二度目の対決テスト
「おはよう」
夏休みが明けて新学期が始まり、クラスメイトと挨拶を交わす。
夏休み中も偶々会った友達もいれば、クリスのように毎日のように会っていた友達、夏休み中一度も顔を合わせなかった友達だっていた。
だから二学期初日の「おはよう」って、人によって意味合いが違うし、それがなんか面白いし新鮮だ。
こうして新学期は始まった。
「皆さんおはようございます。 夏休みは楽しめたでしょうか?
今日から二学期が始まりますが、夏休み前に予告していたように、来週『5分間対人テスト』を実施します。
前回より良い結果が出せるように、皆さん頑張ってください」
二学期最初のホームルームで、今年二回目となる対決テストの告知が行われると、クラスメイトの反応は、嫌そうだったり、やる気に満ちていたりと、人それぞれ様々な表情を浮かべていた。
この時の俺は「打倒ダミアン」という思いを胸に、夏休み中毎日のように厳しい訓練に明け暮れていたのもあって、対決テストでダミアンと当たるのを祈るしかない。
ちなみに二学期初日は、ホームルームと簡単な連絡で授業は終わる。
だから授業が終わった後は、皆久しぶりに会うクラスメイトと雑談を楽しんでいた。
「ライト君、今回は負けないから!」
一カ月ぶりに会う友達、フローレスさんと久しぶりに話そうとしたら、いきなり勝利宣言をされたので驚いたけど、
「待って! そもそも俺とフローレスさんが、今回も対戦相手になるとは限らないから」
「……言われてみればそうだったわ」
つい突っ込んでしまったけど、フローレスさんは出鼻を挫かれたかのように勢いを失う。
そんなフローレスさんの姿はちょっと可愛いかもって思った。
「そ、それより、夏休みはトレーニングに励んでいたみたいね」
「そうだけど、よく分かったね?」
「だって夏休み前より、明らかに逞しくなってるよ、ライト君。
だから誰が見たって『何かやってた』なんて丸分かりよ」
フローレスさんの言う通り、夏休みは毎日のように三人の師匠に色々と鍛えられた。
そして体格だけじゃなく、姿勢から言葉遣いまで意識して変えるため、自分なりに【強くなるためには?】と考えるようになった。
そして、できる範囲で改善できそうなところは改善するように、意識するようにしたのだ。
その結果、一カ月ぶりに会った友達が「変わった」って感じたのなら、この一カ月で間違いなく俺は何かが変わったのは間違いない!
こうして、やっと自分が少しでも強くなっていることが実感できたんだ。
「でも、私だって帝国に帰ってる間、お母様や家の騎士団の皆と沢山トレーニングしたんだから、今度こそ勝ってみせるわ!」
(だから対戦するかまだ分かんないんだって!)
そう突っ込みたかったけど、何かせっかく燃え上がってるフローレスさんに水を差すようで悪い気がしたので、笑ってその場を流すことにした。
そしてしばらくフローレスさんと談笑しながら、夏休み中にあった出来事を教え合ったり、久しぶりに組み手をやる約束をした。
そしていつものようにクリスを呼んで帰ろうとしたら、
”ギロリ”
「……ねぇ、なんで俺を睨んでるの?」
「……別に」
相変わらず俺がフローレスさんや女子と話すと、クリスは不機嫌そうに俺を睨んでくるし、その理由を聞いても絶対に話そうとしないので、
「ねぇ、クリスってもしかして女の子が…」
「ちっ違うよ!! そんな訳ないよ!!!」
クリスは俺の言葉を遮り、必死に俺の言ったことを否定してくる。
俺はただ「もしかして女の子が嫌い?」って聞こうとしただけなのに、あんなに必死になって否定するってことは
(やっぱり女の子が嫌いなのかな?)
そういえば、クリスに気がありそうな子の話題を振っても、リアクションは毎回薄い。
これも女の子が嫌いって思うと、納得がいく!
そして今でもこの手の話題をクリスに振ると、毎度必死に否定するんだけど、その様子は面白いので、つい揶揄いたくなったら、この話をネタに弄るようになった。
それにクリスが機嫌悪くなった時の話題逸らしにも使えるし!
しかし、未だに本人の口からハッキリと「女の子が嫌い」とは聞けていないので、そこまで女子が嫌いなら、女の子の友達と話すのだって控えたらいいのにな?
この矛盾したクリスの行動は、未だに俺には理解が出来ない。
・・・
・・
・
そして二学期が始まってから一週間が経ち、いよいよ二度目の対決テスト当日となったが、俺は朝からどうにも機嫌が悪い。
それは、なぜかこの日やたらダミアンが俺のことをチラチラ見ている気がするからだった。
「チッ、なんなんだよ? あいつ!」
「どうしたの?」
朝のホームルームが始まる前に、クリスを含む友達と今回の対決テストについて話していた時、ついダミアンの視線がうっとうしくなって来たので、思わず悪態をついてしまったら、クリスに心配されてしまった。
「いや、ダミアンがやたら俺のことをチラチラ見てるような気がしてさ」
「あ~…」
「確かに何かチラチラ見てるね。 ライトのこと」
「うわ、さっき一瞬”ニヤ”って顔にしてた……」
クリスや他の友達もダミアンが俺にチラチラ視線を送る様子に気が付いたようで、クラスメイト達はあまりいい顔をしていない。
「もしかして、なんかろくでもないことでも企んでるんじゃない?」
「ろくでもないこと?」
「例えば?」
「う~ん……今日の対決テストで、ライト君と対戦するように仕組んだり、テストで自分に有利な状況を作ったり……とか?」
クラスメイトの一人が、とんでもないことを言い出したけど、流石に皆「それはないって」と、笑い話で終わらせようとしたが、
「……でも、ダミアン君の家って学園の理事長と仲良いって噂だよね? だから案外ホントにそうなったり?」
その言葉を聞いて、ダミアンの実家であるアダー伯爵家が、この学園の大手スポンサーだということを一人が口にすると
「あ! そういえばアイツのお父さんが学園に沢山お金出してるから、あいつが学園で弱い者いじめしても問題にならないって噂があるよね」
「そう考えたら……ホントに何か仕掛けてたりするのかも?」
「え~、流石にそれは考え過ぎだって」
俺が笑いながらそう言ったら、皆笑って「そうだよね。 それやったらインチキだしね」と納得して話が終わったタイミングで、先生が教室に入ってきた。
いよいよテストの対戦相手が発表される。
「では、これより『5分間対人テスト』の対戦相手を発表する。
呼ばれた人は試験官の先生と共に会場に向かうように」
そして最初の組み合わせが発表される前に、先生から
「それと、前回は五十音順で組み合わせを発表したので、今回はランダムで発表していく。
それでは一組目…まずはライト・トリファーと、ダミアン・アダーによる組み合わせだ!」
「えぇっ!? ホントに!!」
(まさかさっき冗談で話したことが、本当になるなんて!)
そして対戦相手であるダミアンは、こうなることを知っていたかのように、余裕の笑みを浮かべている。
そんなダミアンを見た時、俺達が話していたことは、あながち冗談じゃない気がしてきた。
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