テストの次は
一時はどうなることかと思ったクリスの勉強だが、教えてみるとクリスは勉強が出来ないわけじゃないことが分かったので、遅れていた分はすぐに取り戻せた。
それどころか、一緒に家で勉強していると
「あ! ライトそこ間違ってるよ」
「え? ……ホントだ」
と俺の間違いに気付くようになるぐらい、勉強は出来るようになっていた。
正直、こうも簡単に勉強できるようになると、教えた側としてはちょっと複雑な心境になったりもする。
でも、これでお互いテストは、ゼール先生から雷を落とされてしまうような点数を取る心配はなくなった。
―――
そして学年テストが終わり、試験の結果が発表された。
結果は、俺は120名中15位。 クリスは37位だった。
それにしても、俺と同等以上の学力があるクリスが、思った以上に順位が伸びなかったのが不思議だったので
「もしかしてテストの時、体調悪かった?」
「うんうん、全然元気だったよ」
「じゃあなんで順位伸びなかったの?
クリスならもっと上の順位に入れたと思うんだけど?」
「えっとね。 実は真ん中の60位を狙ったんだ」
「え? なんで?」
テストで上位を目指す人は沢山いるけど、真ん中を目指す人なんてそうそういないので、不思議に思った。
「それぐらいの順位なら、あんまり目立たないと思って狙ったんだけどね。
思ったより上の順位になっちゃったから、なかなか上手くいかないね」
クリスが、あまり目立たないポジションに落ち着こうとしているのは分かる。
だけど、だからと言ってテストで本気で真ん中を狙うとは思ってもいなかった。
「いや、真ん中狙うのって、逆に学年一位取るのより難しいから!」
「えぇ! そうなの?」
本気でクリスは驚いていた。
そもそも学年全員が参加するテストで、何点取れば真ん中になるなんて誰も分からない。
でも一位を取るなら、とにかく自分の点数を上げればいい。
だから、一位を狙う方がずっと簡単だ。
と、いうことをクリスに説明すると
「そっか。 だから上手くいかなかったんだね」
「……どうゆうこと?」
「前にライトが『事前に情報さえ揃えることが出来たら、先の予測をするのは難しくない』って教えてくれたよね?」
「あ、うん。 教えた気がする」
ハッキリ覚えてないことを言われたので、曖昧な返事を返しつつ「それと何が関係あるんだ?」と不思議に思っていたら、
「だから、クラスメイトがテストで何点取れそうか。
その情報さえ集めれば、それを元に真ん中の順位を狙える点数を導き出せると思ったんだ。
だけど、他のクラスの情報も集めないとダメだったんだね」
そう言ってクリスは「クラスメイトがテストで何点取れそうか?」
その情報を集めたノートを俺に見せてくれたので、ノートをペラペラとめくってみると、
(うわ、ノートにびっしり何か書いてある!)
そこにはとんでもない量の情報が記載されていた。
そしてその内容を読んでみると、
(なっなんじゃこりゃ? よくこんな情報集めれたな。
正直こんなの見たら引くわ!)
そう思うぐらい、ノートにはびっしりクラスメイトの勉強に関する情報が書かれていた。
(凝り出したら徹底的に凝るタイプってちょっと怖い……)
正直、そんなクリスに色々ツッコミを入れたかったけど、もうどこからツッコんで良いのか分からなかったので
「……とりあえず、真ん中の順位でも、今の順位でも目立ち方はそんなに変わらないから!」
それだけはツッコんでやった。
―――
学年テストが無事に終わり、少しは騒がしさが収まるのかと言えば、そうでもなかった。
学年テストの次のイベントとして待ち受けていたのは、初等部一年生は初参加となる体育祭だった。
今までの学園のイベントは、全て個人が主役のイベントだったけど、体育祭は違う。
一人で頑張っても、クラス全員が一致団結しないと、優秀な成績は残せないし、何よりクラス全体が主役となる。
そして、この時期は特別に体育祭を中心とした授業が組まれ、体育の授業が増えるんだけど
「よっしゃ、頭使わなくていいぞ!」
「はぁ、体育とかダルいな~」
と言った感じで、体育の授業が増えて喜ぶ奴と、喜ばない奴の意見が一致しないし、この時は体育祭を真剣に盛り上げようと考えてる奴もいないので、このクラスE組は全然纏まりがなかった。
あと意外だったのは、クリスが体育祭に関してやる気がある様子を見せていたことだ。
コレは体育の授業が増えてから気が付いたんだけど、クリスの奴、なんと体育の授業ではとにかく着替えるのが早い。
そして着替え終わると、さっさと教室から出て行ってしまうのだ。
(いや、どんだけあいつ体育楽しみにしてるんだよ!
あれ?……その割には、授業はいつもテキトーにやってるよなぁ?)
学年テストの順位の狙い方もだけど、ここ最近ちょっとクリスの不思議な行動が目立つような気がする。
そんな中、他所のクラスと合同練習が始まった。
合同練習は騎馬戦や玉入れ、リレーと言った団体競技の練習が中心となるんだが、Eクラスの連中は、団体競技だろうと好き勝手に動く奴等ばかりだった。
よって、そんな奴等が団体競技に挑んだって、上手く競技を進められる訳もなく、初の合同練習で俺達Eクラスは、他のクラスにボロ負けしてしまったのだ。
そして合同練習が終わった後に、
「あれ? Eクラスって頭いい奴と運動できる奴多くなかったっけ?」
「でも団体戦がこんなのじゃ、私達の敵じゃないよね!」
「やる気ないクラスって邪魔なんだよな」
なんて、他のクラスの連中に好き放題言われ、何も言い返せない始末。
そんなことがあった日の帰りのホームルームは、一見いつもと変わらないように思えた。
そんな中、珍しくフローレスさんがホームルーム中に手を挙げ、
「先生、クラスの皆に言いたいことがあります!
前に出て話してもいいですか?」
そう言って先生から許可を得た後、フローレスさんは教団の前に立つ。
「皆は、他のクラスに大負けして……あんな堂々とバカにされて、悔しくないの?
私は、悔しかったよ!
だって私だけじゃなくて、クラスの皆まで馬鹿にされたんだから」
フローレスさんは真剣な顔で、クラスメイトに【負けて誰も悔しくないの?】と問いかけた!
だけどフローレスさんの問い掛けに対して、誰も何も言わず、黙っていた。
それでも思う所はあるのか、チラチラ周りの様子を伺う子や、何か言いたそうにしてるけど言い出せない様子。
かくいう俺も、そんな連中と同じで、フローレスさんの言うことに何か言いたいけど、周りを気にして言えだせずにいたが、フローレスさんと目が合った際に、彼女の目が涙ぐんでいるのに気が付く。
(……そうだよ、自分も友達も馬鹿にされたのに、なんで口に出さなかったんだよ)
そう思った瞬間、変に強がって正直な気持ちを隠していた自分が恥ずかしくなった。
「…俺も悔しかった! 皆が馬鹿にされて」
だから俺は正直に「自分も同じ」だと声にした。
すると
「私も……あんなこと言われたら、ムカついたよ!」
「僕も!」
「私もよ!」
クラスメイトは、次々と「本当は悔しかった」という思いを吐き出していった。
「いや、でもさぁ……あいつ等強くない?」
「勝てる気……しないよね」
「どうやったら勝てるかも分かんないし……」
だけど、賛成だけじゃなく否定的な意見を出すクラスメイトも出て来て、賛成派と否定派の間には気まずい空気が流れ出す。
このままだとクラスが分裂してしまいそうな空気の中、
「どうやったら勝てるか分かんない?
そんなの私だって一人で考えたら分かんないわ」
その空気を切り裂いたのは、やはりフローレスさんだった。
「だからね、皆で考えて、協力するのよ!
そして……勝つの!」
「……そうだよね!」
「クラスは一人じゃないんだから」
「そうだそうだ! Eクラスは今まで他のクラスより強かったんだぞ」
「なんか……勝てそうな気がしてきた」
「勝てそうな気がするんじゃない、私達が勝つのよ!
体育祭で!!」
「「「「「「おおぉぉぉ!!!」」」」」」
こうしてフローレスさんに発破をかけられたことで、Eクラスは一丸となって体育祭に挑むことになった。
更に、この状況を見ていた先生から
「よし、そこまでやる気を出したんなら、ちょっと先生も君達に協力しちゃおうかな。
もし体育祭でこのクラスが優勝出来たら、先生が特別にご褒美をあげよう!」
と言われたので、クラスのやる気により大きな炎が灯った。
こうしてEクラスは、次の日から体育祭で勝つために一丸となって体育祭の練習に励むことになるのだが、そんな中、俺はクリスのあることが気になり始めていた。
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