23コマ目 誘導
受験生(もちろんそれ意外にも資料を持っていたりするにプレイヤーの知識は根こそぎ奪ってきたようではあるが)から知識を奪うという外道な手法により黒い本は知識をかなり増やしたわけだが、それによる恩恵をダンジョンはかなり受けていた。
まだ現象を細かく計算できるようにはなっていないが、それでもある程度操れはする。骸さんはまず圧力を調整したりしてみたようだが、それ以外にもさまざまな分野に手を出すことは可能なのだ。
やろうと思えばそれこそ禁忌に分類されてしまいかねない凶悪な科学の活用も好き放題できてしまうのである。
とはいっても、1つが圧程度結果を見せればそこを深堀していきたくなるため骸さんが次に手を出すのはかなり先の話にはなるはずだが。
「恐ろしいですね。それこそ黒い本の場合次元の裂け目みたいなものが使えるから核分裂反応起こして自分だけ安全圏に逃げるってことができちゃいそう」
『ああ。核分裂反応とやらは禁忌に指定されておるし、大きな被害が出る前に女神が介入するだろうから無理だと思っていいぞ』
「そうなんですか?」
「はい。おそらくそのはずです。自分たちも核反応は興味があり調べてみたのですが、どうやらそこに関しては被害が大きすぎるということで女神がかなり規制をかけているようでして。それこそ、邪神であっても手は出せなくなってしまっているという話は聞いています」
「へぇ。女神の力で邪神の力を規制できるんですね」
考えることは皆同じ。そして考えれば規制だってするらしい。
ゲームの設定上対抗する勢力のトップである女神が反対のトップの邪神を制限させられるというところには違和感があるが、その辺りはさらに上からの、運営からの規制がかかっているのだろうということは予想できた。
(ゲーム上でしか試せないからやらせてほしいっていう研究機関は多そうだけどなぁ。そういう場合は専用の特別な空間を運営が提供したりするのかな?)
考察できる点は多いが、とりあえず使えないことは間違いない。
使えないのならば意味がない…………というわけでもなく、
「結構強く規制がかかってそうですね。ちゃんと許可をしておかないと使用はできないでしょうか」
『そう思うか?実は余もそう思っていてな?』
「自分たちはそれを利用できないかと思っているんですよ」
「は、はぁ」
目の色を変えた骸さんたちに伊奈野は困惑。どうやら2人には何か思惑があるらしい。
特に促したりなどしなくとも勝手にその思惑を2人は語ってくれて、
『まず第一に、この規制の強さは並大抵のものではない。そう思っているのだ。それこそ、邪神であってもそう簡単に破ることはできないほどの強さだと』
「それは……そうかもしれませんね」
そこに関しては肯定できる。
実際先ほど運営の規制を考えていたくらいなのだから。かなりの強い規制となっていることだろう、
『であるならばだ。ここで邪神の興味を核反応に持っていくことができれば邪神の時間をかなり無駄にさせてやれると思わんか?』
「なるほど?」
邪神の興味を無駄なところに向けさせて、時間を無駄にさせてしまおう。骸さんたちはそう計画をしたようだ。
伊奈野としてもこの計画には納得できる部分が多い。
いくらラスボスといってもいいような枠にいる邪神といえど、運営が核を使った攻撃を大衆向けのこうしたゲームで許可するとは思えないのだ。
もしそれを許してしまえば、間違いなく様々な場所から少なくない苦情が出るはずであるのだから。
そう考えれば、骸さんたちの思惑通りに進む可能性は高い、
が、残念ながら全面的な賛成もできず、
「核反応って、必ずしもすべてがすべて規制されているわけではないと思うんですよね。あの分野全般に興味の対象が行ってしまうと変な知識を手に入れて厄介なことになりかねません」
「厄介な知識、と言いますと?」
「私も専門ではないのでいい答えが出せませんけど、例えば…………半減期とか?」
伊奈野はとりあえず聞いたことのある関連単語を口にしてみる。
あまり詳しくはないが、これ単体であればそこまで規制が入るような知識ではないはずだ。ということで邪神がこうした知識を手に入れてしまうことも十分考えられ。
「半減期って、年代測定のために使うものですよね?そんな知識が増えたからってデメリットになりますか?」
『そのものはデメリットたりえんかもしれんが……腐敗などのプロセスの理解につながるとまずいか?下手をすれば邪神の基本的な権能の強化につながってしまうかもしれん』
「う~ん。そんなことになりますかねぇ?そこまでいくと相当深い理解が必要そうですし、核反応から外れたその辺の知識をどこまで真剣に学習するのかはちょっと何とも……」
伊奈野の発言した懸念は必ずしも間違ってはいなかったようである。
さらに言えば放射性を持つ物体の減少に関する半減期というもの以外にも、この分野にまつわる知識は多数ある。
それこそ粒子の波動性などまで知識が広がっていけばどう発展するのか伊奈野達には予想できない。
『もう一度慎重に検討せねばならんか』
「いい手だと思ったんですけどねぇ。ちょっと心配しすぎじゃないですか?」
「なら、自分たちでやってみたらどうですか?ある程度進めて関連知識に危険そうなものがなければ計画を実行するくらいでいいのでは?」
『そうするか』
「では、自分がいくつか進めておきますね。骸様も水圧関連が終わったら協力お願いします」
『うむ。もし何かあって計画が無理だとなっても余たちの利益にはなるかもしれんし、調べておくのは悪くない』




