要望でしたので、こちらのプランで組ませてもらいました。今日紹介した冒険者のパーティは4名ですので、新人料金の2人分の差額で結構です」
続いて細かな数字と線がびっしりと書き込まれた料金表を男性に手渡す。
しばらくその表と自分の財布とをにらめっこした後、今にも泣き出しそうな顔をしながら支払いを終えた。
ギルドへの紹介料は、人数やランクや仕事内容で当然料金は変わってくる。モニカはA、他はBランクだが、ガドラントではどうやら新人扱いみたいだ。
冒険者的には常識なのだが、一般人には意外と知られてなかったりするようだ。あの獣人は特に世間知らずっぽいし。
それになんだよ『新人トクトクプラン』って。ああいう紛らわしい売り方良くないと思うな、オレは。
「はい、確かに受け取りました。こちら4番のお部屋になります。ごゆっくりお過ごし下さい」
支払いを終えた途端に無表情から一転、満面の笑みを浮かべながら受付嬢は男に部屋のカギを手渡した。
その部屋で依頼の交渉をしろということか。
「お待たせしました冒険者の皆さん。ボクは狼族のマサルといいます。今日はよろしくお願いします」
「お、おぅ。オレは冒険者のレイシュだ。こちらこそよろしく」
報酬払えるのかなコイツ?
力無く挨拶する獣人の姿に、オレは一抹の不安を覚えたのだった。




