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とある闇魔法使いの過去と魔法使い

 マリア・ブレンナーの護衛としての生活が始まった。 そして護衛として最初に雇い主が俺に出した命令はと言うと…


「俺に魔法協会に所属しろだぁ?」

「ええ、その方が今後何かとゼールにも良い事あるわよ」

「嫌、無理だろ! 魔塔は貴族しか入れねぇようなトコで、一般人を受け入れたって話すらないんだぞ? そんな場所が最下層出身の俺を受け入れると思ってんのか?」


 魔法協会、その名は正式名称より本部である建物である”魔塔”と言う俗称で呼ばれる事が多く、各国から認定され支援されている、この世界唯一の正規の魔法の協会なんだが、その実態は【貴族の実力者】しか受け入れないような、偏見主義者の塊しか居ない場所でもあった。

 正直俺はガキの頃、自分が魔法を使えるのを知ってから、一度魔法教会本部である魔塔に出向いて、魔法教会に入れるないか懇願した事があり、俺が魔塔で魔法才能がある事を直接見せた事もあったが、それを見たら奴等の反応は…


「ここはお前のような薄汚い人間が来ていい場所じゃない」


 そう言って俺を門税払いしただけじゃなく、転移魔法で危険な地に俺を放り出しやがったようなクソ集団の集まりで、そんな扱いをされた経緯が俺が貴族を嫌いになった要因の一つを作った奴等だったので、俺は雇い主の提案を心底拒否してやったが


「大丈夫よ。 今からその前例がない前例を作りにいくんだから! そもそもあそこで今私に()()()なんて、協会長の魔塔主ぐらいよ。 それに魔塔主た戦う事になっても、私とゼールが組めば余裕で魔塔主ぐらいなら倒せるわよ」

「…おい、あほ…じゃなくてお嬢様! まさか何かとんでもない事考えてない…よな?」

「そんなに心配しないで! 少し手荒なマネをするかもしれないだけだから。 ね!」


 その言葉を聞いてとんでもなく嫌な予感がしたので、俺は本気でマリアの提案を拒否した。

 だが俺の必死の抵抗も虚しく、俺は引きずられるように魔法協会のドアを再び叩く羽目になる。

 そして色々あったが、俺は晴れて無事魔塔の一員となり、正規の魔法使いとなっただけでなく、その実力が認められ、一般人で初めて魔塔所属の魔法使いでも、相当な実力者だけが名乗る事が許される称号「ウィザー」の称号を得たのだが、その経緯は正直マリアに付き合わされ…いや、マリアと一緒に暴れて渋々魔塔が出した……いや、勝ち取った称号であり、結果だけ見りゃある意味マリアの目指す事に繋がる【初めての第一歩】だったのかもしれねぇな。


 こうして「正規の魔法使い」という肩書を得た俺は、堂々とマリア・ブレンナー侯爵令嬢の護衛魔法使いとして働き始める事になったが、ここからが真の激動の始まりだった。

 というのも、俺の仕事の護衛と言うのが”マリアが危険な場所に人知れず突っ込む時”に、セットで付いていく危険な仕事がメインだった。


 ちなみにある意味護衛仲間でもある、マリア専属メイドのフレイは、侯爵家でのお世話係兼最も身近な護衛だ。

 そしてもう一人の護衛仲間である専属騎士のタップは、社交界や式典など公に護衛を伴う必要がある場合の専属護衛や、侯爵邸での護衛と言った具合に、言うならば表の護衛だな。

 そして俺は陰で見守ったり、表立った活動ではない裏での活動時での護衛を担当する影の護衛ってトコだ。


 といった感じで、それぞれ用途別の護衛を担当しているのだが、正直俺もフレイもタップも、あのじゃじゃ馬…いや、あれは誰にも制御出来ねぇ【性質の悪い暴れ馬】だな。

 要は”暴れ馬に散々手を焼かされてる者同士”という共通の事で頭を悩ませる、同じ悩みを抱えた者同士として、思った以上に早く打ち解ける事が出来のは、正直意外だったな。

 まぁ正直に言えば、あんな暴れ馬に毎度振り回されてりゃ、嫌でも愚痴の一つや二つ零したくもなる。 そうなりゃ当然仲間意識が芽生えて、しょっちゅう飲みに行くようにもなるわな…

 要はどんな経緯であれ、まさか最下層出身の俺に【一般人の仲間】が出来るなんて夢にも思ってなかった! って話だ。


 ちなみにどうして俺達護衛チームが、俺達の雇い主であるマリア・ブレンナーお嬢様の事を【性質の悪い暴れ馬】と評しているのかって?

 正直いって俺もマリアと一緒に仕事するまでは、アイツは”馬鹿でじゃじゃ馬な侯爵令嬢”だと思っていた。

 だが実際一緒に仕事して分かったのは、マリアはそんな単純な言葉で言い表せない【とんでもない侯爵令嬢】だった! って事だな。

 正直に言えば、マリアがやってる事や考えその物は、俺からしても一見馬鹿げているように見えるモノが多いんだよな。

 だが、一件周囲から見れば無茶苦茶に見えるマリアの言動や行動は、ちゃんと”マリア自身の目的に繋がる事”を常に見据えた上での発言や行動である事が、良く分かってくる。

 例えばアイツが社交界に出れば、その容姿は老若男女問わず魅了するように着飾り、言葉遣いから作法、オマケに話題まで多くの者に好感を抱かせる話術で、多くの人間を魅了していきやがるから、マリアは社交界で多くの味方を持つ為に必須だ。

 そこんとこはマリアも良く分かっていやがるから、上手に振舞ってんだろうな。


 更にマリアは、ブレンナー侯爵家の管理する領地民に対しても、真摯に接する。

 だからマリアは、領地民からも大人気で、領地民からの「マリア令嬢の支持率は100パーだ」って言われても、本気で納得出来るレベルで領地民からも慕われているのも、それが”自分のやりたいことを上手くやり遂げるのに必要”だからと分かっているからだ。

 そしてそんなマリアの事は、マリアの両親事であるブレンナー侯爵夫妻からすると、目の上のたんこぶ状態なんだが、これは正直領民からも世間からもそこまでブレンナー侯爵って”評判良くねぇ”から、自業自得な部分もある。

 それでも、ぶっちゃけ親であり現当主より世間から人気ある侯爵令嬢なんて、ブレンナー侯爵からすりゃ色んな意味で頭痛の種でしかねぇのさ…

 マリアの親や俺等護衛係からすりゃ、マリア・ブレンナーってのは【トンデモ令嬢】であっても、世間からすりゃ【憧れの令嬢】

 つまりマリアにそれなりに近い人間からの評価は、何とも極端な二面性を持っているが、それが厄介だけど魅力でもある何とも不思議なお嬢様って所か?


 そして更にマリアの性質が悪い所は、悪い噂を聞きつけると即現場にすっ飛んで行って、噂の大元を叩き潰す所だった。

 例えばだ、どっかの貴族が初めた違法賭博、人身売買、美人局、違法薬物…その他諸々の、様は違法行為ってモンをマリアが嗅ぎつけりゃ、マリアは即刻潰しかかる。

 ハッキリ言ってアイツに仕えた内の一年間だけ数えても、一体どれだけの表沙汰に出来ない違法取引現場を潰したのか…数えたらキリがねぇんだよなぁ…

 要はマリアが【悪】と定めた事に対する噂を聴きつけりゃあ、アイツは直ぐにソレに関する情報を、ありとあらゆる手を使ってかき集めて、悪と定めた者の元に向かう。


 コレだけ聞けば、正義の味方みたいに聞こえるかもしれないが、実際はそうもいかねぇ!

 なんせコレがまた突発的だったり、無計画かつロクな根拠もねぇのに突っ走たりで、付き合わされる側としては、たまったもんじゃねんだよなぁ…なんせ危険目に遭った数が、古巣の闇魔法ギルドで働いて頃より多いんだぜ?

 世間的に見ればブレンナー侯爵家で働くってのは、有名所の超ホワイトな職場なハズなのに、実際は”以前属していた誰もがブラックって感じる職場より、よっぽど実務がブラックな職場”だなんて、本気で笑えねぇんだよ!

 更に質の悪い事に、アイツは攻め入った場所で、どうゆう訳か必ず悪事の証拠を掴みやがるから、この王国における上位に位置する奴らの裏事情をある程度知ってる俺からすると、あの女のやる事はある意味本当に【性質が悪い!】 この一言に尽きる。


 ハッキリ言っちまえば、一部の違法行為や事業ってのは、大貴族や王族が一枚噛んでて、あえて大物達が見逃しるモンだって幾つもある。

 そして()()をマリアが暴いてくれるのは非常に困るが、マリアのやってる悪党潰し自体は合法であり、筋も通っているやり方でマリアが証拠を突き付けて来る以上、悪事を働いているこの国の大物達は悪事もマリアも”見逃すに見逃せない”んだよなぁ…

 オマケにマリアは、世論が味方に付くように上手く立ち回っている。 そうなりゃ世論を利用してマリアの事を非難するなり、失脚さえようにも、そう簡単に悪党達も出来ない状況作ってるからなぁ…オマケにマリア本人も魔塔屈指の実力者であり、下手な刺客を送ろうもんなら刺客は俺のように返り討ちにあうだろうし、最悪刺客を送った本人の首が閉まる可能性がある。

 俺がついマリアに、マリアの暗殺の依頼した奴の名を、つい”ポロ”っと口に出しちまったら、依頼主を即刻ボコしに行った挙句、出すトコに容赦なく証拠とセットで付き出しやがった。

 そして俺に暗殺を依頼した奴は、お家が取り潰しになって今頃路頭を彷徨ってんだろなぁ…まぁ、こんな危ない橋ばっかり渡ってんだから、マリアどっかの権力者から恨まれて、暗殺依頼の一つや二つ出すのも当然っちゃ当然だ。

 

 結局の所、マリア・ブレンナーという人間を端的にこの国の視点で言い表すなら


『社交と世論の花であっても、この国の情勢を操作する側からすりゃ性質の悪い制御不能の暴れ馬でしかない』


 ってトコだろうな。 最もそんな人間に付いて行くのは、正直心身共に休まらない時だらけで大変だった…だが、それでも不思議とそんな生活が”嫌じゃねぇ”って思うのは、きっとマリアの下で生きている時は、最下層で生きていた時と違って「本当に充実していて楽しかった」からだ! って事に俺が気が付くのは、もうちょっと先の話なんだけどな。 

最後まで読んで頂きありがとうございました。

そしていつの間にかブクマ登録して頂いた方、本当に登録ありがとうございました。

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