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ある魔法使いが垣間見た再生と誕生

 マリアが最下級地域に身を潜め、3月が経過した。

 正直マリアの逃亡生活は”本当に逃亡生活をしているのか?”って思えるぐらい、特に大きな問題は起きてない。

 そのお陰で、マリアの腹の中に居る子供はマリアの腹と共に順調に育っている。

 正直「この場所に身を隠そう」と提案したのは俺だが、ここまで上手く行くなんて思っていなかった。

 もっとも今の所上手く行ってる最大の理由ってのは、これまでに築いてきたマリアのこれまでの行いの賜物だ。

 かつてマリアが社交界で築き上げた人脈と人徳は、未だに貴族の社会で根強く活きている。

 っていうか知ってる奴からすりゃ、潜伏先でやってる事も称賛されてっから、まさか逃亡してんのに一部の人間からは、より根強い人気を得ちまってるからなぁ…才能の塊ってのはホント敵に回したくねぇ。

 こうして多くの人間が裏からマリアの逃亡生活を、あらとあらゆる面で手助けしてくれている。

 だからハッキリ言って、さんざんやらかした結果社交界からの信頼が薄いエーレンブルグ公爵が、どんな手を使ってもマリアの元に辿り着くのは”絶対に不可能”だろうな。


 それこそ裏社会に手を回してマリアの情報を得ようにも、かつて裏社会で名乗りを上げた闇魔法ギルドの人間達や、最下級地域の人間達もマリアの逃亡生活に全面的に協力してくれている。

 つまり例え公爵が裏社会から手を回そうが、裏社会の人間達もマリアに関する情報が、公爵に入らないように規制してる状態が出来上がっちまってるんだよな。

 そもそも公爵の頭じゃ、上流階級の人間であるマリアが


「最下級地域なんて最底辺の場所に潜伏している!」


 そんな考えすら思い浮かばねぇだろうし、例え思いついた所で、こっちが仕込んだフェイク情報に引っ掻き回されて、頭を抱える。

 そんなオチしか見えてこねぇよ!


(ったく、たったの三カ月でこんな状況を作りあげるなんざ、ホント大した奴だよ…俺の主は)


 そう思っちまうのは、マリアが短期間でこの状況を作ると同時に、この地域の復興にも本格的に乗り出す事に成功したからだろうな。


 元々最下級地域の事は、可能な限り早く復旧支援をしたいと俺もマリアも考えていた。

 だが、いざ手を付けようにも、手を付ける前にクリアすべき様々な問題がクリア出来ずにいた。

 こうして”始めたくても始めれない”そんな状況で止まっていた事が、マリアの逃亡先として”問題の現場”に潜伏する。

 こうして結果的に、俺達は現場入りすることなった以上「さっさと復興に力を入れたほうがマシだ」となり、マリアは最下級地域の復興に本格的に手を入れ始めた。


 まず最初に手を付けたのが、この地域の闇魔法ギルド支部の解体だ。

 闇魔法ギルドは、この国の裏社会にに密接に関係している以上、マリアとしてはそんな勢力さっさと削ぎ落としたかったんだろうな。

 もっとも解体したらしたで、この地域の希少な収入源が”ほぼ無くなる”という大きな問題があった。

 オマケに汚れ仕事を続けていた闇魔法ギルドの奴等達に、今更真っ当な仕事に付かせるってのも、色んな意味で厳しい。

 そんな元闇魔法ギルドに連中に、マリアは闇魔法ギルドで積んだ経験を活かして、裏の情報を専門に扱う情報屋”エードランドガイスト”として活動を始める事を提案した。

 ハッキリ言って、情報屋ってのは数自体は少ねぇのでライバルも少ねぇ。

 だが、幾らライバルが少ない業種だろうが、そもそも確かな信頼と実績がねぇ情報屋に、依頼なんてまず舞い込んでこねぇ!

 オマケに取り扱いが裏の情報なんて扱いが厄介なモンだと、その傾向は益々顕著に表れる。

 つまり信頼も実績もねぇし、店を構えてる場所がこの国最低の地域で、扱うモンが特殊で厄介な情報屋。 そんな情報屋なんか”誰が頼るんだ?”って正直思っちまったが、そこはやり手のマリアが考案したビジネス。

 既に先の結果まで全て織り込済みで、マリアはアイツ等に提案してやがったし、アイツ等はアイツ等でマリアの事を崇拝の域って言いぐらい信頼してやがるから、アイツ等はマリアの提案に対して、そもそも不安どころか、拒否する素振りすら見せてなかった。

 これもこのビジネスが成功した要因の一つなんだろうけどな。


 まずマリアは、自分の持つ伝手をフルに使って客を呼び、とりあえずエードランドガイストに幾つかの仕事を持ち込ませたんだが、後は仕事さえ入ってくれりゃ後は結果が付いてくる!

 その事をマリアは、分かり切っていた。

 なんせエードランドガイストが裏の情報屋としては駆け出しだろうが、そもそも構成員がこの国の裏事情に関わってきた面子が揃ってるし、元々厄介かつ危険な情報の扱いにも慣れている。

 つまりやる事自体は以前と大差ねぇ!っていうより”前より楽な依頼”となりゃ、達成も余裕。

 後は”実績に基いて勝手に仕事は舞い込むようになる”って訳だ。

 こうしてエードランドガイストは、駆け出しの情報屋としては異例の速さで、その名前を裏社会で広めるに至った。


 そしてエードランドガイストは、裏の情報屋って仕事の特性上、不当に得た汚ねぇ金の話も耳に入る事が多い。

 だから汚ねぇ金の出所を知り、その金が不当に誰から得た金だってんなら”奪って本来の持ち主の元に返す!”

 そんな義賊の真似事も副業として始めたんだが、この事を、マリアが信頼している割とマトモな考えも持った貴族達に、裏からこっそり伝え始めるた。

 するとエードランドガイストの義賊行為は、一部貴族達に大いに評価され、義賊行為を評した一部の貴族達は、表には出しはしねぇが最下級地域の復興に手を貸すようになった事で、少しずつだが過去に中断され、放置され続けていた土地の整備が始まり、食料、仕事、ライフライン。

 今まで改善の兆しすら見えなかった全ての事が、改善され始めた。

 そう、かつてこの国に見捨てられ、最下級地域と定められた場所は、かつてエードランドと呼ばれた頃に再生され始める。

 故郷が蘇って行く姿を目の当たりにして、漸く自分が追い求めていた物を…いや、やっと「夢の一歩を踏み出せたんだな」

 この時俺は、心から初めてそう思えた気がする。


・・・


 そして更に月日が流れ、マリアがこの地域に潜伏してから8カ月経ったある日。


「…オギャー、オギャー」

「あぁ…私の可愛い赤ちゃん…生まれてきてくれて、本当にありがとう」


 この地域の多くの人間達に見守れながら、マリアは娘の「クリスティーナ」を無事に出産した。

最後まで読んで頂き、ありがとうございました。

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