魔法の練習
この日の授業が終わった後、俺とクリスはこの時だけは、直ぐに教室を飛び出そうとするほど気持ちが舞い上がっていた。
なんせ「使えないと思っていた魔法が仕えるかも」と言われ その事が知れただけでも嬉しかった。
そんな俺とクリスは、期待と希望で胸を膨らませつつ、俺もクリスは、授業が早く終わってほしくて仕方が無かった。
”キンコーン”
授業終了のチャイムが鳴ると同時に、俺とクリスは校舎裏を目指して進む。 そして校舎裏に辿り着くと、「俺達が魔法を教える!」と言って来た連中は、一足先に校舎裏にいた。
「二人共待ってたよ」
「じゃあ今から、秘密の特訓場所を教えてあげるよ」
「「分かった」」
そして後に、あいつ等の後ろをついていく俺達。
そして奴らに校舎裏の中でも、もっとも人目に付かない場所も俺達を、案内すると
「じゃあ、クリストファー君、ライト君お待たせしました。 今から練習始めるよ」
「「うん!」」
そう言われて俺とクリスは、期待に満ちた表情を浮かべ、元気に二つ返事を返した。
そんな俺達を見て、連中は、ニコニコと笑って……いや、実際はニヤニヤか?
今思えば、明らかに腹に一物抱えてそうな笑顔だったにも関わらず、俺とクリスは優しく声を掛けてくれた”良い人”と思い込んでいたし、この時は何より新しい友達が増えたと思い込んで、最高の気分だった。
「じゃあ二人共、ココに並んで立って!」
そう言って地面に描いた円の中に立つように指定されたので、完全に警戒心を解いていた俺とクリスは、言われるがままに円の中に入った。
「じゃあ今から魔法習得に重要な、精神の練習を始めるよ」
「今から僕達が二人に色々やっちゃうけど、『絶対』に『何があっても』丸の外から出たら駄目だからね」
「もし丸の中から出ちゃったら、直ぐに丸の中に戻らなきゃ駄目だよ~」
「うん」
「直ぐに戻れなかったら、罰ゲームだからね」
「分かったよ」
そう言われて俺とクリスは、「これからどんなことが起きるのか?」その事に対しての期待と不安が入り混じった複雑な気持ちを抱え、魔法の練習が始まるのを待つ。
「じゃあ、練習スタート」
連中の一人がそう言った後、俺とクリスに掌を向けた。
そして
「マジックシューートォォォ!」
「「えっ!!」」
突如俺達に向かって、連中の一人が魔法で作り出した手のひらサイズの魔力弾を打ち出し、俺とクリスに迫ってくるが、予想していなかった事に対して俺もクリスも驚きのあまり、何も反応できずその場に立ち尽くしていたら
”パン”
「うわっ!」
魔法弾はクリスに命中し、クリスは後ろに軽く吹き飛ばされた。
「じゃあ、次は私ね。 はい、ウィンドボール」
次は風の小さな塊が俺目掛けて飛んで来たので、俺は必死に風の塊を避けようと、体を大きく逸らして風の塊を躱そうとした。
「残念。 コレ追跡するの!」
風の塊を撃ってきた奴がそう言った瞬間、風の塊は俺に当たる様に軌道が変わる。
‘‘バシュ”
「っ、痛!」
風の塊が直撃して痛みを感じると同時に、俺もクリスと同じように軽く吹き飛ばされる。
「あっ! 二人共丸の外に出たな」
「じゃあ丸の中に戻るまで罰ゲームねー」
突然の罰ゲームを奴等に宣告された俺とクリスは、奴等に周囲を取り囲まれる。
そして奴等総勢六人は、一斉に俺とクリスに向かって、次々と魔法を仕掛けてきた。
「くぅ、あぁっ!」
「うぅ…くっそぉ!!」
「ほらー、早く円の中に戻らないと」
「罰ゲーム終わらないんだから、早く戻ってよ」
「私達だって魔法の練習したいんだから、早くぅー」
そう言いつつ、ヘラヘラと笑っているあいつ等の姿を見て、漸く俺達は”奴等の遊び道具として、この場に連れて来られた”という事に、やっと気が付いた。
あいつ等も、やり過ぎるのはマズいという事は、分かっているようで、放つ魔法は全て弱い攻撃魔法ばかりだが、いくら弱いとは言え立て続けに喰らうのは、痛みを継続して与えられる拷問と同じだった。
そしてあいつ等の攻撃は、俺とクリスが寝転がって立ち上がる事が出来なくなるまで続いた。
「ここいらで止めよう」
「え~、コレからもっと面白くなりそうなのに~?」
「成金似非男爵の子と、公爵様が最下級層から連れて来たゴミなんだから、もっとやっても大丈夫だよ」
「駄目よ! あんまりやり過ぎたら私達が悪者になっちゃう」
「それに先生にバレて、パパやママに知られたら怒られちゃうかもしれないよ」
「じゃあさ、バレないように傷だけは隠しとこうよ! そしたら僕達がやったって事は絶対分からないから」
そう言ったあいつ等の内の一人が、地面に倒れ込んでいる俺とクリスに近付くと、回復魔法をかけ始める。
回復魔法の効果で、外傷は跡形が残らない程綺麗に回復されたが、治したのはあくまで目に見える外傷だけだったのは、見た目は怪我がない状態に俺達に見えても、内部に残ったダメージは全く回復されていない。
だから俺とクリスは、体に響く激痛に苦しめられ、その場に倒れ込んだままの状態から、動く事さえ出来きやしない。
そんな俺達の様子に満足気の様子のあいつ等は、相変わらず悪意に満ちた笑顔を浮かべながら、俺とクリスにこう言った。
「ねぇ、最下級層から来たエーレンブルグ家のゴミ。 またこの前みたいに俺達を差し置いてテストで調子乗った結果出したら、もっと酷い目に遭うかもね~?」
「それと似非男爵家の成金もさ、このゴミと友達やってると同じような目にまた会うかもしれないから、さっさと友達止めた方がいいと思うよ!」
そう言い残した後、あいつらは俺達をこの場に残したまま、校舎裏から離れていった。
「う、うぅ…どうしてなの、どうして何もしてないのに、貴族は皆虐めるてくるの?
僕が…僕が要らない子だから?」
クリスは「どうして自分がこんな目遭わなくてはいけないのか?」 世の不条理さを涙ながらに訴えていた。
「うぅぅ、くっくぞぉー」
俺も俺で一方的に何も出来ずにやられた悔しさから、大粒の涙を流しながらわんわんと泣きじゃくり、俺もクリスも、止めどなく流れる涙で地面を濡らす事しかこの時は出来なかった。
最後まで読んで頂きありがとうございました。




