第三話
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「づぅ……体が、重い」
あれからどれぐらい経ったんだろうか?
数か月? 数年? 数週間? 曜日感覚なんてとっくに狂ってる。
……それよりも、最近体が重く、怠いのが一番の問題だ。前までは終わった後、少し痛みが残ったり、眠くなったりしてただけなのに、一体今度は何をしようとしてるんだ。
「……あぁ、髪が邪魔だ」
しばらく髪を切っていないからだろう、髪はもう肩に付きそうだ。ここから脱出出来たら、さっさと切ることにしよう。
「この怠さ、どうにかならないのか?」
身体の強化は感じる、だが一度壁を壊そうとしたら、全然だめだった。
あれからもしばらく同じような薬は打たれているから、もう一度試したいところ、だけどまずはこの体の怠さからどうにかしないと力も出せない。脱出の希望は見えるが、中々辿り着くことができない。
折れちゃだめだ、希望は見えてる。
「なんか……気のせいじゃないよな?」
ある日、俺は心なしか男の象徴である"あれ"が小さくなっているような気がした。
うん、気のせいじゃない。ここに来る前の半分ぐらいにはなってるだろこれ。
「あいつらの薬の影響か?」
考えられる原因なんて一つだ。
最近体が重いのも時期的にこれが関係しているのかもな。
「なんか、このまま消えそうじゃないか?」
日に日にあれは小さくなっていっている、最近では胸が張ったような感覚もあるし、一体俺の体に何が起きているんだ?
まじでこのまま消えるとか無いよな?
「……え?」
俺は目が覚めて、ありえない程の違和感を感じた。下半身からだ。
「う、嘘だろ?」
消えていた。何がとは言わないが。
さて、一生童貞が確定したわけだが。
え、これって性別女になったってこと?
胸はまだ……あれ、ちょっと出てる?
よく聞くと声も高いし……あいつらは何がしたいの?
なんかあの後胸も結構出始めたし、生理も来た。腹痛いし体きついし、もうなんなんだ。
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「定着率は70%か」
女性化による異能の定着率の増加は確かにあった。
異能の定着率と女性化の関係はあまりはっきりと分かっていなかったが、成功しているためそこはどうでも良い。
「だが、既に完全なる女となったわけだが。まだ足りないか」
だがエレックはまだ満足しない。最低でも定着率は90%は欲しい。
そのため、彼は次の段階に移る。
「肉体の幼児化による定着率の増加は確かに納得できる」
子供は大人と比べて、何事も習得が早く得意、更に異能の発現者は基本子供である。そのためエレックは、異能は子供に馴染みやすいだろうと推測していた。
「子供であれば成長も使える」
肉体の成長、それは環境への適応、生存に必要なプロセスである。
成長と共に異能は体の一部のものと認識され、肉体と共に成長することができる。
エレックはそう考えた。
「……それにしても」
そう言ってエレックは白い部屋に居る彼、いや彼女をカメラ越しに見る。
数多の実験により完全に色が抜け落ちた、胸元辺りまで伸びている、長時間手入れされていない白い髪。
だが、その髪は長時間手入れされていないとは思えない程整っており、髪質もまるで絹のような髪だ。
全身の肌も白くきめ細やか、体のラインも美しく、体は全体的に程よい細さ。
胸は大きすぎず小さすぎず美形を保っている。全身にはムダ毛も無く、まるで雪のような体。
そして顔面レベルMAX。儚げで、可愛い。恐ろしいほどに整っている。
そんな誰もが守りたくなる、誰もが振り返る、誰もが求めてしまうような絶世の美女がそこにはいる。
「やりすぎか?」
世界征服となれば反抗するものは多くいる。そのため少しでも反抗心を減らそうと、彼らは意図的に彼女を絶世の美女に作り上げた。
エレックは始め、そんなことは考えてすらいなかったのだが、やけに積極的な同業者から提案され、一理あるとして実行したのだ。
確かに世界征服の際、人々からの反抗心は減るだろう、むしろ反抗しないものの方が多いかもしれない。
だが、同業者の中でこの美女の虜にされた者も少なくない。この美女を守ろうとし始めたり、この美女をもっといじめたいだとか、性的に襲いたいだとか、実際に全て実行に移そうとする者が現れたりだとか。
エレック達は多くない予算で計画を実行しておりこの計画は一発勝負、彼女、実験番号0番は替えが効かない。そのため万が一彼女に何かあれば、全てが終わりである。
だからこそエレックはそのようなことを実行に移す者を全て排除している。
……内部は少しばかり彼女に振り回されていると言えるだろう。
「まあいい、使えるものは全て使う」
だとしてもそれはあまりエレックの障害にはなっていない。直接妨害するでもしない限り、彼は止まらないのだ。




