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第8話 イブキがまさかの能力発揮

 まるでアニメかハリウッド映画みたいにブロンズ像に空いた穴からボタボタと溶けた金属が流れ落ちてゆく。生身の人間が喰らったら穴が空くどころかバーベキューみたいにこんがり焼き上がってしまいそうだ。


 くそっ、次の一撃がきたらおしまいか!

 

 あのレーザービームを防ぐ手立てなどない。

 いやよけることならできるかも。

 

 そんな思考が一瞬のうちにの頭の中を駆け巡る。



「バカ。なにやってんの」


 早乙女さんがオレの後ろ襟を掴んで車両の影に引きずり込んだ。


「ここも危ないわ。あのビームみたいなので狙われちゃ時間の問題よ」


 追突し合った車両が重なっているのでとりあえず隠れることはできる。五人とも身を縮めるようにして気配を殺した。


「なんか人がたくさん来るわよ」

 勘の鋭いイブキが小声で話す。


「機動隊だわ。これで助かるかもしれない」

 早乙女さんの応答が聞こえると皆の顔に安堵の色が浮かぶ。


 見れば武装した機動隊員が10人以上いるだろう。

 手際よく配置につくと、それぞれサブマシンガンを構えている。


「前方のロボットに向けて撃て!」


 指示を飛ばすが発砲音は響くことなく、隊員達が焦りだした。

 銃の引き金は何度やっても「カチカチ」音を立てるばかり。

 各自が安全装置を点検するなどしてざわざわする始末だ。


「おやおや。大げさに軍隊が出動したかと思ったら。流行のサバゲーってやつかい」

 メカグレイはしばらく高みの見物を決め込んでいたが、しびれを切らしたように揶揄した。

「いくらやっても無駄だよ。わたしが開発した“波動プロポ”でコントロールしているからね」


 まさか。そんなことまで可能なのか。


「じゃあこれはどうだ!」


 オレはスミス&ウェッソンを構えてヤツの頭部を狙い引き金を絞った。だが何度やっても発砲しない。


「鏡シンジ。理解できなかったようだな。わたしは波動プロポによってすべてのメカニズムをコントロールできるのだよ。こんな風に」


 メカグレイがそう言うと、正面衝突してグシャグシャになった宅急便のトラックが動き出した。

 運転手は逃げ出してすでに乗っていない。なのにゆっくり加速してこちらに向かってくる。


「危ない!逃げろ!」


 オレが叫び皆が車両の影から飛び出した直後。ネコのマークのトラックが突っ込んできた。


 周りを見ると、他の車両も主を乗せず勝手に動いて機動隊に襲いかかっている。

 重火器が使えない機動隊員は為す術もない。必死に逃げ回る地獄図のような様相を呈した。


 我々はメカグレイの隙をついて、全力疾走でその場を離れた。

 200メートルほど先に公園案内所を見つけてそのなかに逃げ込む。

 すでにスタッフは避難したのかもぬけのからだ。


 ひとまずイスに腰掛けると会話する余裕が出た。


「ヤバいんじゃない。あいつ。これじゃ街が破壊されちゃうよ。ヒーロー召喚でもしないと助かりっこないわ」


 ミロクが絶望的な声を出すとイブキがさらりと答える。


「わたしできるよ。ヒーロー召喚」


「もう、イブキったら。つい願望を漏しただけなんだからさぁ。こんなときまで冗談に付き合わないでいいのよ」


「ホントだよ。うちのお婆ちゃんが霊媒師やっててさ。小さい頃にいつも隣で真似してたらできるようになっちゃった。憑依どころか召喚できるのがわかったら、おばあちゃんがびっくりしてさ。『お前の力は強すぎるから、人前で見せるな』って釘を刺されてたんだ」


 イブキが熱心に話すからミロクもつきあうことにしたようだ。


「じゃあエヴァンゲリオンとかどうかな。アイツだってさすがにビビるんじゃない」


「未来からは召喚できないの。ルパン三世とかだったらできるかも」


 仲良し同志のおしゃべりとはいえ的外れにもほどがある。オレもつい口を出したくなった。


「あのなぁ、そもそもアニメは無理だろう。それにメカニズムは通用しないんだぞ。敢えて挙げれば石川五ェ門の“斬鉄剣”は役立つかもな」


「ふ~ん、なるほどね」


 我ながら大人げないことを自慢げに話してしまったが、彼女たちは感心したようだ。


「わかったわ!じゃあ、時間がないからちょっと行ってくるねーーーー!」


 なにをわかったのか。イブキは勢いよく走り出すとまるでアニメみたいに宙を駆け上り姿を消した。


「今、幻覚を見ちゃった。いろいろなことが起きるからちょっと疲れてるみたい」


 早乙女さんがおでこに手を当ててうつむいた。

 “ミニパトのリカ”もさすがに動揺を隠せないようだ。


「わたしはイブキを信じる。きっとヒーローを連れて帰ってくるわよ」

 ミロクは腹をくくった。

 こうなっては誰もがそうするしかなかった。


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