次に進むためには?
対決テストが終わった次の日。
この日は休日だったので、朝からクリスと共にゼール先生にテスト結果を報告する。
「ほう…二人共結果は出してきたか。 頑張ったな」
今まで一度も褒めてくれなかった先生に褒められた嬉しさのあまり
”バチーン!”
っと満面の笑みでクリスとハイタッチを決めた。
「まぁ、俺が直々にしごいてやったんだ。 この程度の結果は出せて当然だろ。
もっとも二人揃って何の結果も残せなかったら、更に厳しく鍛えてやるつもりだったがな」
「うへぇ~……」
「それはちょっとぉ……」
ただでさえ厳しいゼール先生の指導が、更に厳しくなるなんて想像したくもなかった…なので二人揃って心底嫌そうな顔になってしまった。
「…おい、せっかく人が褒めてんのになんだその顔は?
お前等ちった『マシな面するようになってきた』と思ったんだが、この程度のことでそんな顔を晒すなんざ、まだまだ俺の鍛え方は甘かったってことか?」
「「いえ、そんなことありません!」」
「いや、お前達がこの程度のことで根を上げそうになるのは、師匠役を請け負った俺の責任だ…だから二人共、今すぐ構えろ!」
そう言った直後、先生は魔法を放つ態勢に入る。
「そんな…嘘でしょ?」
「冗談…だよね? 先生??」
「嘘? 冗談? そんなの『マジ』に決まってんだろが!」
「「いやぁぁぁぁぁ……」」
どうやらテストでどれだけ結果を出そうが出せまいが、結局俺達はいつも以上に厳しく先生にシゴかれる定めにあったようだ……
ーーー
そして午前が終わりに近づいた頃
「よし、今日はこのへんで終わりにしてやろう」
「あ…ありがと…う」
「ござい…まし…た」
”ドサ”
先生から今日の特訓が終わりだということを聞き、クリスと共に先生にフラフラしながら挨拶を済ませた後、その場に思わず揃って倒れ込むぐらい、今日のトレーニングは辛かった。
そんな疲れ切った俺達を見て、ゼール先生が
「ったく、情けねぇなぁ……」
そう呆れつつも先生は、収納魔法からいつものようにキンキンに冷えたお茶を取り出し、俺達に手渡してくれる。
「「わぁー! 先生ありがとう」」
先生から出されたご褒美に、俺とクリスは飛びつくように受け取ると、二人して冷たい飲み物を喉に流し込み、カラカラに乾いた喉を一気に潤す。
「しかしまぁ、二人揃っていい飲みっぷりすんな」
「だって先生のお茶おいしいもん」
「ねぇ、これって先生が入れてるの?」
「いや、これは嫁が準備してくれてる」
「えぇ!!」
「先生…結婚してたの?」
俺とクリスは先生から予想もしていなかった驚愕の事実を聞かされ、大いに驚いてしまう!
「別にそんなに驚くことでもねぇだろうが」
「えー…だって」
「あの先生が…だよ?」
「あん? 何が言いてぇ?」
「べっ、別に!」
「何もありません! ゼール先生!!」
俺とクリスは必死に笑って誤魔化したけど、この時
(あんなガサツで狂暴な人でも、結婚出来るんだ……)
なんて失礼なことを考えていたなんて、一生言えない。
・・・
・・
・
「じゃあな、気を付けて帰れよ」
こうして、特訓後のお茶タイムが終わり、いつもならコレで解散!
なんだけど、この日はどうしても先生に聞いておきたいことがあった。
「ねぇ、ゼール先生」
「ん、どうしたライト?」
「先生は魔法使わないで、魔法使いに勝てる方法って知ってる?」
俺の質問に対して「今更そんなこと聞くか?」とでも言いたげな顔をしつつ
「そんなの相手が油断してる隙を狙えば、勝てる可能性なんていくらでもあるだろうが」
当然の如く先生はそう答えたが、俺が聞きたいのはそんな答えじゃない。
というかそれを実践して、フローレスさんには見事に負けたんだけどね……
「そうじゃなくて……えっと、魔法使いと僕が正面から堂々と戦って勝つ方法を、教えてほしいんだ!」
俺の言ったことを聞いた先生は、俺が必死に何かを伝えようとしているのを察してくれたようで、めんどくさそうにしつつも、ちゃんと話は聞いてくれたので
【俺達を虐めた主犯ダミアンに、魔法が使えない俺が正面から挑んで勝つには何が必要か】
そのことをやっと先生に伝えることが出来た。
「つまり、そのダミアンって魔法が使える野郎と『正面からぶつかっても勝つ方法が知りたい』ってことか…」
そう言いながら、しばらく先生は考える様子を見せ
「悪いが無理だな!」
出した答えは、残酷かつ情け容赦ないものだった…更に自分のことをここまで強くしてくれた先生に「無理」だとハッキリ言われると、相当堪えるものがあり、後に残ったのは絶望感だけだった。
よって俺は、ガックリと肩を落としてただ落ち込む。
そんな俺の様子を見た先生は、呆れた表情を浮かべつつ
「おい、人の話は最後まで聞け!
さっき俺が無理だ!って言ったのは、あくまで『俺には無理』って意味だ」
「でも、先生みたいに凄い人が無理って言っちゃうんなら、他の人だって絶対無理って言うよ…」
「あのなぁ…俺はあくまで魔法使いであって、魔法は教えられても近接戦闘は専門外なんだよ!
だから魔法を放てない奴の戦い方ってのを知りたいなら、そっちが専門の奴から教われ!
というか、それが一番早えよ」
要は【魔法は魔法使いから、肉体の使い方は戦士から教われ】ってことだ。
だけどこの時の俺は、そんな近接戦闘を教えてくれそうな知り合いなんて誰もいない。
だから両親に事情を説明して頼み込めば、何かしらの武術の家庭教師を付けてくれるかもしれない。
だけど、ゼール先生みたいな凄い人から、常識を覆す技術を教わってしまったので、一般的なことを教わっても、自分はあまり成長出来ないと考えてしまう。
そう考えてしまうのは、俺の体の動かし方がは”普通の人とは違い過ぎる” そのことを、この頃既に感覚で分かっていたからだ。
だからと言って、独学でどうにか出来る自信もないので、どうしたらいいのか困っていると。
「ライト、強くなるために今以上にキツイ訓練に耐えろ?って言われたら、お前はどうする」
いきなり先生から、正直YESなんて答えたくない質問を投げかけられた。 けど
「…もっとキツイ訓練は嫌だけど、もっと強くなれるんなら……がんばる」
せっかく今まで頑張って前より強くなったことを実感し、もっと強くなりたいという欲が出て来たから「もっと頑張れる」という意思を、弱々しくても示した。
「ククククク…相変わらず自分の気持ちにバカ正直な野郎だ。 まっ、お前のそんなところは嫌いじゃねぇけどな!」
俺が嫌そうな顔をしながらも出した答えを聞いた先生は、笑いながら俺の頭をポンポンと茶化すように軽く叩くけど、これはきっと、先生なりに頑張ろうとする俺にエールを送ってくれていたんだと思う。
「おい、クリス!」
「は、はい」
「お前の家にいる”タップ”のことを、ライトに紹介してやれ」
「う、うん。 分かった!」
先生とクリスが勝手に今後の俺の活動方針を決めるのはいいんだけど”タップ”って人は一体誰なのか?
そのことさえ俺はさっぱり分からない。
だから「二人とはどんな関係で、その人に会って何をするのか?」
せめてそれぐらいは説明してほしかった。
最後まで読んで頂きありがとうございます。




