ある魔法使いとかつて居た場所
マリア達と共に、最下級地域の中心部を目指して進んでいると、ようやく俺達の目的地が見えて来た。 俺は一旦その場で立ち止まり
「おい、あそこにある他より外観がしっかりした黒塗りの屋根の建物があるの、分かるか?」
「ええ」
「確かにあの建物だけ、他の建物に比べたら手入れが行き届いているな」
「あれが私達の目指している”闇魔法ギルド”なのかしら?」
「その通り! 正確に言えば【闇魔法ギルド エードランド支部】ってトコか」
「支部? じゃあ本部は何処に?」
「さぁな? そもそも闇魔法ギルドがあるのはこの国だけじゃねぇからなぁ…この世界中を探しまわればどっかに本部はあるんだろうが、本部の場所ってのは闇魔法ギルド内でもトップシークレットの情報扱いだから、恐らくギルド支部長クラスの人間になれば、多少は本部の情報知ってるかもしれねぇな」
「案外、情報管理はしっかりしてる組織なのね」
「まっ、汚れ仕事を受ける以上守秘に関しては、下手な大手企業より厳しく管理してるかもしれねぇな。 なんせ俺にかつて刻まれていた印が、行き過ぎた機密保持の象徴みたいなモンだったしな」
皮肉交じりに、かつて刻まれていた呪印のあった場所を指差して言ってやったが、実際闇魔法ギルドの組織の上層部に関する情報ってのは、ギルドに属してようが全くと言っていい程情報が入ってこないぐらい機密として鉄蹄していた。
というよりは、その事を”疑問にすら思ってなかったヤツ”がギルド内の大半を占めていたからな! なんせ闇魔法ギルドの構成員ってのはロクな奴が基本的に居ない・
例えば生きるのに必死な境遇だった奴や、己の快楽を何より優先する奴だったり、己の目的の為なら平然と人を殺せる奴だったりと、殆どの人間が”自分の事で頭の中が一杯”だったような奴等だった。
何を隠そう俺もその手の人間だったから分かるんだが、とにかく生きる事に必死過ぎて”そもそも本部の事なんざ興味持つ余裕もない”ような人間の集まりだったからなぁ… もう闇魔法ギルドを抜けてから5年以上経ったが、その辺はきっと俺が居た頃と一切変わってねぇだろうな。
「じゃあ目標の確認が終わった所で、これからの行動のおさらいと行こうか」
「まずはゼールがギルドに入って『マリア様と話し合いの場を設けられないか』交渉するのよね?」
「まぁ、一応こっちの事情とマリアの潜伏先を提供してくれた場合の報酬の件は、話すだけ話してみるが、恐らく、っていうより間違いなく俺の話なんざあいつ等”聞く耳すら持たない”だろうから、俺がギルド内で暴れ始めたらフレイとタップがギルド内に突撃して、加勢を頼むぜ」
「分かったわ!」
「任せろ!!」
「まぁ、一悶着起きた時は、俺等護衛三人でも何とか制圧出来るだろうが、もし俺等護衛だけで闇魔法ギルドを制圧出来そうにない場合は…そもそも妊婦にこんな事頼むもんじゃねぇけど、マリア様の出番になるな」
「別に私の事なんだからいいのよ。 それより私の為に三人を危険に晒す事の方が心配だわ…だから私が最初から突撃して黙らせても」
「「お願いですからそれだけはやめて大人しく待っていてください! マリア様!!」」
「…はい」
タップとフレイにそう言われると、面白くなさそうな顔でそう答えるマリアだったが、ありゃまだ懲りてねぇな。
なんせ、この流れを決める時から「自分の事だから自分でやる」とマリアは言い張っていたが、その時タップとフレイから「やめて下さい」と止められた挙句、散々釘を刺されまくっていやがったからなぁ… まぁ、自分から率先して物事を解決しようとする根性は、マリアらしいっちゃマリアらしいんだがな…普通に考えて身重の体の人間に、先陣きって荒事に介入させるような護衛が何処にいるんだよ!
ったく、結婚して子供を身籠ろうが「性質の悪い暴れ馬」は健在とか、ホッントこの女は落ち着く事を知らねぇのかよ… とりあえず暴れ馬が暴走しないように、タップとフレイには手綱をしっかりと握っといてもらわねぇとな。
こうして最後の打ち合わせを終えた後、俺は久しぶりにかつての職場に足を踏み入れるべく、闇魔法ギルドの扉を叩いた。
”コンコン”
「…邪魔するぜ」
俺はドアをノックした後扉を開けると、ギルド内は俺が所属していた頃とほとんど変わっていなかった。
もっとも俺がギルド内に入ってからの空気は、以前より殺伐としてるけどな。
「…おっと、こりゃ以外過ぎる奴のお出ましだ! なぁ、今更どの面下げてココに何しに来たんだ? 裏切りモンのゼールさんよぉ!」
最大限の警戒心と怒りと憎しみが籠った視線と声を向けて来たのは、久しぶりに見たギルドの受付ディルクだった。
「…ちょっと頼みがあってな」
「頼みだぁ?…お前本気で言ってんのかよ?」
「あぁ…だからベンと直接話を付けさせろ」
「…ちょっと待ってろ」
そう言ってディルクは席を立つと受付の奥に移動し、支部長であるベンがいると思われる部屋に入っていく。
そして数分後。
「とりあえず支部長が『話だけは聞いてやる』そうだ」
ディルクは太々しく顎を”クイ”っと支部長室に向け、俺に支部長の部屋に行けと言って来た。
「おう、サンキューな」
俺は闇魔法ギルドの掟を破っているので、正直ギルドに足を踏み入れた時点で襲われる覚悟でココに来た。 だが、まさか支部長ベンが”話し合いに応じる”姿勢を見せるとは全く思ってもいなかったので、今後の展開が”予想より良い方向に進む”ってちょっと期待したんだがなぁ…この後俺は、現実は”そんな甘くなかった”というより【現実はもっと酷かった】というのを、色々と思い知らされる事になる。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
そして新たにブクマしてくれた方、ブクマありがとうございます。




