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虹翼の天輝鳥  作者: 緒野泰十
六章 召喚される二人の聖女
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十一話 聖女たちとの面会

 大母竜とその長女ミリヴァは来賓室にて聖女二人に軽食をふるまっていた。本来ならばもうすでに彼女が来てもいいはずだというのに、突如として用事ができたから遅れるという連絡を三十分前に受けてはいたのだが、それでもいささか時間がたちすぎている。

「・・・・・いつまで私たちはまたされなければいけないのですかな? 女王様?」

「申し訳ありません聖女様。・・・・・わたくしの娘が少々私用にて遅れております。ご不便をおかけしてしまい申し訳ありません」

 コトリの小言に大母竜は素直に謝罪の言葉を送る。彼女はそれに納得はしていないが、受け入れてはくれた様子であり、それ以上のことは言ってこなかった。だが、少し不機嫌なのは見て取れてしまう。ミリヴァは心の中で早く来いと唱えながら、時間が過ぎるのを待つだけ。その間に彼女の妹であるもう一人の聖女。アヤカの様子を伺った。彼女はいまだにこの状況が理解できずにずっとコトリにしがみついている。小鳥はそれを若干うざがってはいるようであるが、それでもそれを言葉にすることはなかった。

「・・・・・冷静なのですね。・・・・コトリ様は」

 不思議と口から考えていたことがそのまま出てしまった。そしてそれが失言だったことに気づくとすぐさま頭を下げる。

「申し訳ございません。つい、口が滑ってしまい!」

 すぐさま謝罪の言葉を口にするミリヴァ。それに対してコトリはあまり気にしていなさそうなようすであった。

「・・・・・別にいいですよ。・・・・気にしていませんし。・・・・そこまで失礼な失言でもないですから」

 まるで興味がないと言いたげにも見える態度。だが彼女はそうではないそっと背もたれから体を起こして。前かがみになる。

「むしろこの現象は興味深く思っていますよ。・・・・いい経験をさせてもらっているとね」

 その表情はどこか乾いている様子だが、明らかに笑みを浮かべてはいた。それがどのような感情なのかミリヴァには判断ができないでいる。

「・・・・興味深い。・・・・ですか・・・」

「ええ。本来できることでもないでしょう。異世界転移なんて。・・・・・・私の世界の陳腐な小説なんかではそれこそ一度死ななければこのように転移なんてできないということになっていますが」

 彼女たち自身は別に命を失ってこの世界に来たわけではなく、突然呼び出されるように来た。つまり誘拐のような形でこの世界に召喚されたのだ。

「やや強引だとは思いますが。・・・・・ですがまあ、面白い経験だと思って。私は受け入れていますよ」

 私はねと付け加えながら彼女は横目で妹を見た。コトリの視線につられてミリヴァはアヤカに目を向けると彼女は体をびくっと震わせてコトリに隠れようとした。

「ミリヴァ。・・・・その辺で」

 大母竜からの注意の言葉で彼女は謝罪の言葉を送りながらアヤカから目をそらした。

「・・・・来たようですね」

「遅くなってすいません。母様。姉さま」

 少し焦った様子のヴィリスが部屋に入ってくる津まずは二人に謝罪。そして彼女は聖女二人に顔が見えるところまで来ると改めて二人にも頭を下げた。

「申し訳ございません。聖女お二人を待たせる結果になってしまったこと。心より謝罪至ります」

「・・・・・別にいいですよ。・・・・・用事があったのでしょ?」

 少し嫌味が含まれている言葉を受けてヴィリスは曖昧に笑った。その後彼女は失礼しますと言いながら大母竜のそばまで近づいて屈んだ。

「・・・・母様。少しよろしいですか?」

「・・・ええ。いいですよ。・・・・彼がこない件についてですね」

 彼女が言いたいことを見抜いていたことに少し驚きながらも「はい」とうなづき、大母竜の耳元に口を近づけた。

「実は。・・・・・・」

「・・・・なるほど。・・・・彼は聖女お二人とは会えないということですか」

「・・・・はい。ですが。陰ながら聖女様方を守護をするということは約束してくれました」

「・・・・そう。それならよかったです」

 どこか思うところはあるようだが、それでも大母竜は納得してくれた。納得していないのはミリヴァのほうである。彼女は明らかにそれを聞いても不服そうな表情を浮かべていた。

「・・・・いいのですか? そのようなわがままを受け入れてしまっても」

「不服に思うのは仕方がありませんが、彼も別にわがままを言っているわけではありません。むしろこちらから聖女方の守護を要求しようとしていました。それを承ってくれるだけでも御の字というものです」

 そこまで言われてしまうとミリヴァの方も反論がしづらい。微妙そうな表情にならざるを得ないでいた。

「私たちを守ってくださる方の話をしているとお見受けしますが。・・・・・その方はこの場所には来てくださらないということですか?」

「・・・・いいえ、そういうわけではありません。私たちの方でも護衛のものを用意します。それもとっておきの精鋭を。・・・・ですが不測の事態というものに対処してくださる方はここにはこれないようです」

 コトリの言葉は疑っているといっているようなものである。つまりは信用をしていない。だから普通にそんなことも言いえてしまう。もちろんそのことは彼女らは理解している。だからこそその苦言も受け入れる。本来失礼を働いているのはこちら側であるのだから。

「・・・・・そうなんだね。・・・・・まあ、この世界はわたしたちからしたら危険でいっぱいな訳だから、そこまでしてくれるのはありがたいことだけどね」

 それでも一応感謝の念はあるようではある。だが完全に信用はしていないし、心を開いてなどいなかった。それが態度で分かってしまう。

「・・・・・わたしたちって。・・・・本当に大丈夫なんですか?」

 今まで口を開かなかったアヤカが怯えたように口を開く。その言葉に大母竜が少し曖昧に返答した。

「わたくしたちは聖女様方を守るために努力をいたします」

「ははっ断言しないんだね。・・・・責任を取りたくはないんですね」

 彼女の発言の上げ足をとるようなことをコトリは口にする。だがそれにも大母竜は返答した。

「確かにそうかもしれません。ですが、あなた様が言う通りこの世界には危険が蔓延っております。いくらわたくしたちが気を張っていたとしても、危険なことにあう可能性が減少することはありません」

「・・・正直なんですね」

「確約できないことを口にして。実行できなかったとき。わたくしたちは貴女方の信用を失ってしまいます。・・・・正直其れは避けたいところなのです」

 ぶっちゃけた話をこぼす大母竜にコトリは少しだけ興味が出てきた様子である。

「わ、私たちの安全が保障されないのですか?」

「確証がないだけでございます。・・・・わたくしたち大竜種の精鋭の護衛はつけるのですが。・・・・それでも危険なことにあう可能性が減るわけではないのです」

「むしろ目をつけられて増える可能性だってあり得るわけだ」

「・・・・おっしゃる通り。その可能性も否定はしません」

 コトリの言葉を大母竜は否定しなかった。それが余計にアヤカの中の恐怖心をあおるようなことになってしまった。それはもちろんコトリも気づいている。

「・・・・私たちが安全に過ごせるように。努力はしてくれるんだろ?」

「それは可能な限り。努力するように努めます」

「・・・・・それならそれで頼むよ」

 彼女は少し困ったようにそういうと大母竜を含めて竜たちは頷いてくれるのであった。

「・・・・ところで。・・・・・あなた」

 突然コトリはヴィリスの方に目を向けて問いかけたるのであった。

「・・・・わたしですか?」

「・・・・・・そうです。・・・・・あなた、前にどこかでお会いになったこと。ありましたっけ」


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