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変り者同士の出会い

 コレは今から10年前の話だ。


 シエンティー王国では、王国に属する貴族の子息と令嬢は、必ず6歳となる年から義務教育を受ける必要があり、学びの場となる王立学園に通わなくてはいけない。

 更に子息と令嬢が学園に入学する前に、その年の新入生たちを一同に集わせるパーティがあり、コレも必ず出席し、子供なりに貴族社会を学ぶものなのだが、俺事ライト・トリファーは、このパーティで見事にボッチとなり、貴族社会のスタートで盛大にコケていたなぁ…


 俺は物心付いた頃から、父さんに商売に関する話ばかり聞かされて育った事もあって、多くの同年代の貴族の子供達と話のソリが合わない子供だった。

 例えばこの年代の子達なら、物を見れば”カッコいい”とか”可愛い”と言った価値観や、”欲しい”、”

羨ましい”と言った感覚で物事を判断するのが普通だ。

 だけどこの歳で既に俺の価値観は同年代の子達と違い過ぎた。 例えば珍しい物を見れば”何処の国の物で、幾らぐらいの価値があるのか?”なんて考えるし、そんな話を平然と同年代の子に話す。

 おまけに自分より爵位が上の貴族子達から持ち物自慢の話をされても


「それって本当に自慢するような価値あるの?」


 なんて冷めた反応で平然と返し、爵位が上の子息や令嬢を唖然とさせるような、傍から見ると問題児だった。

 そんな問題児はパーティ開始から一時間もすれば、”話してもつまらないし、変な事をいう変わり者の子息”という腫物として扱われ始め、俺も俺で「誰とも話が合わないから、別に一人でいいや」という捻くれた考えで行動していたが、流石に自分がボッチだという事を6歳児なりに感じとると、この状況に耐えれなくなってきた俺は、一人こっそりとパーティー会場を抜け出す事にした。

 こうしてこっそりと誰の目にも付かないように一人で会場を抜け出した俺は、会場の庭園で冒険でもする事にしたのだが、庭園散策開始早々一人の子が庭園の木の下で蹲っているのを目にする。


(あの女の子何してるんだろ?)


 他の子達がパーティ会場で、貴族らしい話や家系の自慢話で盛り上がり、貴族の子供なりに貴族の繋がりを作っている中で、俺みたいにそんな事を気にしないで外に出て来る奴で、しかも女の子。


(これはあの子は相当な変り者か厄介者だな)


 そう6歳児なりに直感的に感じたのだが、同時にちょっとだけどんな奴なのか気になったので、俺は思い切ってその子に声を掛ける事にした。


「ねぇ、こんな所で何してるの?」

「……中に居てもつまんないから、外に居るだけだよ」

「じゃあ僕と一緒だ! 君も、もしかして他の子に『変な子!』って言われたから出て来た?」

「……うんうん」

「じゃあ、なんで外にいるの?」

「…他の子達が話してる事、よくわかんないんから。

 これが凄いとか、あの子のコレが凄いとか言われても、何かよくわからないから」

「! やっぱり僕と一緒だ!

 あいつ等が自慢するような物で、『凄いー』とか『いいなー』ってなるのか良く分かんないんだよ!」

「ええっと…そうなの?」

「そうなんだよ!

 だってさ、あいつら持ってる物買った時より高く売れないんだよ? そんな物欲しい??」

「…ごめん、やっぱり君達貴族の言う事って、良く分かんないや…」

「僕の言ってる事って分かんない?」

「…うん、ぜんぜん」


 実はこの時初めて自分の言ってる事が、同年代の子にハッキリと「分からない」と言われたのも、初めての経験であり、相当ショックを受けた…まぁ、この苦い経験のお陰で相手に何かを伝える時は、相手の事を考えて話すようになったんだけどさ。


「じゃあえっとね……そうだ! この木の棒、君はほしい?」


 この時の俺は、相当ショックを受けはしたが、そんな事より初めて自分の話を真剣に聞いてくれるし、何より価値観が合いそうな同い年の子と出会えた事で、何としてでもこの子に自分の価値観に共感を示して欲しかった。

 だから俺は、とにかく必死になって相手から理解を得る為に話しを続けていたけど、今思い返すといきなりグイグイと話しかけてきた俺に、この子は相当引いていたけど、それでもこの子はグイグイ迫る俺から逃げなる事なく、話を聞き続けてくれた事は、本当に心から今でも感謝している。


「…うんうん、欲しくない」

「只の木の棒なんか欲しくないよね! それじゃあさ、君は花とか好き?」

「…好きだよ」

「じゃあ、ここでちょっとだけ待ってて!」


 そう言って俺は一端その場を離れると、ある物を探しに庭園を駆け回り、探し物を見つけたらソレを木の枝に出来るだけ沢山括り付け、再びその子の元に戻り


「ねぇ、これだったら欲しい?」

「! 欲しい!!」


 俺は拾った木の枝に、色とりどりの花を括りつけて作った花束を差し出すと、その子は目をキラキラと輝かせて俺の作った花束を欲しがった。


「じゃあやる」

「いいの!?」

「いいよ、タダだし」

「? タダなら良いんだ??」

「いいんだけど、ホントはダメだ」

「えー……どっちなの~?」

「うーんと、君には特別にタダであげるけど、本当ならコレは木の枝から俺が作った物だから、欲しいと思ったら、お金を払わないとホントはあげちゃいけないんだ」

「そうなの?」

「だって君は木の枝は欲しくないっていったけど、花束にしたら欲しいんだろ?」

「うん」

「欲しくない物を欲しい物にして売るのが商売。 それで君が欲しいと思ったら、お金を払って買う。 コレが『商売の基本だ』って父さんが教えてくれた」

「わぁー凄いね、君は物知りなんだね!」


 この時俺は舞い上がった。なんせ生まれて初めて同世代の子に【凄い】なんて言ってもらえたからだ。

 だから俺そう言ってくれたこの子に、得意げになって商人や商会の事を説明していた。


・・・

・・

「それとね、物を選ぶときは『どうやったら人に売れるか考えろ』って父さんが教えてくれたんだ!

 だから皆にも『それ売れるかどうか考えてから買った方が良いよ』って教えてあげたら、皆から『変な奴だ』って言われた。

 それから皆僕を変なヤツ扱いして、話に入れてくれなくなってつまんなくなったから、僕は外に出て来たんだ…」

「…そうなんだ、 でも君が話す事って、全部凄い事と思ったよ」

「そ、そう!? 君だって凄いよ」

「うんうん……わ…僕は、君みたいに凄い子じゃない」

「…なんでそんな事言うんだよ?」

「……要らない子なんだって」

「えっ?」

「おっ、お父さんと、新しいお母さんがそう言ってた。 『お前は捨てたくても捨てれない要らない子だ』って」

「酷い、なんて酷い事言う父さんと母さんだ! 僕だったらそんな事言う父さんと母さんとなんか、絶対口きいてやんないよ」


 この時この子が言っている事の意味はよく理解出来ていなくても、相当酷い事をこの子の親が言っている事だけ理解出来たし、今思うと誰かに対して強い怒りを感じたのも、コレが初めてだった。

 そしてこの子をよく見れば、体は他の子より窶れていて、所何処に傷が多い事に気が付いたか。

 だからこの時の俺は「今絶対にこの子そばを離れちゃいけない」という危機感を感じると同時に、使命感が芽生えたからこそ、この子の話を食い入るように聞いていた。


「…それにね、パーティに来てた子達もコソコソ言ってたよ。 『ここは最下層から来た子が来る場所じゃない』って。

 だから僕は……要らない子で、君みたいに凄い子じゃ…ないんだ…よ…うぅぅぅ」


 そう言った後、その子は再び泣き出したので、俺はとにかく慌てながらも必死にその子を慰めようと思った。


「君は要らない子じゃないし、凄い子だよ」

「……嘘だ」

「嘘じゃない!」

「…じゃあ言ってみてよ…ドコが凄いのか」

「君は皆が『変な奴』って言う僕の事を、凄いって言えるから凄いに決まっている!」


 今考えると、我ながら何の根拠もなくてとんでもない屁理屈を言ったと思う。

 でもこの時は6歳ながら必死に目の前で泣いている子を、何とか元気にしたい一心だけで動いていたから、こんな訳の分からい事も真剣かつ大真面目に言えたんだろう。


「…ハハ、なにそれ。 意味わからない」


 そんな俺の想いは通じたのか、この子は俺の言った事が可笑しかったみたいで、泣きながら笑ってくれた。


「とにかく君は凄いんだよ。 僕の言う事『つまんない』って言わないから。

 それに父さんだって言ってた。 凄い奴って他の人からすると中々分からないって。

 だから君は凄いんだよ!」

「…そうなの?」

「そうなの!」

「…どうして君は、そんな事言ってくれるの?」

「だって僕達友達だよ」

「え……そうなの?」

「そうだよ! 仲良く話せるのは友達だ!

 って母さんが言ってから、僕と君はもう友達」

「…うん…ありがとう」

「なっ、泣くなよ」

「…ごめんね、こっちのおうちに来てから、友達出来たの初めてだから…」


 泣きながらこの子はそう言ってくれたが、この時この子が流した涙が”悲し涙”じゃなくて”嬉し涙”だったのだが、この時の俺はソレ分かっていなかったので、俺は必死に次にこの子に掛ける言葉を考えていると、友達として大事な事を聞き忘れていた事に気が付く。


「ね、ねぇ、そういえば君の名前何て言うの?

 僕の名前はライト。 ライト・トリファー!」

「…僕の名前はクリストファー。 クリストファー・エーレンブルグだよ」

「えっ……えぇ!?」


 こうして俺事ライト・トリファーと、クリス事クリストファー・エーレンブルグは初めて会ったその日に友人となった。

 だけどこの時、俺はクリスの名前を聞いて受けた衝撃は、未だに忘れられない。

 なんせ名前を聞くまでずっと”可愛い女の子”だと思って接していた相手が、実は男だったなんて…6歳児には衝撃が強すぎたから。

 そしてこの時俺は、父さんや母さんが『人を見た目で判断したら絶対駄目だ』と今でも口を酸っぱくして言ってくるその言葉の本質を、6歳児にして悟ってしまった事で、元々歳相応の考えから外れた思考が、更に加速する事になる…

最後まで読んで頂きありがとうございます。

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