魔力を扱うとは
「じゃあ今からライトにも使える魔法を教えてやるが、その前に問題だ!
お前等、人間が手足を動かす時、どうやって動かすのか知ってるか?」
「えっと…」
「動けと思ったら動く!」
「…まぁ、ある意味間違っちゃねぇが、ガキの知識じゃその程度の認識か」
先生はそう言った後、魔法で紙を取り出して広げる。
そこには抱えていたのは人の絵が描かれていたけど、絵の内容が…
「先生…何これ?」
「…気持ち悪いよ?」
「うるせぇ! いいか、人間の体ん中は実際こんな感じになってんだよ! それに今からやる事に絶対必要な知識だ。 だからどんだけ気持ち悪いもんだろうが、今から教えることは絶対頭に叩き込め!」
そう言った後、先生の説明が始まる。
いいか、コッチは人間の体の中に張り巡らせられた神経系を現したもので、コッチは全身を動かす筋肉を現した骨格筋、そしてコレが体を支える骨格だ」
俺達が見た紙には、人間の体の中を描いた人体図が描かれていた。
正直この頃の俺とクリスには中々人体図という生々しい物は衝撃的な代物であり、6歳児に生理的嫌悪感を抱かせるには十分過ぎるインパクトしかなかったので、正直この日の晩御飯は中々喉を通らなかったなぁ…
「いいか! 人が手足を動かせるのってのは、マズ頭から手足を動かすように指令を出す。 そしてその指令を手足に伝える運動神経って部分があって、その神経から伝わってきた情報を元に、筋肉と骨が動く。
これが人の体が動く大まかな流れだ! 分かったか?」
「「…はい」」
「はぁ…人体図初めて見たぐらいでテンション落としてんじゃ、先が思いやられるぞ! 特にライト」
いくら人体構造に関して理解を深める事が、この先に繋がることでも、こっちはショッキングな物みたせいでテンションなんて上げられない。
なんせさっき食べたクッキーとお茶を、リバースしたいぐらい気分が悪くなってきたぐらいだ。
だけどそれを何とか我慢してるこの状況を色々察してほしいと心底この時思った。
そして以外にも俺より気が弱いクリスは、人体図に嫌悪感を示したけど、俺よりは平気そうだったので、ちょっとこの時見直したんだよなぁ。
「そしてこれからが最も重要なポイントだ。
実はな、俺達はさっき説明した人体構造以外にも『ある物』を使って、体を動かしている。
それが体の中に流れる魔力だ!」
「そうなの?」
「あっ、先生が前に『常に魔法を使ってる』って言ってたのって、体を動かすときに魔力を使ってるからってこと?」
「へぇ、中々察しが良いじゃねぇか、クリス。 お前の言う通りだ。 人間ってのはな、魔力で体を動かすサポートを無意識の内にやってる。
そして覚えておけよ。 魔法ってのはそもそ『魔力を使う方法』ってのが本来の意味の言葉だ。 だから本来なら魔力を自在に”コントロールする”のも立派な魔法なんだよ」
先生が「誰でも使える魔法がある」って言ってた意味がどうゆう事なのか、先生の説明をきいて何となくだがこの時分かってきたので、この話を聞いて初めて「俺も魔法が使える」って本気で思い始めたんだよなぁ。
「さて、そろそろ本題に入る。
これからお前達がやるのは、魔力を意識的に使って体を動かせるようになる事だ」
「「はい」」
「そしたらまずはだな…お前等、ちょっとそこからここまで全力で走って来い!」
そう言われたので、指示通り俺とクリスは全力で指示された場所を走る。
「はぁ…はぁ…」
「先生、走って来たよ」
大した距離じゃなかったので、俺は走った後も全然余裕があった。
だけどクリスは、俺と違って軽く息を切らし、俺より少し遅れて走り終わる。
「よし、普通に走ったら”こんなもんだ”ってのが分かったな。 じゃあ次は、コイツを足に付けろ」
そう言って先生が俺とクリスに渡して来たのは、ベルトの付いた魔力流出測定器だった。
そして、先生に言われた通りベルトを使って測定器を足に取り付ける。
「測定器に、魔力を送れ」
「はい」
「んっ…コレで良いの?」
「二人共出来てんな、じゃあ一時間そのままな」
「うへぇ…」
・・・一時間後
「よし、そろそろ良いだろう」
先生から合図があったので、足の上に乗せた測定器に魔力を流すのを止めた後、一気に疲れが襲って来た!
なんせ今までやった中で一番キツイ練習だったので、俺はその場に座り込んでしまう。
「ライト君、大丈夫?」
「だっだいじょう…ぶ」
「そう心配すんな。 指令を出す脳から最も離れた場所で魔力コントロールするってのは、掌で魔力をコントロールする時の数倍疲れるのが当たり前だ。
だから慣れない内は疲れが出るのは当たり前だ。
「…そうなんだ」
俺は息切れ切れにそう答えたが、ふと先生の言ったことにある【矛盾】が起きている事に気が付く。
「じゃ、じゃあ何でクリストファー君は全然平気そうなの?」
「あぁ…コイツお前を比べんな。
コイツはお前の思っている以上に、魔法を扱う事に関しては恵まれてるだけだ。
ハッキリ言ってこればっかりは、生まれ持ったモンだからどうしようねぇ。
だから今『クリストファーと張り合おう』なんて馬鹿な考えはするなよ!」
「…」
「とりあえずライトは一旦休め。 体力回復したら次はお前の番なんだからな」
先生はそう言った後、俺を木箱の上に座らせ、クリスに説明を始めた。
「いいか、クリストファー。 さっき足に乗せていた測定器に魔力送るのと同じ感覚で、足の裏に魔力を送るイメージを作れ」
「はい」
「どうだ? 足の裏に魔力を集めれた感覚はあるか?」
「はい」
「よし、だったらさっき走った場所をもう一度走って来い」
クリスは先生の指示通り、さっき走った場所と同じルートを走り出すんだが、それを見ていて思わず
「え!? はっっっやぁ!!!!」
そんな声を上げてしまうぐらいクリスは、早かった!
明らかに同年代の子とは思えない速さで走り、さっきと違って涼しい顔して先生の元に戻ってくる。
「どうだ? 体内での魔力操作ってのも案外馬鹿に出来ねぇだろ」
「うん! 凄いね先生!」
笑顔でクリスは喜んでいたが、それを見ていたこの時の俺は、ちっとも面白くなかった。
なんせこの時の俺達の状況は、クリスは先生に次教えられた事を直ぐに出来るようになってどんどん先に進んで行くのに対して、俺は中々教わった事が出来ないから次に進めない。
コレは魔法に関する能力の差だといくら教えられても、その扱いの差が不公平だとしかこの時は思えなかったので
「…またクリストファー君ばっかり先じゃん」
そんな悪態を付かずにはいられなかったし「魔法に関して友達に大きく遅れをとっている」その事が、一人だけ置いてきぼりにされているようで、とにかく気に食わなかったので
「先生! ソレ俺にも早く教えてよ」
大声でそう叫びながら先生とクリスの元に詰め寄って、少しでもクリスに追いつこうと必死になった。
「ライト、お前はまだ休んどけって言っただろうが!」
「でも、でもクリストファー君ばっかりズルいよ! どんどん先に進んでるし」
「はぁ~…だからお前とクリストファーを比べるなって言ってんだろうが! 馬鹿ガキが!!」
この時初めて先生本気で怒られたので、体を”ビク”っと震わせ委縮した。
だけど意地になっていた俺は、一切引く気はなかったので、内心ビビりながらも先生の服をガッチリ掴んでから
「先生が教えるって言うまで…離さない」
こ俺なりに、先生の言う事に反抗する意思をこうして示した。
「はぁ、ったく、コレだから馬鹿は…分かった分かった。 教えてやるけど、出来なくても文句言うなよ!」
かなりキツめに言われ、更に怯えながらもコクリと頷いて、意地でもクリスに追いつこうと必死だった。
「じゃあ、さっき足に付けた測定器に」
「足の裏だけに魔力を送って走ればいいんでしょ!」
先生がクリスに説明していた事は聞いていたし、何より「自分だって出来るんだ」って事を証明すべく、俺は先生の言葉を最後まで聞こうともしないまま、クリスがやったように足裏に魔力を集めて、全力で走り出した。 が
”ボゴォッ!”
(え!?)
地面を一蹴りした後、次の足は地面を付かず空を切るが、それもそのはず。 なんと俺の体は最初の一蹴りで宙に浮いてしまっていたからだ!
何でこんなことになったのか? それさえ分かってないので頭の中は既にパニック状態。
オマケに姿勢は地面に頭から叩きつけらる格好で、地面に向けて一直線で、もうどうにもならないと思った瞬間。
「こっっっの、大馬鹿野郎がぁ!」
俺が地面に激突するより先に、宙を浮いている俺を捕まえてくれたのは、ゼール先生だった。
「ったく、魔力流し過ぎなんだよ阿呆が! そもそも人の話もちゃんと聞かねぇで、無茶するんじゃねぇ! 馬鹿野郎が!が!」
「ご、ごめんなさい」
「ったく、謝るぐらいなら人の言う事最初から聞けやぁ! 俺が助けなかったら、危うくお前大怪我するとこだったんだぞ」
「・・・ごめんなさい」
「…おい、今回は謝って済むレベルで終わったし、俺の助けが間に合ったからまだマシな方だ。
だがこれから魔法を覚えて行くつもりなら、コレだけはしっかり頭に刻んどけ!
魔法を扱うってのはな『正しい知識と扱い方を知らなきゃ自分だけじゃなく周りも危険に晒すアブねぇモン』なんだよ。
「・・・はい」
「はぁ、これに懲りたら、二度と俺の指示が終わる前に魔法を使うとするんじゃねぇぞ?」
「…」
こうして俺は先生にしこたま怒られる事になった。
そしてその弊害でクリスもセットになって怒られたので、俺は自分のやった事を大いに反省する事なる。
そして先生のキッツいし長いしで、もう二度と聞きたくなくなるような説教が終わった後
”パタン”
「おい? ライト!」
俺は気が抜けたのと、元々大した量もない魔力を使い過ぎた反動で、その場に倒れ込んでしまった。
そしてコレが原因で、しばらくはクリスに魔法を使う時は過度に心配されるようになり、その都度申し訳ない気持ちになるし、先生には何かと小言を言われるようになるしで…それはもう肩身の狭い日々がしばらく続く事になる。
最後まで読んで頂きありがとうございました。




