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ある魔法使いの夢を叶える可能性

「これでいいの?」

「あぁ…もうコレだけ使えるなら大したもんだ」


 こうしてクリスに魔法の基礎を教えてみたが、なんとちょっとコツを教えてやったら、教えた魔法を簡単に使いこなせるようになりやがった。

 才能があるのは分かっていたが、実際こうも簡単に出来ちまうのを目の当たりにしちまうと、もう舌を巻くしかねぇわな。


「これで対決テスト大丈夫かな?」

「そうだな。 同学年と魔法でやり合って『まず負ける事はない』だろうな…だがお前の場合は、勝つために魔法を使うより、力をセーブしてやり過ぎない程度に魔法を使えるようになれ!」

「ええっ? どうして??」

「お前の能力は強すぎる。 だから目立つんだよ!

 それに母親から『出来るだけ目立たないようにしろ』って言われたりしなかったか?」

「…うん 『出来るだけ目立たないようにしなさい』ってママに言われた」

「そうだろうと思ったぜ」


 クリスに仕込まれた術式の中で、常時発動している者に”本来の魔力より低い魔力と認識”させる術式や”あえて放出する魔力が弱まる”術式が組みこまれていたので、もしやと思って聞いてみりゃ予想通りの答えが返ってきた。

 これこそマリアが、クリスの本来の魔力を知られると【不都合、もしくは余計な事を呼び込む】と予測し、あえて自分の子供に”デバフ形式の術式”なんて厄介なモンを仕込んだんだろうな。

 ちなみにクリス本来の魔法適性の総合評価は、悪く見積もってもAマイナスは間違いなくある。

 更に言うなら6歳でAの付く評価なんて滅多に出るもんじゃねぇし、俺がここ数日で調べた限り間違いなく同学年どころか、初等部の中でもダントツでトップレベルの魔法適性だ。

 つまりクリスが本来の力を発揮すれば、良くも悪くも注目の的になるので、出来るだけ周囲の人間に”学園の出した適性レベルの能力しかない”と思わせる振る舞いが必要になってくる。


「そしたら当分の間やる事は一つだな」

「何するの?」

「簡単な事だ。 さっき防御魔法も幾つか教えたよな?」

「うん」

「今から俺がさっき教えた防御に関する魔法だけを使って、ひたすら俺の魔法攻撃を防ぐ。 それだけだ!」

「え?」

「なに、当たったって痛てぇだけだ。 死にはしねぇ。 ほら、早速撃つぞ!」


 そう宣告した後、簡易攻撃魔法陣をクリスに向けて展開する。


「う、ウソだよ…ね?」

「おい、ボサっとしながら寝ぼけたこと言ってる暇あったら、さっさと俺の魔法を防ぐ準備しろ!」

「えぇ…い、いやぁ~!」

「…先に行っとくが、逃げたって無駄だ! 俺の攻撃魔法は目標を追尾する」


 こうして俺はひたすらクリスに魔法を撃ちまくると、クリスは半ベソかきながら必死に俺の魔法を防ぐ!

 そんな毎日が始まった。


・・・

・・


 こうして二人を鍛え始めてから一週間。

 毎日ハードにしごいてやってるのもあって、二人揃って明らかに初日と比べて勢いもなけりゃ、元気もなくなってきやがった。

 まぁ、それでも二人共自分の課題をこなそうと、必死に努力を続ける姿勢だけは褒めてやったがな。

 そんな努力を続けた二人の内、先の努力が花咲いたのは当然クリスの方で、なんと俺の放つ基礎攻撃魔法を単発なら、完全に防ぎ切るようになった。

 自分で言うのもなんだが、俺の攻撃はそんなに生易しいものじゃねぇし、防御魔法ってのは攻撃魔法に比べると、魔力のコントローが段違いに難しいモンだ。

 それをやり始めて一週間足らずで、最適なコツを掴みやがったんだから「将来ホントに末恐ろしい奴になるな」 そんな感想しかクリスには思い浮かばねぇ。


 一方ライトは、相変わらず魔力流出測定器内の玉を”中央で維持し続ける”ことに、大きな進歩はなかった…まぁ、始めた頃よりは長く維持は出来るようになったがな。

 なんせライトにやらせてることは【魔力が低い人間が誰一人成功どころか挑戦すらしてない】そんな未知の領域みたいなもんだ。

 よって、どんなプロセスで進めて行けばゴールに辿り着けるのか? それさえハッキリしてねぇし、そのためのノウハウすら出来上がってねぇ。

 そんなまだまだ手探り状態の事を子供にやらせてんだから、すぐに結果が出るモンだなんて思っちゃいないし、その事に俺は一度も文句を言った事はねぇ。


 だが、そろそろ子供には色々とキツイ時期に入ってきたな。 なんせ何やっても思うような結果が出ねぇってのは、挑戦する側としては続けるのが嫌になってきて、どんどん辞めたくなる気持ちが強くなる。

 だからといって根詰め過ぎのも良くねぇので、真剣な顔して流出測定器と睨めっこしてるライトに一旦練習を止めさせ、半ば強引に休憩させることにした。

 その際、ちょっとした気晴らしにと思って、魔法で菓子と茶を出してやったが、案の定二人共大喜びしやがった。

 事前に娘で試してみて、結構ウケが良かったのでやってみたが、こういうトコに関しては年相応の扱いやすさで助かる。


 何て思っちまったが、案外二人とも中々鋭い所にツッコんでくる時があるから、油断は出来ねぇ!

 実は二人には俺のことは「魔塔には所属してないフリーの魔法使い」という事にしてるんだが、コレも俺なりの理由がある。

 まず、魔塔に所属する魔法使いは、誰かに魔法を教える場合必ず魔塔から許可を得る必要がある。

 そしてその手続きってのが、内容、教えてる人物についての詳細、他のにも様々な報告書類を作る必要があるし、そもそもまともに二人の事を申請したって、色んな意味で通らない要素が多い。 そして何より手続き取るのがめんどくさい!

 だからフリーの魔法使いという事にしているんだが、時々妙に二人揃って勘の鋭さを発揮する時があり「俺が本当にフリーの魔法使いなのか?」と疑って色々鋭い質問をしてくる時があるからな。

 つまり子供だからと言って油断してると、足元救われる可能性があるってこった!


(しかし菓子を頬張る姿は年相応だな! ったく嬉しそうに頬張りやっがって)


 そんな二人をみてると「用意して正解だった」と思えるし、見てるこっちも悪い気はしねぇ。

 そんな事を考えていた時、ふとライトの膝の上に乗せている測定器の玉が、中央付近でフラフラ揺れているのが気になり、魔力測定器に異常がないか点検してみるが、特に異常は見当たらねぇ。

 一体なぜ誤作動したのか? その原因を首を傾げながら考えていると


「それって、僕が膝の上に乗せてる時も魔力を流してるから、動くんじゃないの?」


 当然の如くライトは玉が動いた理由をサラリと答えやがったが、その一言を聞いた瞬間、俺は度肝を抜かれた!


(おいおい! コイツ、今自分が何を言ったのか分かってんのか?)


 魔力を測定器に流す際【掌の上で流すのと膝の上で流す】この二つにどれだけ難易度の差があるのか?

 その事をライトは全く分かってねぇから、簡単に言えるんだろうな。

 そもそも、それなりの才能がある魔法使いだろうが、膝の上で魔力を物体に流すって事自体、相応の技術が必要となる。

 だから並みの魔法使いが”掌以外で何かに魔力を流すようになる”には、下手したら一カ月近くトレーニングしないと出来ない奴もいれば、それだけやっても出来ない奴だっている。

 そんな魔法に精通した人間でも、相応の難度だと認めることを、たった一週間やってのけた…それに魔力コントロールもまだ完全に安定してないだけで、魔力を流すコツは掴み始めてやがる。

 その事を踏まえると、実はコイツ相当面白れぇ奴に化ける可能性があるんじゃねぇのか?


 そんなライトが良い意味で仕出かしてくれたことに、俺が驚く様子を見せたのを見ていたライトは、どうにも俺が不快になったと勘違いしたのか


「…だって先生が自分で言ったんだよ! 『出来る限りいつでも魔力を流す練習をしろ』って!」

「あぁ…確かに言ったな。 そんな事よりライト、お前これ出来るようになる為に、一体どんなことやってたんだ?」

「えぇっと…ご飯食べてる時とか勉強中とか、手が使えない時に膝に乗せてこっそり魔力流す練習してた」

()()()毎日か?」

「う、うん」

「ククク…ハハハ! いくらやれって言ってもな、誰も『そこまでやれ』とは言ってねぇし、実際こんな事思いついてやるなんて、大した奴だよ。 お前は!」 


 もう笑うしかねぇよ。 なんせ下手な魔法ならやりたがないハードな特訓、いや、そもそも思い付きもしねぇことをやりやっがったんだよ!

 まさか魔法ド素人が、魔塔で上位三人に位置する俺よりもう”先の段階”まである意味進んじまってるんだなんて、誰が想像出来る?

 ったく…この二人は俺の、いや、大人達の想像を遥かに超えた事をやってくれやがったな!!


(ライト。 お前は一生かけてどんな事やろうが決してクリスの持つ可能性の一つ”最強の魔法使い”にはなれねぇ!

 だが”誰もが驚く魔法使い”に成れる可能性を秘めていやがる。 そう、俺とマリアの探し求めてた【この国の在り方を変える可能性】を持った人間だ!)

 

 ハッ、まさかオマケで教えてた奴の方が、俺の夢を叶えてくれるかもしれねぇ本命だったなんてな…ホントに我ながら、めぐり逢いの運に関してだけは、いまだに持ってる方だと思うしかねぇな!

最後まで読んで頂きありがとうございます。


これでゼール視点の話は終わりです。 次回から本編再開です。

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