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成人男性、少女と成る  作者: ぬい葉


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5/12

第五話

    ■



「それでは始める」


 今日もこの時間がやってきた。慣れてきたけどまだやっぱ痛みは感じから嫌いだ。


 今日もアームが近づいてきて……。


「ん!?」


 ってなんか俺の頭狙ってない? えっとその手に持ってるのは。


 ドリル?


 ドリルが音を鳴らしながら近づいてきて――。


 そこで俺の意識は途切れた。





「ん……ここ、は……」


 目が覚めた。

 ここは、見慣れた部屋。

 確か、頭にドリルが近づいてきて……気を失ったんだっけ?


「あれ?」


 なんか視界が、ぼやけてる。


「いった……」


 俺は立とうとしたが、気がついたら転んでいた。


「だめだ……寝よう」


 そうだ、こういう日もある。それにあいつらのことだ、新しい薬でも打ち込んだんだろう。

 寝よう。


 寝てる間は奴らのことも忘れられる。





「あ、れ……」


 起きた、だけど視界はまだぼやけていた。

 新薬効き過ぎじゃない? もしかして殺す気?


「0番、来い」


「う、動けない」


 いつもの奴が来た、んだろう、よく見えないけど声で分かる。


「……そうか」


 動けないと言ったらなんか運ばれた。そこまでしてやるのかよ。





「想定通りだ、上手く行ってる。続けるぞ」


 いつも通り手術台に拘束された時、そんな言葉が聞こえてきた。

 これは想定内なのか、今度は何をするんだ。


 脱出の練習とか計画も練りたいから、早くなんとかなってくれ。





 え、っと、ここはどこだ。


 あれ、声に出したはずなのに聞こえない、目はぼやけたままだし。


 あれ、俺って何してたっけ? あぁ、誰だっけ俺。


 あぁそうだ、俺は■■■■だ。確かよく分からない集団に攫われて人体実験を受けてるんだ。



(ハッ! お、俺は一体……)


 そこで俺はハッとした。

 何が『俺は何してた』だ。いつも通り体をいじくり回されてるじゃないか。


 今回も多分頭だった。これ、あいつら相当なことをしてるな。


 このままだと不味い気がする。



 なんかこのままだと、自分が自分でなくなりそうな……おかしくなる。


 早く脱出しなきゃ、でも視界がぼやけて上手く体が動かせない。


 クソ。



    ■



「これまでにも割といじっているが、まだ元の形を保っているか……」


「ですが、問題なく意識は崩れていっています」


「あぁ、意識が固い以外では想定外のことは起きていない。このまま記憶もいじっていくとしよう」


「仮の記憶も流し込むんですよね」


「あぁ、この研究所に生まれ、子供の女として今まで生きてきた、なんていう記憶だ。0番の意識と深く結びついている男の生活の記憶も抹消する」


「おっかねぇっす」



    ■



 上手く思考が回らない。もう何回脳をいじられた?


 よく分からない。





 おれは、なんだ。わたし、俺は誰。


 わたしはここで生まれた、わたしは女の子。違う、おれは成人済みの男だ、あの家族の元に生まれた。よく分からない記憶を作るな。


 もう、あきらめるべき。違う、ここがどん底なだけで……このさきには、あかるいじんせいが。


 あけない夜はない、って。


 生きてて、よかったって。





『わたし、このぬいぐるみが欲しい』誰? おれはそんなこと言ってない。



『この研究所の外ってどうなってるの?』


【外はまだ行ってはいけない。別におかしいことではないぞ】


『そうなんだ、みんなこの痛みを味わうんだね、別におかしくないんだね!』


 い、いや。おかしい。わたしは、いや俺は働いてて、こんな実験おかしくて。

 いたいのは普通じゃなくて。


【普通さ、0番。君はここで女に生まれた、そして兵器だ】


 だから、おれは男。



【しぶといな】


 かきまわされる。おれの記憶はどれ?



『痛い、けどこれは普通なんだよね』


 ちがう。


『わたしはここで生まれた』


 ちがう。


『パパたちはここの人たち』


 ちがう。





『俺は男。大丈夫、いずれ報われる』

『俺は成人男性のサラリーマンだ。大丈夫、開けない夜は無いって思って今日も生きてる』


 ……ちがう。





 ――何かが破裂した音がした





―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――





「ここは、どこなの? わたしはだれ?」


 わたしは、だれ?

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