ある魔法使いの過去と緊急招集
マリアとエーレンブルグ公爵の婚約は大々的に世間に発表され、この国はその話題で大いに盛り上がった。
なんせこの国に三つしかない公爵家の一人と、社交界から魔法の事まで、何かと話題の中心となって今この国で最も注目を浴びている侯爵令嬢の婚姻となれば、誰もが注目せずにいられないのは当然だ。
そして婚約が大々的に発表されてから半年後、マリアは”ブレンナー侯爵令嬢”ではなく”エーレンブルグ公爵夫人”となった。
結婚式は盛大に行われ、誰もがこの結婚を祝福した。 なんせこの二人の婚姻が「国にどんな影響をもたらしてくれるのか?」 誰もがその事に大いに期待して。 もっとも、その期待が良い方向なのか。 悪い方向なのか。 ソレはこの結婚を見届けた人によって全然違ったんだろうがな…
・・・
マリアが結婚して一年以上過ぎた。
マリアは結婚後、全くって言って良いほど研究室に顔を出さなくなった。
そして俺の本来の仕事であるマリアを陰から護衛する事も、全くと言って良いほどなくなったので、俺はすっかり魔塔で研究室に引きこもって研究を続けている、引きこもりの魔法研究者になっていた。
この状況が今後も続くんなら、もう俺とマリアはこれ以上護衛の契約も結ぶ必要も無ければ、俺に決して安くない給料を払う必要もないんだが、アイツは未だに俺に毎月以前と変わらない決して安いとは言えない給料を払ってくる。
まぁ、正直世の中金がねぇと生きて行けない以上、貰える金は貰う! だが自分が一切働いてなけりゃ、金が生まれるように働きかけてもいない金。 そんな死んだ金ってのは、自分を腐らせる金でありそんな金を貰うってのは、俺の主義に反するんだよなぁ…
そもそも俺は、もう十分独立出来ている。 なんせ魔塔の研究室の研究で生まれた副産物の成果によるライセンス料なんかで、生きてく分には十分過ぎる金は入って来ているんだよなぁ。
以前マリアにその事を話し、契約を見直すように相談したが
「またいつ護衛の仕事が入るか分からないから、待機料だと思って受け取っておいて」
なんてまたなんか”禄でもない事”でも考えてそうな意味を含んだ会話を最後に、この話は今の所保留状態だ。
だけどなぁ…俺としては色んな意味でこの状態が続くのは”良くねぇ”と感じているので、良い加減この関係にもしっかりとケリは付けるべきなんだろうな。
(まぁ、あいつもエーレンブルグ公爵との間におめでたになったって話だから、ソレが落ち着いてから本格的にこの話は進めるか…)
そんな事を考えながら今日も研究室でレオナとゾルと共に研究の日々を送っていたが
”バーン!”
「ゼール! 緊急招集です」
「今すぐマリア様の元に向かう。 だからさっさと準備を終わらせて俺等と一緒に行くぞ!!」
「!! フレイ、タップじゃねーか! いきなり何だってんだ?」
突如ドアを豪快に開けて研究室に押し入るように入ってきたのは、護衛仲間であり、仕事の愚痴吐き飲み仲間でもあったマリアの専属メイド”フレイ”と、専属護衛騎士の”タップ”だった。
「詳しくはマリア様の元に向かいながら話すわ!」
「とにかく今は何も言わず来てくれ!」
「あー…分かった。 悪い、俺ちょっと急用で出て来るから、後頼む!」
「は、はい!」
「気を付けて行ってきてください。 ゼールさん」
後輩二人に研究室の事は任せ、俺は仲間に付いて行きマリアの元に向かう。
「…そんで? 久しぶりにあんまり嬉しくない事情で三人揃ったって感じだが、最近鳴りを潜めていたあの”暴れ馬”は、今度何をやらかそうってんだ?」
「”やらかそう”って訳じゃない。 と言いたいのだけど…ちょっと事情が複雑なのよ」
俺の問いに対して、答えにくそうにそう答えるフレイ。 そんなフレイの悩ましい様子を見て
(ああ、こりゃ何時もの悩みの種パターンか…)
それが分かると、まだ詳細知らねぇのに既に頭痛くなってきた…
「…詳しくはマリア様の口から話してもらうとして、とりあえず今マリア様は【相当様はお怒り】になってるだろうから、まずは変に暴れないように宥めるのが先だな」
そういえばマリアは、悪事を知ると何の計画も無しに即刻悪事を働いた奴を成敗しに行こうとするから、俺等三人でマリアを宥めて一旦落ちるかるのが日常茶飯事だった。
そんでそっからどう「相手を追い詰めていくのか?」 その流れを話し合う。 そんで結局計画通りマリアが行動しないから、戦況は良くも悪くも大混乱に陥り、俺達三人はとにかく終始マリアに振り回される。
そんで仕事終わってストレスマックスの俺等三人は、街に一杯飲みに行って愚痴り合ったり次は「どうすればあの暴れ馬を大人しく出来るのか?」 そんんな議題で大いに盛り上がってたな。
ハハハ、ちょっと前まではコレが日常茶飯事で時にはウンザリする事もあったってのに、久しぶりにこの感覚に触れられるが”楽しい”って思うなんて、俺も割と末期のワーカホリックなのかもしれねぇな。
「了解、まぁ、ある意味いつも通りって言えばいつも通りか…」
俺がそう言うと二人は無言で”コクリ”と頷いたが、俺の気のせいじゃなければ二人共ウンザリしてそうな顔をしつつも、ちょっと嬉しそうな表情を見せている気がすんのは、俺の気のせいじゃなさそうだな。
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