第七話
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「0番、来い」
「い、いや……!」
「はぁ……」
「っ! は、はなしてっ!」
「うるせぇ」
「い、いたっ」
た、叩かれた。いたいよぉ。
「う゛う゛ううぅっ」
「泣くな、煩い」
なんで、急にいたいことするの?
「念動力の異能をあの箱に使ってみろ」
「……はい」
逆らったらだめ、痛いことをされる。
「よし、問題ない」
うまくできた、痛いことはない。よかった。
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「念動力の定着は前回ほどではないですが少々時間がかかりましたね、けど習得は早いです!」
「あぁ、想定以上だ。やはりあの体は異能の定着に適している、あれだけ作り替えた甲斐があったというものだ」
実験番号0番の意識改ざんから二か月程が経った。
この二か月の間に、0番は新たに念動力の異能を扱えるようになり、エレックは満足といった様子だ。
始めの数週間こそ抵抗を見せていた0番だが、一か月もすれば彼女は抵抗をしなくなった。抵抗すればするほど苦しくなると分かったのだろう。
そのお陰もあり、計画は順調である。
「次はベクトル操作の異能だ」
『これがあれば逃げられる?』
「……おっと」
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新しい、異能。
「これがあれば逃げられる?」
いたいのはもう嫌。わたしには感情操作、と念動力、の異能がある。
あの人達は持ってない、なら本気でやれば、ここから出られるかも。
うん、わたしなら大丈夫。もうここに居たくない。
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「脱走でもしようとしているのか」
「丸聞こえですね」
密かに心の内で考えていたことを、口に出してしまった0番。彼女の呟きはしっかりとエレック達に聞こえていた。
「……そうだな、一度脱走させるか」
「え、エレックさん何を言っているんですか?」
同業者の一人はエレックの言葉を聞いて驚いた様子だ。
「脱走の意思をこのまま持たせておくのは少々危険だ、成長した時にでも隙をついて逃げられたら終わり。なら、今未熟な時にわざと隙を作り脱走を失敗させる。そしてその後苦しみを経験させ『脱走に失敗して恐ろしい思いをした』という経験を0番に与える。そうすればそれがトラウマになり、二度と脱走を考えなくなる」
「お、恐ろしいっす」
「合理的だろう? そうと決まれば実行だ、明日大げさに隙を作る」
「引っかかるでしょうか?」
「相手は知能も幼い子供だ、必ず引っかかる」
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「扉が、開いてる……」
起きたら、部屋の扉が開いてた。あと、部屋の外からなにか色んな声がする。
『機械の暴走により、火災が発生。消火活動のため、至急職員は集まってください』
「集まってる?」
よく分からないけど、これって、今なら逃げられるってこと?
「……逃げなきゃ」
「どっち、かなぁ……」
右、左。早くしないと見つかっちゃう。
「うーん、右!」
「おっと、待ちなさい」
「っ!」
見つかった!
こういう時、どうすれば……。
「ふふふ、何を考えても無駄ですよ。さぁ、戻ってくるのです」
ぜったい、戻らない。いたいことはもう嫌。
そうだ、異能を使えば!
「えい!」
わたしは念動力、を使って、道に転がってた箱を白い服の人に当てる。
「ぐわあ、やられた~」
「やった……!」
白い服の人は倒れた。うん、大丈夫、異能があればわたしは逃げられる。
「『でぐち』?」
壁に『でぐち』って書いてる。あとちょっとで出られる?
「はぁはぁ……やった! 逃げられ――」
「る、と思ったか?」
「……え?」
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「……え?」
実験番号0番は唖然としている。
それもそうだろう、逃げることに成功すると思った直後に目の前にエレックが現れたのだから。
「え、えい!」
だが、先程一人同業者を倒したことを思い出し、0番は廊下に置いてあった消火器をエレックへと投げ飛ばす。
だが、エレックはそれを手で受け止めた。そして、まるで無意味だと言わんばかりに消火器を0番に見せつける。
「あぁ、全然効いてないぞ?」
「っ、さっきは効いてたのに!」
「馬鹿だな、お前の異能の対策をしていないわけがないだろう? どんな異能を手に入れようと、お前は逃げられない」
「そんな……」
少しずつ、絶望していく。
「そもそも、これが罠だってことに気が付かなかったのか?」
「わ、わな?」
「ハハハ、やはり馬鹿だ。どうやら先程一人倒したと思っているようだが、あれは演技だ。お前は本気で逃げようとしていたらしいが、こちらはお遊び気分。お前が逃げることなんて分かっていたし、そう仕向けた」
「演技、遊び……」
今まで自分は本気だった、しかしそれはエレック達の遊びの中。
「逃げていいとは言っていない、逃げるなとは言った……さぁ、お仕置きだ」
「い、嫌!」
その後彼女はエレック達ご自慢のお仕置きを受けたのであった。




