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いざ、体育祭!

「宣誓!

 私達王立学園の生徒一同は、正々堂々と仲間と共に、最後まで諦めないで戦うことを誓います!」


 六年生代表の選手宣誓が終わると、開会式は終わり、いよいよ待ちに待った体育祭が始まる。

 天気はあいにくの曇りだけど、雨は夕方まで降らないらしい。

 だから、日程に変更はないし、プログラム通り最後までやり切る予定だ。

 天気次第では、途中中断もあり得ると聞いていたので、そんな嬉しい連絡が入ると、この日を待ち望んでいた生徒達の士気は、さらに高まった。


 そして開会式が終わった後、最初の競技が始まるまで、一旦生徒は、自分達のクラスのテントに戻り、競技開始まで待機となるのだが、その際に俺達のクラスは気合を入れるために円陣を組んでいた。


「この日まで色々あったけど、私達Eクラスが目指すのは?」

「「「「「もちろん優勝!」」」」」

「じゃあ体育祭、絶対勝つわよ!!」

「「「「「オオォォォォォー!!!!!」」」」」


 競技開始前に、今や名実共にEクラスのリーダーであるフローレスさんからの声掛けに、皆は気合の入った声で応えた。


(皆、相当気合入ってるな)


 一昨日までクラスの空気は最悪だった。

 けど、今は体育祭で優勝するために再び一つになっている。


(……本当によかった。 クラスの仲が元に戻って)


 自分のせいで生じた亀裂は、上手く修復できた。

 さらに、クラスの結束はより深まっているようにさえ思えた。


 こんなの光景見せられたら、無茶をしてまで頑張った甲斐があったと、本気で思えた。


「第一種目は、50メートルです。 選手の皆さんはグラウンドに集まってください」


 そして、いよいよ体育祭での初戦が始まる。


「じゃあ、選手の皆。 頼んだわよ!」

「「「「「まかせて!」」」」」

「「「「「「「「がんばってー!」」」」」」」」


 50m走に参加するクラスの代表が、グラウンドに向かうのを皆と共に応援しつつ見送る。


(……まさか無茶した反動が、こんなにも酷いとはね)


 実は、一昨日の1000m走が終わった後、俺は自分の足で立ち上がることさえできなかった。

 原因は、もちろんラストスパートでやった無茶のせい。

 だから、その日の内にお医者さんにも診てもらったが、なんでも筋肉から魔力回路まで、相当ズタボロになっていたらしい。


(休んだら、だいぶ良くはなったけど……)


 ちなみに最初お医者さんに見てもらった時は、ドクターストップがかかったので、体育祭の参加は絶望的だと思った。

 だけど、意外な人からの助けがあったことで、


「……信じられない回復力だ! これなら、一種目だけなら参加しても大丈夫だろう。

 ただし『無茶はしないこと!』

 次同じことやったら、今度は本当に取り返しのつかないことになるかもしれないからね?」


 と、朝お医者さんにしっかり釘を刺されつつも許可をもらえた。

 だからクラスで話し合った結果、俺は最後の競技、クラス対抗リレーだけ参加することになった。

 だが、今現状どれだけの実力を発揮できるのか?

 それは走ってみないと分からない。


(それでも、ここまで頑張ってきたんだ。 持てる力は惜しみなく出すさ!

 ……まぁ、ゼール先生に説教されない程度にだけど)


 ちなみに、俺の足をここまで回復させてくれたのは、ゼール先生だった。

 一昨日学校が終わった後『やるな』と強く言われていたことをやってしまっているので、そのことを正直に報告しにいくついでに、こっぴどく叱られる覚悟だった。

 だけど、


「……何で無茶した?」


 意外にも説教されず、事情聴取から始まったので、正直に事の経緯を話した。


「はぁ……ったく、そんな馬鹿げた理由で無茶してんじゃねーよ!

 この大馬鹿野郎が!!

 まぁ、今すぐ完治は流石に無理だが、治癒魔法をかければ普通よりは早く回復する。

 だから、さっさとこっち来て足を俺に診せやがれ!」


 結局怒られたけど、いつもみたいにトコトン詰められるようなお説教ではなかったので、相当マシな方だった。

 そして治癒魔法を先生に施して貰ってる最中、


「あれ? そういえばクリスはどこに?」

「ああ……アイツは用事があるから先に帰るってよ」

「……そうなんだ」


 ゼール先生の元には、クリスの肩を借りながら辿り着いたので、クリスにお礼を言いたかったんだけど、先に帰ったんなら仕方がないと思いつつ、


(今までゼール先生のとこに来て、先に帰るなんて一度もなかったんだけどなぁ……)


 そのことに少しショックを受けたし、一度できたクリスとの溝がなかなか埋まらないのも、もどかしく思えた。


―――


 そのことを思い出しつつ、俺から離れた場所でクラスの応援するクリスを、横目で見た。


(はぁ……やっぱり今日もこの調子か)


 前よりはマシになったとはいえ、未だに以前のような距離感でクリスと話せてはいない。

 この状況が続いているのは、一番の友達として不満でしかない。

 だけど、事の発端は俺なので、下手なことは言えないのだ。


(それに、クリスだって何とかしたいとは思ってそうだしなぁ……)


 そう感じてる理由はちゃんとある。

 クリスだってあのトラブルが起きて以来、俺のことをチラチラ見ているからだ。

 つまり、クリスだって今の状態が良くないとは思っているんだと思う。

 何と言うか……何かを伝えたいけど、どう伝えていいのか分からない。

 そんな雰囲気を醸し出している気がする。


 それに、今まで関係を修復しようと思って、俺から何度も謝ってるけど何も変わらない。

 だから、クリスがこの現状をどう思っているのか、自分から話してくれるのを待つことにした。

 それに、フレイさんにこの現状を相談した時に


「……そうね、私から詳しく話せないんだけど、クリス様も色々思うことがあるみたいなの。

 だから、もう少しクリス様のことを信じて、クリス様が思っていることを話すのを、待っていてくれないかしら?」


 と、お願いされたからだ。


(でも、正直に言えば体育祭は一緒に楽しみたかったんだけどなぁ……)


 そんな不満を心の中で愚痴りつつ、俺も精一杯クラスの皆を応援し続けた。


・・・

・・


「今の所は5位……最下位か」


 プログラムの半分が終わった時点で中間発表が行われたが、Eクラスは最下位だった。


「くっそ……俺が出てたら、もう少しいい結果になったのに」


 思わずボソリと呟いてしまったのは、俺の代わりに競技に参加してくれたクラスメイトが、あまりいい結果を出せなかったからだった。

 決してそのことを責めてるわけじゃない。

 だけど……


(やっぱり嘘ついてでも、俺が出ときゃよかった……)


 そう考えてしまうのだ。


 そしてEクラスの点数が伸びない原因はもう一つあった。

 それは、男子と女子の連携がまだ完全に復活しておらず、団体競技でもあまりいい結果を出せていないのだ。


 前みたいにEクラスは、男女で言い争いはしていない。

 それにお互いを助けようとして、声も掛け合ったりしている。

 だけど、お互いどこか遠慮しがちで、上手く連携が取れていない。

 つまり、男子と女子の間で、まだ完全に蟠りが解けてないんだろう。


(くっそ……やっぱり一回できた溝ってのは、そう簡単に埋まらないか)


 俺もそのことで、今現在悩んでいるから、その気持ちは良く分かる。


(でも、最初よりは息が合うようになってはきているし、まだお昼からの競技で逆転は十分狙える!)


 中間発表が終わった後は、昼休憩となる。

 だから俺は、皆が休憩に行く前にこのことを伝え、まだ優勝の望みがあることを知らせようとした時、


 ポツッポツ……


「?」


 テントに、小さな何かが当たった音が響く。


 ザァァァー


「え……嘘だろ?」


 今度はハッキリと、テントに無数雨音が鳴り響いた。


 こうして予報外れの雨によって、体育祭は急遽、一時中断となってしまった。

最後まで読んで頂き、ありがとうございます。

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