ある魔法使いの激動の日々
マリアから護衛の任を解かれた次の日、自分の研究に没頭すべく魔塔に戻るため、エードランドから再び離れる事にした。
そして俺が魔塔に戻って本格的研究を再開するとなると、今後マリア達と何かしらの形で接触するのは、極力控える必要があると判断したので、俺からマリア達に連絡する事は当分ないだろうな。
それも俺が元マリア直属の護衛である事は、多くの人間に知られているし、その事は当然マリアを今でも必死に探しているエーレンブルグ公爵家の人間達だって知ってる。
だから奴等は俺が魔塔に戻ったと知れば、当然俺の行動をしっかりマークしてくるだろうな。
だからマリア達の安全を考えるなら、余程の緊急事態でもない限り俺がマリア達と会うのは、マリアの潜伏先がバレるリスクしかない。
だから次にマリア達と堂々と会うのは、マリアとフェルナンド・エーレンブルグ公爵との関係に、何かしらの形で決着が付いた後だろうな。
だから俺は、エードランドを経つ前にマリア達と、暫しの別れを惜しんでいた。
「何て言うか…とにかく今まで世話になった」
「何言ってるの! 私だってあなたに多くの事で助けられているのよ?
だからその言葉、そっくりお返しするわ」
「よせよ! 俺が今までマリア様に貰った恩に比べたら、俺がこれまでマリア様にやってきた事なんて、大した事ねぇんだからよ!
だがよ、もしまた俺の助けが必要な時があったら、遠慮なく俺を頼ってくれよ」
「フフフ、じゃあ困った時はまた護衛として頼りにさせてもらうわ」
「任せな! SOSを受けたら即すっ飛んで来てやるからよ!」
そう言った後、俺とマリアは握手を交わし、主従関係はこれからも変わりない…いや、違うな。
同じような夢を持ってる者同士、これからも助け合う事を再確認し合った。
そして次はフレイとタップが俺の元にやってきた。
「今までずっと三人で護衛やってきたからかな…しばらく会えなくなると思うと、やっぱり寂しくなるわね」
「じゃあ、三人での飲み会も当分お預けか」
「…そんなしんみりすんなよ。 またいつか『三人で組んで仕事して、一杯飲める時が来る』
そういう事にしとけば、先の楽しみになるだろ?」
「…そうね」
「その時ゼールが嫁さんの尻に敷かれて、飲みに来れなくなってたりしてな」
「なっ! そんな訳あるか!」
「アハハハ、確かにゼールならあり得るかもね」
「やっぱりそう思うだろ? 案外コイツ女には甘いトコあるもんな」
「ったく、まだそうなると決まってもねぇのに、勝手な事ばっかいってんじゃねぇ!」
(ったく、コイツ等と来たらしばらく会えなくなるってのに、人のこと好き勝手言いやがって…まっ会えなくなるからって、しんみりするよりはマシだけどな)
「さて、そろそろ行くとするか」
「ゼール、研究頑張ってね」
「マリア様の事は俺達が守るから、何も心配せずお前は研究に打ち込めよ」
「あぁ、ありがとよ、フレイ! タップ! マリア様の事は頼んだ!」
護衛仲間、そしてエードランドの仲間達とも別れの挨拶を済ませた後、俺は多くの仲間に見送られながら、再び生まれ故郷を旅立った。
そう、俺の研究を完成させた後、またこの場所に戻って故郷をより良く復興させるために!
・・・
こうして俺は魔塔に戻り、再び研究室で研究に明け暮れる日に戻った。
もっともマリア達と共にエードランドに居た時も、様子見がてら魔塔の研究室には月一ぐらい戻っていたが、研究仲間やごく一部の魔塔の人間以外には気付かれないように戻っていたので、正式に魔塔に戻ったのは一年以上間を空けてた事になってたけどな。
そして正式に魔塔に戻った事が世間に知られると「今まで何処で何をしてたのか?」って新聞記者から探偵、はたまた人探し専門の会社から闇魔法ギルドまで!
とにかく色んな奴等がその事を聞き出す為に俺の元を訪ねてくるようになった。
こうなる事はある程度予想していたにしても、来るのは揃いも揃ってエーレンブルグ公爵家の息がかかった奴等で、とにかくしつこく俺の事を追ってきやがる。
こうして研究と並行して、邪魔な奴等を追い払う日々も始まった。
まっあんまりしつこい奴等は、もれなくちょっとしたお灸を添えてやったがな!
マリア達の動向は研究室に籠っていても、エードランドガイストを通じて近況を知る事は出来たので、マリア達が”元気にやってるいるか”は分かったんだがな。
だが、やはり長い付き合いがあった連中と一切会えなくなった日常ってのは、なんかこう…決して別の何かで埋めれない”独特の寂しさ”を感じる時がある。
って言っても、その事でセンチになる訳じゃねぇんだが、今思うと魔塔に戻ってきても上手くやれたのは、レオナのお陰ってのもあったな。
魔塔に戻った俺は、ようやく本腰を入れてレオナと籍を入れる準備を進めようとしたんだが、それはそれで色々と問題が起きた。
詳しい話は割愛しちまうが、何か昔ぶっ飛ばした元婚約者が逆恨みでレオナを襲ったり、何でか俺を誘惑する女がゾロゾロと湧いて出てきたり…とにかくレオナと籍を入れるまでの間、トラブルだらけだった。
そんなプライベートまでクソ忙しい状況下で、唯一の救いだったのが、レオナの生家であるバーンスタイン子爵家の人達は、俺の出自を知っても好意的に接してくれ、俺の研究と夢に関しても理解を示してくれた事だな。
お陰で俺は、バーンスタイン家の一員としてすんなり受け入れてもらえた。
って言っても、事前にレオナが俺の事をバーンスタイン家の人達に、相当感じの良いように口添えしてくれていたからなんだがな。
これだけしっかりした嫁は、俺にはもったいないと思う。 ホントに!
・・・
そして俺とレオナが籍を入れてから三年後、俺とレオナの間に娘を授かる。
しかし過去に俺は、クリスティーナと関わると、何かとクリスティーナが泣き出す苦い経験の所為で、どうにも子供に対して苦手意識が生まれちまっていた。
だから最初自分の子供が出来るって自覚した時
(ホントに俺に子育てなんか出来んのかよ?)
そうな考えばかりが頭を過りやがる。
だから子育てなんて上手く出来る自信が、全く湧いてこなかった…が、いざ生まれた自分の子供を見ると、そんな些細な事は吹っ飛ぶぐらい自分の娘は”可愛い”と思った。
しかし自分の子供だってのに、俺が何か接しようとすると泣かれる事が多いってのは、結構堪えるモンがあんだけどな…事前に「子供に嫌われやすい」ってのは嫁に伝えはしてたが、実際その状況を見た嫁は、苦笑いするしかなさそうだったが…はぁ~、やっぱり俺はガキが苦手だ。
・・・
・・
・
そして更に月日は流れ、マリア達と別れてから六年近く経ったある日。
この国を騒がせるニュースを、俺はエードランドガイストを通じて王都の誰よりも早く知る事になる。
【エーレンブルグ公爵夫人ついに姿を現し、エーレンブルグ公爵家に戻る!】
その事を知った俺は、直ぐにエードランドガイストに乗り込み、詳しい事情を聞いた。
そしてこの記事は、全てマリアの仕組んだ事であると同時に、マリアの体は既に至る所を病に侵され、もう余命いくばくもない風前の灯火である事を知る。
最後まで読んで頂きありがとうございました。




