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第7話 「SNSを1日1時間」に温度差。

 AI・グレイグレイは言った。“リベンジ”だと。

 再挑戦という意味を持つその言葉に「もう失敗できない」という自戒を込めたのではないだろうか。つまり本気なのだ。


 さっきの会話を全国に流したとも話してたな。どの程度の内容がどれだけの人に伝わっているのか。まずそれを知りたい。


 オレは数秒のうちにあれこれ思いを巡らしているとスマホが振動しているのに気づく。

 

 着信名を確認してすぐに出た。


「岩戸か。生存確認でもなかろうに今ごろ電話してきたってことは見たんだよな。オレも周りがどれだけ見たのか気になっていたんだ。どんな風に映ったのか教えてくれ」


「ああやっぱりそうか。グレイとかいう宇宙人がテクニカルルーダのプロデューサーやミロクちゃんの名前を出すから耳をダンボにして聞いてたんだ。そしたら君の名前が出てきたからびっくりしたよ」


 岩戸の口ぶりから察するにまだ余裕がある。

 ドッキリかなにかを仕掛けられたとのだろうと見ていたところ「いつまでたってもパネルを持ってネタばらしするタレントが出てこない」不審に思ってオレに電話した煮違いない。

 となると、このまま話を続けてもとっちらかって収拾がつかなくなるだろう。

 こちらからポイントを絞って聞き出したほうがよさそうだ。


「岩戸はどこで見たんだ。テレビかネットか」


「久しぶりにテクニカルルーダのYouTubeチャンネルでミュージックビデオを見ていたら、突然映像が乱れてグレイが現われた。何が起きたのか不安になってテレビをつけたらやはりグレイが映っていた。これは大がかりなドッキリだなと思って信じなかった。でもスマホを確認したらSNSで動画をアップしている人がけっこういたから、確かめようと思って君に電話したんだ」


「で。どんな風に映っていた。『テルダプロ』の事務所も映ったのか。オレやミロクちゃんたちの姿も見えたか。教えてくれ」


「いや、映ったのはグレイっていう宇宙人だけだったよ。でも君たちとの会話は聞こえていた。サタデーナイトフェスでミロクちゃんやイブキちゃんがエアガンを撃ったのはマネージャーが仕組んだこととか。それもこれもグレイが脳をコントロールしていたこととか。もうSF映画を見ているようだったよ」


 グレイは宇宙人ではなく自ら「AI」って言ってたけどな。まあそんな細かいことはいい。岩戸にとっては突然の出来事だ。正確に覚えていなくても無理はない。


「岩戸、よく聞いてくれ。ここだけハッキリ知りたいんだ」


 オレは彼に集中してもらうため念を押した。


「グレイが、48時間後からSNSの使用を1日1時間までに制限するよう警告してきた。もし従わなければ『次は血が流れる』とおまけつきでね。それについてはどう思う」


 グレイは脅迫ではなく警鐘だと言った。しかし「血が流れるぞ」は脅しだろう。オレが「警告」と「おまけ」という言葉で表現したのは岩戸を怯えさせないためせめてもの配慮だ。


 岩戸俊介は答えた。


「ああ。グレイが『この国で暮らす人間たちに告ぐ』って脅してきのは覚えてる。でも『SNSを1日1時間』って聞いて拍子抜けしたよ。ボクは一時的にやってみるかもしれないけど、皆がやるとは思えないな」


 拍子抜けしたのはこっちの方だ。やはり関係者と部外者では緊迫感がまるで違うらしい。


「そうか。正直に答えてくれてありがとう。でもな、いいか岩戸。グレイは本気だぞ。それだけはわかってくれ」


「わかったよ。またなんかあったら連絡する。鏡くん。死ぬなよ」


 岩戸はそう言って電話を切った。

 話の終わりになんてこと言いやがるんだ。背中がぞくっとしたじゃねえか。



「署に連絡したわ。テレビで見たそうよ。わたしはいったん戻るけど、シンジはここに残ってちょうだい」

 オレの電話が終わるのを待って早乙女さんが口早に話した。当面の対策を打ち合わせるためだ。


 ミロクとイブキとマネージャーの田村弥生は事務所で待機させるべきだろう。グレイと間接的に関わっているうえ被害者でもあるのだから何が起きるかわからない。

 48時間が過ぎて安全と判断できるまでは警護のため周辺をパトロールする必要がある。ミロクとイブキの親御さんには自宅に戻り不要な外出を避けるようお願いした。



「早乙女さん。さっきの電話で友人に聞いたところ、グレイの警告を真剣に受け止めていない可能性があります。きっと署でも似たような空気だと思われます。意外と苦戦するかもしれませんよ」


「わかってるわ。まかしときなさい。わたしを誰だと思ってんの!“ミニパトのリカ”って言えばマル暴だって一目置くんだから。シンジこそ彼女たちを頼んだわよ。あっ、ミニパトのキーちょうだい」


 “ミニパトのリカ”はメンバーの親御さんを労いながら一緒に事務所をあとにした。啖呵を切るかと思えば細かい気遣いもできる。とにかく信頼できる先輩だ。


 オレも落ち着いてはいられない。二日間でできる限りのことをするのだ。まずはテクニカルルーダのメンバーに状況確認する必要がある。


「メンバーに連絡をとろうと思うのですが、スマホでメールしていいのかな。悩んじゃいますね」

 オレよりも早く動いたのは田村弥生だった。


「ぜひお願いします。メールはSNSではないし、48時間経つまでは問題ないでしょう。メンバーそれぞれの安否確認ができたら、自宅待機して不要な外出を控えるよう伝えて下さい」


「わかりました」


 そうなのだ。事態の深刻さを本当にわかっているのはオレたちだけと考えたほうがいい。もたもたしている暇はない。


「シンジ。わたしたちも何かしたいんだけど」


 ミロクが切り出した。


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