第六話
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「半分成功、といったところか」
「意識と肉体のズレは無くなりましたが、一番欲しかった、『研究所で生まれ育った』という記憶が消えちゃいましたね」
「まあいい。元々従順にするための記憶だ、あれぐらいの年齢なら恐怖でどうとでもなるだろう」
実験番号0番の意識と肉体の一致には成功した。だが全てが計画通り、ということにはならず。
エレックはそのことに少々不満があるようだ。
『……』
「怯えてますね」
一人の同業者は0番の部屋を移したモニターを見てそう呟く。
「はぁ、従順にできたら良かったわけだが。予算の関係上、これ以上記憶に関してはいじれないな」
エレックは可能な限り、0番の脳、主に記憶と意識をいじった。
現在、彼女は自身を生まれた時から女だと自覚しており、今の性別に違和感は抱いていないようだが、どこで生まれたのか、自分は何者なのかなどは分からないらしい。
これはエレックの失態であった。
あまりに意識、記憶の改ざんに時間と労力が掛かっていたため、途中で躍起になり、少々乱暴になってしまった。
その結果として0番は大半の記憶が吹き飛び、今に至るのだ。
「だが、これで異能は定着率100%を超えた、しっかり指導すれば使えるようにもなるはずだ」
時間経過によるものか、意識と肉体のズレを治した影響かは分からないが、0番の異能定着率は100%を優に超えていた。
これはエレックにとっては嬉しい誤算だ。
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ここは、どこ。真っ白のお部屋。わたしの名前はなに?
「0番、来い」
「だ、だれ?」
扉が開いた、そこから白い服の人が何人か来てそう言った。
笑ってない、顔が怖い……。
「……0番、お前だ」
「わ、わたし……?」
もしかして、0番ってわたしの名前?
「そうだ、来い」
「わ、わかった!」
よくわからないけど、多分行かないともっと怖くなる。
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「指導し始めて四日目、やっと扱えるようになってきたか」
「知識や思考力が欠如した状態と考えるなら早い方では?」
「それもそうだな」
実験番号0番は、エレック達による四日間の指導で、植え付けられた感情操作の異能をある程度扱えるようになってきていた。
0番は記憶の吹き飛びに知識を、意識の改ざんに思考力を持っていかれており、現在では小学一年生以下と言える頭だ。見た目相応ではある。
同業者が言うようにその知能の状態で、異能を四日で扱えるようになっているのは早い方である。
「感情操作はこれからも指導を続けるとして、次の異能に行く」
「おお、やっとですね!」
感情操作はしっかりと0番に定着した、あとは練習するだけ。
そのためエレックは次の異能を彼女に植え付けることにした。
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ここはどこかわからないけど。白い服の人たちは悪い人じゃないみたい。
「実験番号0番、来い」
「は、はい!」
こんな感じで、あまり笑わないけど、痛いことはしてこない。
いのう?ってものをわたしは持ってるらしくて、今はそれを使えるようにお勉強してるんだって。
今日もまた同じお勉強をするのかな?
「特に異常はないですね」
「ねぇ、今日はお勉強しないの?」
今日はいつもと違う場所だった。動けない、なにをするんだろう?
「……それでは始めましょうか」
「ねぇ、今日は何をするの? お医者さんごっこ?」
なにも言ってくれない、なんかこわいよ。
「?」
口に何か入れられた。
かたそうなおててが何か持ってる、あれなんだろう?
近づいて――。
「ん゛ん゛んんん!?」
(い、いたいっ!いたいっ!)
「う゛う゛ううぅぅ゛!!」
(いたい、くるしい――)
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「すっかり怯えっちゃってますね」
「前までは異能の練習だけで、痛みの出ることはしてなかったからな」
「なんか、美幼女が可哀想な目にあってるの、興奮する」
「わかる」
「お前らな……」
もうただの恐ろしい変態集団である。




