第二話
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「飯だ食え」
「……」
俺の前に差し出される、不味そうな飯。色合いや臭いの時点で既に不味い。
俺はあの後、長時間変な液体や電流を刺されたり流された。激痛で暴れたが、拘束されて逃げられなかった。
そしてしばらくしてから、俺はまたこの白い部屋に戻された。部屋には監視カメラや変な機械が天井に付いている、飯も天井の機械からのものだ。
なんでこうなったんだろう。
あぁ、そうだ帰宅中に何か注射のようなものを刺されたんだっけか。
――ぐぅ~
「ハハ……腹が減った」
今は夜なのだろうか、朝なのだろうか。
あれからどれぐらい時間が経ったのか、俺には分からない。
ただ、お腹が空いた。
「本当に、なんでこんなことになってるんだよ……ぅぇ、ま、まず」
俺は空腹感に耐え切れず、差し出された飯を食べる。不味い、不味すぎる。
思わず涙が出て止まらない。
なんで俺がこんな思いをしなければならないんだ、俺は十分辛い思いをしただろう?
両親、叔母を無くした時、悲しかった辛かった。就職もやっとの思いでできたのに、毎日遅くまで残業、上司のパワハラにも耐えて、ブラックな会社でも生活のためには働くしか無くて。
いずれ裕福で幸福な人生を歩めるようになるはずだって思って頑張ってきた。なのに、なんで更に辛い思いをしないといけないんだよ。
俺の人生はいつもぎりぎりだ、いつだって『開けない夜は無い。この暗いトンネルの中には出口がある』そう思ってぎりぎりで命を繋いできた。
両親も、叔母も、俺が生きることを望んでて、そして何より俺が、生きていて良かったって、思いたかったから。
――大丈夫、例え辛くても、いつか報われるさ
「……いや、そうだ。なんとか、なるさ」
叔母も言ってたじゃないか、努力が報われると言われるように、辛い思いをすればいずれ報われる。
そうだ、今は俺の人生のどん底であるだけだ。
神様は乗り越えられない試練を用意しない、ここを凌げばきっと……。
それから俺は何度も体をいじられた。
あいつらの会話を聞いていていくつか分かったことがある。
まず、あいつらの目的は国家転覆らしい。なんでも、俺を国家転覆レベルの化け物にして力での制圧だとか。
そのために今俺にやっていることは、身体の大幅な強化と『異能』を植え付けること、らしい。
異能ってのはよく分からないが、上手くやればそれを逆手にとって逃げることができるかもしれない。
少し、希望が見えてきた。
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「定着率が悪いな」
この実験計画の指導者、エレックは、彼の測定結果を見て、少々残念そうにそう呟く。
「身体の強化は順調だが、肝心の異能がこれではな……」
彼らの目的は、国家、世界を牛耳ること。
この場所には国や世界に絶望した天才達が集まっており、その者達はエレック主導の下で、いわゆる世界征服を目指していた。
世界征服など、力で行う以外無い、そのため彼らはこうして"彼"を使って、最強の生物を作り上げようとしていた。
数十年前、この世界で初めて『異能』というものが観測された。
今のところ異能が発現するのは人間のみ。異能が発現した人間もごく僅かであり、異能というものは国で秘匿されている。
ちなみにこの世界、『コアリー』は一つの国に統治されているため、実質世界で秘匿されているのと同じである。
閑話休題。
そしてどこからか異能のことを知ったエレック達は、異能について必死に研究した。
結果、異能があれば世界征服も夢ではないと考えることができた。
だからこそ、彼らは夢を諦めず、この日まで計画を練って、実験を続けてきた。
「プランBだ、異能の定着率の高い肉体構造を探る」
異能は世界征服に必ず必要である、そのため彼らは"彼"の肉体に異能が確実に定着し、尚且つ異能が上手く使用できる状態を優先して目指す。
そうしてしばらく異能定着率を上げるための研究、実験を続けた結果。
「……肉体が女性側に近づいた時、それと子供に近づいたときに定着率が上がっているか」
エレックはそんな答えを出した。
「予算も余裕があるわけではない、探りはこれで十分だ……まずは実験番号0番の肉体を女性化させる」
そうしてエレックは同業者にそう告げた。




