24コマ目 鍵
お久しぶりです
あれからまた病院と親戚がもめそうになっていろいろと大変でした(白目)
もう何も起きないと、いいなぁ………
疲労がかなりたまっているので週1くらいで更新できればと考えています
「もっと勉強しなければ」
伊奈野は燃えていた。さらなる研鑽を積み、より知識と応用力を身につけねばならない、と。
理由は単純である。
知識を使いダンジョンを作成していく骸さんや炎さんに影響されたのだ。伊奈野も長いこと勉強をしてきたためそれなりに知識はあるが、骸さんたちのように何かに実際に使用して応用するという経験がない。
ダンジョンの改良を同じようにやってみろと言われても、骸さんたちのようにやれるのかという部分は不確か。これでは初学者と呼んでも差し支えないような者たちに負けてしまうと焦る気持ちが湧き出てきたのである。
ということで、勉強だ。ひたすら勉強だ。
伊奈野は年度末で忙しい人が多いからなのか久しぶりにかなりすいていた日本サーバに入り、その熱い気持ちをノートにぶつけようと考えて、
「あれ?ここどこ?」
知らない場所にいた。
本来ならば、上位存在さんの封印場所に行くはずだった。しかし、今伊奈野はそんな場所にはいない。
見覚えもなく、そして周囲を見回してみても人気がなく助けも借りられないような場所にいたのである。
「どこだろう、ここ。腕輪の転移もできないし、帰れるのかな?」
なぜこんなことになったのか。
その理由は単純である。
上位存在さんの封印が強化されたから。ただそれだけだ。
今までは伊奈野の転移と『無視』という2つの強力な能力が組み合わさって強引にすり抜けていたのだが、当然ながら侵入されていること自体は封印を施し管理している存在にも察知されていた。
当然それを放置していてくれるほど優しい相手ではなく、これまでにも少しずつ補強はされていたのである。そしてついに、少し前に施された強化によって伊奈野の力が通用しなくなってしまうほどの封印の強さになったのだ。
今回伊奈野が知らない場所にいるのは。とはいえそうした封印が完璧ではなかったためである。
本来であればそもそも転移などが発動しないしログイン場所をそこに設定していたとしても自動的に指定の場所に誘導されるような仕組みにはなっていたのだが。それが伊奈野には完全には通用しなかった。
半端に防がれてしまったせいで、またもや伊奈野は転移事故とでもいえるような状況に陥ってしまったのである。
つまり、今伊奈野がいる場所は本来であれば伊奈野は行くことがないような場所。設定上は行くことができないような場所だ。
「なんか、岩に剣が刺さってるんだけど……聖剣とかそういうもの?」
ゲーム側としては最悪なことに、この場所は非常に重要な場所。
シナリオのカギともいえるような武器が隠されている場所でもあった。
伊奈野の目の前にあるのは、巨大な岩とそれに刺さった剣。
ここまでの情報から考えればそれはゲームや物語でありがちな聖剣のようなものだと思われるわけだが、
「剣、大きくない?」
その剣のサイズというか、形が問題だった。
その剣はいわゆる剣と言われてイメージするような直剣ではなく、大剣だったのである。どう考えても勇者が使うものではなく、どちらかといえば重戦士が使うようなものだ。
「私に抜けってこと?」
もちろんそんなことはないのだが、現状することがない以上伊奈野はゲーム的なメッセージはそういうものだと考えた。
これは何かのイベントで。すべてのプレイヤーがログインすると一度これを抜くチャンスが与えられるようになっているのではないか、と考えて。
「まず岩の上まで行くのが大変なんだけど?靴で二段ジャンプできてよかった」
岩の上に立った伊奈野は、その手を無造作に大剣の柄に伸ばしそれをがっしりとつかむ。
手のひらからひんやりとしたものが伝わるが、それと同時に雰囲気に反してこの柄がきれいなものであることがわかる。
長く放置されていれば表面などがざらついていそうなものだが、これはそんなことがなかったのである。
「もしかして封印とかされてなくて、単純に誰かが突き刺して抜けなくなっちゃったとかそんな感じ?」
全くそんなことはないのだが、伊奈野の立場からすればそういったようにも見える状況だった。
それこそプレイヤーの持ち物だったりしたのではないかとすら思えてしまうのである。
「さすがに抜けなくなってるなら変なことをしても怒られないよね?」
他人のものだった場合抜こうとすることが問題ないことなのか気になってしまう。抜けなくなったのであればもうあきらめはついているだろうとは思われるのだが、適当に扱ってしまっていいのかどうか疑問に思うわけだ。
それこそ伊奈野としては、
「抜かないと帰れないとかだったら、どうにかして岩に刺さってる部分の少し上くらいで折るつもりだったんだけどなぁ。さすがにそれはダメかぁ」
武器を破損させて、抜くわけではないが一部を確保しておくつもりであった。ただ他人の持ち物の場合、それをすると何か文句を言われてしまいかねない。
となると、
「まずは普通に抜いてみる…………うぅん。抜けるわけないよね」
まず試すのは、純粋に抜こうとしてみること。決して伊奈野のATKといった物理ステータスは低くないのだが、それでも駄目なようだ。さらにここに『サイコキネシス』を追加してみても結果は同じ。
「何かの時に油とかもらったよね。使ってみようかな」
岩と剣の間に油をさすなどして滑りをよくしてみるなども試してみるが、結局は意味なし。
「もっと私にパワーがあったら刺さってる岩ごと持ち帰れるんだろうけど」
筋肉があればと今更ながらに炎さんとともに筋トレをしておけばよかったと考える……ことは特にないのだが、それでももう少しパワーがあればと思う気持ちがあることも間違いなかった。
ただ、ないものねだりをしていても仕方がない。
抜けないのならば抜くことは無理だとあきらめて早々に次の手を考え、
「岩、砕くかぁ」




