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ある魔法使いと追手?

 マリアがこの世を去った後、俺は以前のように研究に打ち込む意欲もなければ、己の夢を叶える情熱もほとんど無くしていたが、魔力流出測定器の研究だけは続けている。

 もっともそれは、もう二度と会えない女との思い出を忘れないように…いや、そうしないと俺の故郷の為にもならない。

 そして何よりも、この国を良い方に変えるべく、体がボロボロになるまでエードランド復興に尽力してくれたアイツが、報われねぇと思ったからだ。


 そしてマリアの死から半年後、俺は遂に魔力流出測定器を使えば”魔法適性がない”と判定された奴等でも、自分の魔力を可視化できるように改良する事に成功する。

 だが、今の俺には、この道具を使って故郷であるエードランドの復興の手助けなんて、本気でやる気が起きないでいた。

 エードランドは以前の最低最悪と呼ばれた頃に比べれば、復興が進んだ事で生活基盤は相当改善され、最下級層と呼ばれた頃の面影はほぼなくなっている。

 まっ”良くなった”って言っても、最悪が悪いに変わった程度で、実際はエードランドの隣に位置する貧民街と呼ばれる貧困地域と大差ないレベル。

 結局まだまだ改善すべき事だらけで、問題は山積みだ。


 そんな状況のエードランドだが、魔法の素質がないと判断されるレベルの奴等でも、魔力測定器を使う事で、使えるようになる魔法がある!

 つまりかつて最下層と呼ばれた場所な人間にだって”有用な面がある”その事を証明できれば、魔法を使える人間が重宝されるこの国でも、素質のない人間の活躍する機会が増えるハズだ。


 もっとも幾ら妙案や良策を思い付こうが、結局思いついた奴が積極的に動く気がなけりゃ、案は腐るだけなんだけどな。


・・・


 依然として故郷復興に対する熱意を失ったままだが、完成させた改良型魔力測定器は()()()()()()作った物である以上、ベン率いるエードランドガイストに託す事にした。

 エードランドガイストの奴等が、コレを上手く使って魔法適性がない奴等の能力を開花させられるのかって? それは全く分からねぇよ! だけど”今の俺が使うよりはよっぽどマシなのは間違いねぇ…

 冴えない気持ちを抱えたまま、魔力測定器を持ってエードランドに向かう道中、王都のメインストリートを通ると、多くの人間が騒ぎつつ、橋の上に集まってやがる。


「…一体何なんだよ?」


 集まって騒ぐ奴等の視線を追うと、揃い揃って慌てた顔しながら、川で流されているガキを追いかけていやがる。


「誰かー! あの子を! あの子を助けてぇぇぇ!!」

 

 そして子供の母親と思われる奴は、必死に自分の子を『助けて』と悲痛の叫びを上げるが、そんな悲痛な訴えを聞いても、誰一人川に飛び込んで子供を助けるようとはしないが、そりゃそうだろうな。

 なんせ普段穏やかな川は、ここ数日振った雨の所為で激流に変わり、普通の人間が飛び込もうなら、子供を助ける前に、下手すりゃ自分が死ぬ。


「はぁ…しょうがねぇなぁ」


 ”同じ子供がいる身”として、この状況を放っておけなかった俺は、誰にもバレないように気を付けながら浮遊魔法を使い、川から子供を浮き上がらせ、母親の前に降ろしてやると、それを見てた奴等から大歓声が起きた。 そして


「子供を助けてくれた魔法使い様は何処ですか?」


 そう騒ぎ立て、この場に居る奴等は俺を一斉に探し始めやがった!

 俺としてはこいつ等に注目されるためにやった訳でもなけりゃ、称賛を得たいがためにガキを助けた訳でもねぇ。

 だから魔法で自分の気配を消し、メインストリートからさっさと立ち去った俺は、再びエードランドに向かう。


・・・


(…付けられてんな)


 メインストリートでガキを助けた後から、ずっと誰かが俺の後をつけ回していることに気が付く。

 ここ最近、誰かが俺の後をつけ回す奴なんざいなかったので、警戒が疎かになってたかもしれねぇな。


「ったく、いっちょ撒いてやるか」


 こうして俺の後をつけ回して来る奴等を行き止まりに誘い込み、俺は魔法で姿と気配を完全に消せば、俺の後をつけ回してる奴等は”俺の姿も気配も綺麗さっぱり消えた”ので、驚きを隠せないでいるが、そりゃそうだろうな。

 なんせ俺を付け回してたのは、俺の娘と大差ない歳の金髪と銀髪のガキ二人だった。

 久しぶりに”闇魔法ギルドからの刺客でも来たのか?”と身構え、スリルを僅かでも感じた自分が、ちょっとだけ虚しくなった…そんな何とも言えねぇ心境の俺を他所にガキ二人は、俺を見失った事で言い合いを始める。


「…誰もいないじゃん」

「で、でも、確かにあの人から感じたのと同じ感じが、ココでするんだよ」

「そう言っても…誰もいないよ? もしかして、嘘?」

「う、嘘じゃないよ! ホントだもん!!」

「ホントっていうけど、やっぱり誰もいないじゃん」

「い、居ないけど、居る感じがするの!」


(へぇ、あの銀髪、俺の魔力の残滓を感じ取ったのか? だとしたら将来相当有望だな)


 どうやら銀髪のガキは、魔法使いとしてかなり優秀な素質を持ってる片鱗を見せたのは、かなり驚いた。


(まっ、だからと言って俺はこのガキ共の前に姿を現すつもりは一切ねぇ。 むしろ今すぐこの場から去れ!

 しかし川に流されたガキを助けてこんな目に遭うなら、人助けなんて柄にもない事しなければ良かったな)


 現在迂闊に声を出す事も出来ない俺は、心の中でため息をつき、ガキ共がこの場から去るのを待っていたが、突如金髪のガキの方が、銀髪のガキを責め立て始めた。


「だったら何処にいるか教えてよ?」

「えっと…」

「…もう良いよ、さっさとお家に帰ろう!」


 そう言って金髪は銀髪が”嘘を言っている”と思い、銀髪を突き放すようにさっさと帰ろうとするが、今度は二人して「帰り道が分からない」って言い出すと、今度は二人揃って泣きべそをかき始めやがった!


(ハァ…この程度で泣きそうになるなよ…これだから子供は苦手なんだよなぁ)

 最近5歳になった娘のツェツィーリアも、ちょっとした事で不機嫌になったりする事が増え、どう対応していいか困ってる。

 だから俺は、今でも子供に対して苦手意識が拭えきれてねぇんだよな…その所為なのか、知らねぇガキ共の馬鹿さ加減見てると、なんか頭が痛くなってきやがった。


 オマケに金髪が、銀髪の事を嘘吐き呼ばわりした事が発端となり、ついにガキ共の口喧嘩が始まった。

 こうして口論が発端となり、二人揃って大泣きが始まったんだが、今まで静かだった路地裏が、一瞬で騒然とした場所になるとはなぁ…


(はぁ…仕方がねぇ)


 目の前で泣きじゃくる馬鹿ガキ共を”見かねた#ってのもあるが、それ以前に金髪が”根拠もねぇ”のに銀髪を嘘吐き呼ばわりする!

 その事に対して、無性に腹が立った俺は魔法を解除して姿を現し、銀髪を嘘吐き呼ばわりした金髪をしっかりと説教してやった。

 そしてそのままガキ共の前から消えようとしたんだがな…二人揃って「帰り道が分からない」って言ってくる以上、俺は馬鹿二人をメインストリートまで引率する羽目になった。

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