25コマ目 中身
岩を砕く。そう考えたときに伊奈野が思いつくものは、杭とハンマーのセットである、
必要なものは非常にシンプルで、そのまま杭とハンマーだけである。
とはいっても、もちろんそんなものを伊奈野が所持しているわけではない。日本サーバに来ているため契約している武器たちの中にハンマーくらいは居るが、それでも杭がないしそもそもハンマーはどう考えても何かを打ち込むことに向いている形と威力をしてはいなかった。
「いや、逆にこの剣を杭として使える可能性はある?」
大剣を杭として扱う。これはある種逆転の発想といえるかもしれない。なぜならば、抜こうとしている剣をさらに深く突き刺さそうとしているということなのだから。
もし深く刺さるだけで終わってしまった場合は悲惨なことになりかねない。
だが、正直それはそれで伊奈野としては構わなかった。
岩を砕く路線で進めていっているのだから、ダメならダメでほかの方法により岩を砕けばいい、抜く気がないのだからさらに抜きにくくなることくらい問題となりえないわけだ。
ということで、
「ハンマーがないから…………久々に私の本の角アタックに火を吹かせるか」
伊奈野が取り出すは1冊の本。
普段勉強に使っている問題集兼ノートである、ただし今、この時だけそれは工具へと変化する。ハンマーの代わりとなるのだ。
今まで本が武器になることは何度かあったが、今回のように工具となるのは初のこと。こうして新たな本の使い方というものは開拓されていくのである。
「そういえば、怪しい服の人の改造した本なら簡単に岩くらい砕けちゃうんだよなぁ……ん?」
ここで伊奈野は思い出す。
岩を砕くほどの高威力の本を超える存在を。その本を取り込む、超える力を手に入れてしまった存在を。
「…………来て」
一度持っていた本をしまい、少し躊躇しながら伊奈野は目の前へと手を向けて見せる。
そうした行為は必ずしも必要ではなかったのだが、伊奈野の望み通りのことは起きた。
伊奈野の目の前には大きな裂け目が現れ、そこからゆっくりと、
「黒い本、武器になって」
黒い本が現れた。
黒い本もこの状況を理解しきれてはいないようだが、伊奈野の指示とあれば逆らうこともなくそのまま本の状態で伊奈野の手の中にすっぽりと収まった。
伊奈野はそれをしっかりと握り、こうなってしまえば剣を打ち込んで杭にする必要もないと考えると、
「『必殺』本の角アターック☆」
振り上げた黒い本を、岩へと振り下ろした。
以前ダンジョンで岩を砕いたことがあるのだから当然その威力は十分であり。岩に亀裂を入れることに成功する。
が、重要なのはそこではなかった。
黒い本が岩に亀裂を入れていくと同時に、
「ギャアアアァァァァ!!!????」
突然悲鳴のような声があたりに響き渡ったのである。
伊奈野も黒い本もその声をかなり近い距離で聞いたため耳がキンキンとして動きが止まる。
幸いなことにそこを狙って誰かが攻撃を仕掛けてくるということはなかったのだが、避けなければならないトラップのようなものはあった。
亀裂が入った岩はさらにその亀裂を大きくしていき、崩壊しだしたのである。
まだ完全には正常に働かない頭を押さえながら黒い本を握ったまま伊奈野は逃げるように駆け出していく。
「今の何?正攻法以外を使ったから祟りが起きたみたいな?」
剣を抜くということをせずに別の道で無理やり突破しようとしたためにペナルティを課された。伊奈野はそう考えたようだが、その時ログに流れるものではそういったことは読み取れなかった。
《スキル『付喪神特攻』を獲得しました》
《称号『災い回避者』を獲得しました》
もちろん、見ることなどないため認識が改められることはないわけだが。
だが、伊奈野ではない誰かは見ていたし、焦っていた。
「先輩。まずいですよ。このタイミングで賢者の師匠にあの剣を回収されると今後どうなるかわかりません」
「マジでどうしよぉ……転移事故はまだいいとして、岩に仕込んでおいたトラップを回避すんのは予想外もいいところだろ。あの剣はトラップとのセット前提で作ったっていうのに」
「ですねぇ。結構何回も会議して設定とか考えたのに。まさかこんな一瞬で大した力も出さずに消えちゃうなんて。何時間分が無駄になったんでしょう?」
「やめろ。悲しくなるからそんなこと考えるな。それよりも、対策を考えねぇと」
「あの剣、邪神特攻付きなんですよねぇ。一応レベルとステータス制限がありますから今すぐ使われることはないはずですけど……賢者の師匠なら何やってもおかしくないですし。そもそも『無視』スキル持ちなので何の条件を無視してくるかわかったものじゃありませんよ」
「『無視』強すぎるだろぉ。ふつうはあんなにレベル上がらないんだぞ?あいつぶっ壊れすぎてるって」
「とりあえず、条件と制限を増やしておきますね。これで多少は時間が稼げるといいんですけど」
短編を新しく投稿しました
「予言の力で株を買い占めたら、冷徹な氷の公爵閣下に「君の投資先は私だけでいい」と監禁気味に溺愛されています 〜婚約破棄されましたが、経済の力で王国を買い取りますわ〜」
タイトルとか大まかな流れなどはAIに丸投げしてみてます
これが人気になったら作者は泣きます




