誰でも使える魔法
”キンコーン”
本日の学園における授業が、全て終わった証のチャイムが鳴り響く。
授業が終われば後は帰りのホームルームだけ。 この日の俺は、何時もなら十分ぐらいで終わるホームルームがやたら長く感じた。
そしてホームルーム終わった直後、俺はクリスと一直線に、昨日あの人と約束したあの場所に向かう。
この時は、あの場所に向かう道中クワクとドキドキで、胸の中が溢れ帰っていた。
そして約束していた本通りの裏にある路地に辿り着けば、ゼール先生はそこにいた。
「ちゃんと来たな」
「「はい、ゼール先生」」
「…だから先生呼びは、止めろっていってんだろうが! 次先生って呼んだらシバくからな!!」
「「ごめんなさい、ゼールせ…さん」」」
「……じゃあ、今日から早速お前等を俺が鍛えてやる訳だが、その前にお前達の魔法適性検査の結果を教えろ」
「はい」
ゼールさんに言われた通り、俺とクリスはゼールさんに学園で測った測定結果を伝える。
「クリストファーが魔力量、質共にBで、操作がD。 んで金髪の方が量、質がEで、操作がC。
まぁ、おおむね俺の目測通りか…そう言えば金髪のガキ、お前の名前まだ聞いて無かったな。 何て名だ?」
「ライトだよ。 ライト・トリファー」
「あぁ、成り上がり貴族の中でも割とマトモな考え持ってる家の子供か。 どうりで時々貴族らしくねぇ事を言う訳だ」
「え、そうなの?」
「まぁ、もっと色んな人間と関わって、もっとデカくなったら嫌でも解るだろうが、変に気にすんな。
むしろ良い事だ!
そんな事よりライト。 ハッキリ言っておくぞ!と言うより、既にハッキリ言われてんだろうが、お前は世間の言うような魔法を使えるようになる事は”マズ無い”と思っとけ!」
「…やっぱりそうなんだ」
ゼールさんから教われば、少しでも「魔法が使えるようになるかも」なんて期待していた部分があるので、こうもハッキリ「使えない」って言われるのは、結構堪える物があった。
「あぁ゛ぁ”~ったく! これくらいでしょげてんじゃねぇよ!!
良いか、あくまでお前は『一般的に魔法』って言われてる魔法が使えないだけで、魔法その物が使えない訳じゃねぇんだよ!」
「え、そうなの?」
「ああ、一回しか説明しないから良く聞いとけ。
そもそも魔力ってのは、人間誰しもが持っている物だってのは知ってるよな?」
「は、はい」
「実はな、人は誰でも常に魔力を使って生きているから、広い意味で言えば人は”常に魔法使ってる”ようなもんなんだよ」
「え~、知らなかったぁ…」
「しかしだ、実際の所魔法を使える定義ってのは、あくまで『魔塔』って呼ばれる期間が定めた基準に達していないと、魔法を使えるって認識が根付いちまってる。
だから、今の世の中で魔法が使えるのかどうかの判定ってのが、魔塔が”コレは魔法です”って認めた魔法を使えないと【魔法を使える】って認められないだけなんだよ。
つまりライトは”魔法って認められてない魔法”なら、使えるようになるって訳だ」
この時ゼールさんが話してくれた事は、当時の俺達にとっては小難しい話が多くて、その内容は全て理解出来てはいなかったけど、とりあえず魔法適性が低い俺にも”使える魔法”があるという事だけは、この時の俺でも何となく分かった。
「じゃあゼール先生、僕はどんな魔法が使えるんですか!」
「だから先生って…はぁ、ったく最近のガキ共は人の話もロクに聞けねぇのかよ?
もういい、いちいち指摘するのも疲れてきた……好きに呼べ」
「「はい、ゼール先生!」」
ゼール先生は、どれだけ注意しようが、俺とクリスがつい「先生」と呼んでしまうので、俺達に先生と呼ぶのを止める事を諦めたようだが、俺達としてはゼール先生は既に学園の先生より”立派な先生”だと思っていたので、止めようにもつい口に出てしまう。
「はぁ…それよりお前が使う魔法についてだが、そうだな簡単に言えば」
そう言いながらゼール先生は、道端に落ちている小石を拾い上げた。
「なぁ、お前等。 俺がコイツを指の力だけで砕けると思うか?」
ゼール先生が拾い上げた小石を親指と人差し指で摘まんで、そう尋ねてきた。 もちろん俺もクリスも小石でだろうが、人の握力で道端に転がってる硬い小石を潰せる人なんて、見た事も聞いた事もないから二人揃って”ブンブン”と首を横に振って「NO」と答えた。
「そう思うだろうな、確かに握力だけ込めたって…イテテ…俺の指に小石が突き刺さって俺が痛いだけだ。 そもそも俺の力じゃこの小石は決して砕けねぇ。
だがな…こうすれば!」
”パキン!!”
「小石は指で砕ける!」
「「わぁ!!」」
なんとゼール先生が指で挟んでいた小石が、粉々に砕け散った。
最初は小石に力を込めて割ろうとしても、ゼール先生は痛そうにしてたのに、何をしたのかはサッパリ分からなかったけど、今度はまるでパンくずを潰すかのように、簡単に小石をゼール先生は二本の指で砕いてしまった!
だから俺達は素直に言った。
「「ゼール先生の力すごーい!!」」
「おい…お前等俺の話聞いてたか? だから俺の力じゃ小石は砕けねぇっていってんだろうが!」
「え~でも~」
「先生指だけで砕いちゃったじゃん」
「そんなの魔法じゃないよ! パワーだよ!!」
俺とクリスは、ゼール先生が”力尽くで小石を砕いただけ”だと本気で思っていたので、ゼール先生「が自分の力で小石を砕いた」って言っても、全く信じてなかった。
「ったく、人の説明をちゃんと聞いてねぇ馬鹿野郎共が! さっき俺が指で小石を砕いたのが、本来なら誰でも使える魔法なんだよ!」
「「…どうゆう事??」」
「いいか、あくまで小石を砕けたのは俺の力じゃねぇ。 俺が小石を砕けた理由は、俺の指先にある魔力コントロールして、俺の指の力を増大させると同時に、小石に触れてる皮膚を魔力で保護したから、小石が砕けたんだ!」
この時説明してくれた魔力理論は、今なら簡単に理解出来る。
だが当時の俺達は、この説明を聞いてもさっぱり訳が分からないので、口を開けて唖然している阿保面を晒してしまっていた。
そしてゼール先生は、そんな俺達の様子を見て。俺達に魔法を教えるのは先前途多難である事を察したのか
「…クソ、やっぱり他所ガキの御守りなんぞ、気まぐれでやるもんじゃなかったな…」
そう言いながら心底後悔してそうな顔をしていたのを、今でも覚えている。
最後まで読んで頂きありがとうございます。




