第八話
「エレックさん、あれはやりすぎでは?」
「あぁでもしないと、トラウマにならない。それにあれの肉体は強化されているからな」
「……まぁ、十分トラウマになったでしょうね」
「美幼女が可哀想な目にあってて興奮しました」
「感想はいらない」
約一年後。
「よし、治癒の異能も問題ないな」
「……」
「流石に傷つけすぎですかね」
「痛いだけだろう、死んで無いなら問題ない」
一年間、エレック達は計画を進めてきた。
結果として、現在実験番号0番は、『感情操作』、『念動力』、『ベクトル操作』、『治癒』、の四つの異能を植え付けられていた。
どれもしっかりと定着し、0番もそれなりに扱えるようになってきていた。
「……」
0番は部屋の隅で膝を抱えて座っている。
「……」
今の彼女は一年で長く伸びた髪に、繭のように包まれていた。
「0番、来い」
いつも通り部屋の扉が開き、彼女は呼ばれた。
「……」
0番は何も言わずゆっくりと立ち上がり、呼ばれた方に動き出す。
彼女の身長も少し伸びた、大体小学一年生、ぐらいだろう。
「……ここに寝ろ」
「……」
命令された通りに彼女は動く。
その様はもはや意思が無い機械。
この一年で彼女の心は壊れた。
常にぼーっとしており、瞳は光を映していない。言葉も滅多に発さなくなり、意識があるのかと不安になるほどだ。
だが今でも、彼女の体は微かに震えていた。
「今日は最後の異能を植え付ける」
「どんな異能なんですか?」
「異能奪取の異能だ」
エレックは一つの瓶に入った液を見せる。
「チートじゃないですか、どうやってそんなものを」
「私の異能と少しの寿命を代償にして得た」
「相当覚悟決まってますね……」
「当然だ」
元々エレックは人生をかけている、今更寿命や自身の異能が消えてもなんとも思わない。
「今回はこの液体を一度注入するだけで良い。だが定着には数日かかり、その間強烈な激痛が走る。死にはしないだろうが、相当暴れるはずだ、拘束が外れないよう確認しろ」
「了解です」
そうして最後の異能を0番に植え付けるため、その液が入った注射器を彼女に刺し、勢いよく液を注入する。
「――う゛うう゛ぅッ!!」
その瞬間0番は目を大きく開き呻き声を上げ始めた。
彼女を拘束している拘束具が不気味な音を立てる。
「今まで、意識があるのかどうかみたいな状態だったのに、今ではちゃんと意識があるのが分かるぐらい元気に動きますね」
同業者の一人は、苦しみ暴れ、目から涙を流している彼女の顔を眺めながらそんなことを言う。
「これ大丈夫なんですか? 色々体をいじった時の何十倍も苦しそうですけど」
「……死にはしないだろう」
「何か含みのある言い方ですね」
「……精神が死ぬ、廃人になる可能性はあるかもしれないが」
「それ大丈夫なんですか?」
「予定より順調だからな、予算はまだ少しある、精神が死んだら新しく作れば良いだけだ。それに今でも死んでいるようなものだろう?」
「あ、それもそうっすねw」
部屋には、計画が驚くほど順調に進み余裕が出てきたエレック達の笑い声と、実験番号0番の苦しみ、もがく呻き声が併存していた。




