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もう一つの結果

 フローレスさんが帰るのを見送った後、俺も帰ろうとして席を立とうとすると、いつの間にか俺の周囲には人だかりが!

 しかも全員男!!

 …何にせよ非常に帰りにくい状況になってしまっている。 そして


「ねぇ、ねぇ、どうやったらあんな急に強くなれるの?」

「何かコツとかあったりする感じ?」

「普段は変な事ばっかり言ってるけど、やる時はやる奴だったんだな」

「普段と違い過ぎてびっくりしたって」


(うわぁ…どうしよう)


 周囲から次々と質問が飛び交い始める。

 こんな状況初めて経験したから、どう対処すればさっぱり分からなくてオロオロしてしまうが、そんなことお構いなしにまた新たな質問が飛んでくるので、対処に困っていると


「こら! ライト君は今日は倒れるまで体動かして疲れてるだろうから、質問はまた明日にして、今日は早く家に帰してあげなさい」

「「「「「あ、はーい」」」」」

「そしてライト君は寄り道したりせず、早く家に帰ってしっかり体を休めるように」

「はい」


 困ってる俺を見て助け船を出してくれたのは担任の先生だった。

 取り囲んでいたクラスメイトも注意されると、直ぐに散って行ったので、やっとむさ苦しい空間から解放される。

 それに先生の言う通り、凄く疲れていたから今日は早く家に帰りたかったので、さっさと帰ろうと思って、いつものようにクリスの元に向かうと、驚きの光景が!

 なんとーークリスの周りにも人が集まっている。


「凄いんだね~ クリストファー君って!! 難しい防御魔法簡単に使いこなしちゃうなんて~」

「ねぇ、今度どうやったらあんなに魔法がすぐに使えるようになるのか今度教えてよ」

「あ、じゃあ私もー!」

「えっとぉ……あ、ライト君!」


 三人の女子に囲まれ、あれやこれやと質問攻めにあっていたクリスは、俺の姿が目に入ると直ぐに鞄を持って席から立ち上がり


「ご、ごめんね! 今日は先生から『ライト君がまっすぐに家に帰るように見張ってなさい』って頼まれたから!!

 また今度ね」

「バイバイ! 絶対今度魔法教えてね~」


 クリスは女子達にそう伝えつつ、手を振って別れの挨拶を済ませると、俺の元に駆け寄ってきた。


「ライト君待った? 帰ろうよ」

「…うん」

「あれ? どうしたの?」

「…別に、ただクリストファー君はモテてるんだな…って思って」

「え?」

「なんでもない…早く帰ろう」


 俺が若干不機嫌な様子を見せると、クリスは不思議そうに首を傾げた。

 ちなみにこの時不機嫌になった理由は、自分の周りは男子しか集まらなかったのに、クリスの周りには”女子だけ”が集まってたのが”凄く悔しかった”とかじゃないし、そのことに嫉妬したわけでもない!


 そしてクリスと共に教室を出ようとした時、一人のクラスメイトがすれ違う。


「…チッ、成金と最下級のゴミがちょっと良い格好したからって、調子乗るなよ!」


 そんな捨て台詞を吐いて横切って行ったのは、以前俺達にちょっかい出してきた六人組のリーダ格である「ダミアン・アダー」だった。

 ただでさえ軽く苛立ってる時に、ダミアンに余計なことを言われ、より苛立ってしまった。

 だから、あいつに掴みかかってやろうと思い、奴が行った先を振り向くと、そこには、手を広げたクリスが俺の行く手を遮るように立ち、首を横に振りながら


「ライト君、今日は早く帰ったほうがいいよ」


 力強い眼差しを俺に向けながらそう言い放ち、俺がダミアンの元に行こうとするのを阻んでくる。


「……分かったよ」


 クリスから深追いするのを止めるように諭されたことで、頭を冷やして冷静に状況を考えた結果、大人しくクリスの言うことに従うべきだと判断する。

 そしてダミアンを追う事を止めた俺は、クリスと共に教室の外に向かったけど、その理由は二つある。

 まず、今の状態でダミアンと争っても前みたいにやられてしまうだけだし、そもそも今の自分じゃアイツに()()()()難しい。

 そしてなによりもゼール先生からのアドバイスで


「ムカつく野郎を叩きのめしたいんなら、堂々と叩きのめせる場でぶっ倒してやれ!

 そっちの方が小物にとっちゃ屈辱的だし、下手に負けた良い訳だって出来ねぇからな!!」


 そう教えてもらった時、どうせ勝つならそっちの方がいいっと思った。

 だから【俺がダミアンを叩きのめすのは、皆にアイツが負けたのがよく分かる学校の行事で、完膚なきまでに叩きのめす!】

 そう決意したのを、クリスの顔を見て思い出したからだ。

 だけど機嫌がさらに悪くなったのは変わりないので、しばらくクリスと二人、無言の下校時間を過ごす。


・・・

・・


(どうしよう……声かけづらくなっちゃった!)


 普段なら楽しく話して帰っている帰り道も、俺が機嫌の悪さを顕にし続けているせいで、非常に空気の悪い下校となってしまっている…しかも原因は自分にあるので、益々自分から声を掛けづらい状況だ。

 もし、クリスから話しかけてくれたら、それだけでこの嫌な流れが終わるのを期待してたけど、そもそもコイツは割と引っ込み思案だし、妙に相手に変に気を使い過ぎる傾向があった頃だ。

 だから俺から話しかけないと、分かれる場所までこの嫌な流れが続く可能性が非常に高い…それは分かっているんだけど、どう話を切り出していいのか思いつかない。

 何か「この空気を簡単に変えれる話題がないかな?」と一考えていると、ふと前に父さんから


「いいか。 もし会話に困った時は、出来るだけ相手が返しやすい話から振るんだ。 そうすれば自分も返事を返しやすいし、会話が続きやすいぞ」


 そう教わったのを思い出すと同時に、今日は”絶対に会話が盛り上がる話題”があることに気が付いたので、すぐにクリスに話を振る。



「ねぇ、そういえばクリストファー君は対決テストどうだったの?」

「え、引き分けだったよ」

「じゃあ一緒だね! 判定は?」

「C評価!」

「おぉ! 先生の言ってた通りになったね!」


 クリスは、ゼール先生から【絶対にテストで勝つな!】と言われていた。

 その理由は、クリスは魔法適性がそれなりに高いのが周知されている以上、どんなに頑張ってもその部分は目立ってしまう。

 だから周囲が「才能はあっても上手く活かし切れない奴」だと思えば、立ち位置は良くも悪くも目立たない立ち位置に変わってくる。

 そしそう思わせる方法こそ「勝てもしなければ、負けもしない」という中途半端な結果を出す事。


「じゃあ、ゼール先生に教えられた通り、魔法で相手の攻撃をずっと防いで、引き分けにしたんだ」

「うん!」


 要は勝って才能を発揮しても、負けて無能だと思われても、クリスは立場上そのことを理由に、面倒事に巻き込まれる可能性が付きまとっているので、どう足掻いてもトラブルは避けられない定めだ。

 だったら”才能はあっても開花しそうにない”という微妙な立ち位置に居れば


「多少のトラブルはされられないかもしれないが、大事には至らないだろうな」


 そうゼール先生は予測した!

 そして、クリスがテストで時間切れの引き分けに持ち込むための術として、相手の攻撃を時間切れまで防げるように、トコトン防御に関する魔法を鍛えたのだ!

 こうしてクリスは”防御特化の攻撃力ゼロ人間”を演じれるようになった。


「そういえば、対戦相手は誰だった?」

「えっと、アリカ・レンバーさん」

「あ! じゃあこの前僕達のこと虐めた奴等と戦えたんだ!」

「…うん」


 なんとクリスは、俺達のお目当てであった六人の内の一人であり、あのグループの中ではサブリーダーポジションだったアリカ・レンバーと対戦していた。


「それで? 全部相手の攻撃防いだんでしょ! そしたら悔しがってた?」

「うん、かなり悔しそうにしてたよ」

「ははは! いい気味だね!」


 クリスは、俺達の目標であった虐めた奴等を見返すという”下剋上”を達成してくれたので、自分のことのように大はしゃぎした。

 けど、目標達成した友達はちょっと微妙な表情を浮かべている。


「僕も最初はそう思ったんだけど、テスト終わった後にアリカさん泣きそうになってるの見たら、ちょっとやり過ぎちゃったのかな……って」


 下剋上達成を報告した時と違って、クリスがあまり嬉しそうじゃない表情をするのは、相手に嫌な思いをさせてしまったという罪悪感を感じたからなんだろう。

 そんなクリスの心は凄く優しいと思ったけど、今回ばかりは馬鹿にしてきた奴を見返せたんだから、俺はその事はしっかり誇ってほしかったので


「そんな事ないよ! あいつ等は俺達に怪我させるぐらい酷い事してきたのに、クリストファー君はアリカさんに怪我なんてさせてないんだから!

 君が優しいのはいいことだと思うけど、今日アリカさんが悔しい思いしたのは『自業自得』ってやつだから、そんなの気にしなくていいんだよ」

「…うん」


 そう言って励ますと、クリスはまだ蟠りが残る顔をしていたけど、俺から凄いって言われたからか、照れくさそうな表情を覗かせた。

 この話を切っ掛けに、帰りはいつも通り楽しく話が盛り上がり、そのままいつも別れる場所でクリスと別れた後、俺はあることに気が付いた。


(あれ? さっきアリカさんって、クリストファーの席の周りでキャキャーはしゃいでる女子の中に混じって『絶対魔法教えてね~』って強く言ってたような……)


 これは後で知ったんだけど、アリカさんは見下していたクリスから攻撃を全部防がれたことで、自信を喪失してそれはひどく落ち込んでいたそうだ。

 そんなアリカさんを見たクリスは、彼女を優しい気遣いと言葉で懸命に励まし、クリスの優しさに触れた結果、アリカさんはダミアンが率いるグループをあっさり抜け、クリスと友達になっていた。

 そして後に結成され、多くの女子生徒が所属することになる”クリストファー君の優しさにもっと包まれ隊”というファンクラブの幹部になる。

 そんな未来、この時俺もクリスも知る由もなかった……というより、そんなの誰も予測できないから!

最後まで読んで頂きありがとうございます。

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