22コマ目 更新
炎さんの知識はアップデートされる。そんなことは初めて知った。
さすがにここまでの長い期間があったのならば新しい知識が追加される機会くらいありそうなものだが、なぜか伊奈野はそうしたものを読み取ることはなかった。
そんなに炎さんに興味を持てなかったのかと問われると否定しがたい部分もあるにはあるのだが今回は幸いなことにそれが理由で気づけなかったわけではないようで、
「どうやら、そもそも自分たちが持っていないような新しい知識と言うものが追加されることはなかったようなんですよね」
「ん?それはつまり、追加自体はされていたけど先に知っているような知識ばかりだったということですか?」
「そうですね。今までほぼすべてがそうだったと思います。それこそ、より詳しいことを知っていることの方が多かったような気がしますね。間違いなく知識の追加は自分たちのダンジョン経営がトリガーになっているんでしょう」
炎さんに言わせれば、追加される情報なんて今頃なのかと思うような物ばかり。
それもそのはずで、基本的に追加される情報のキッカケとなっているのは伊奈野達のダンジョンなのだ。伊奈野達のダンジョンで実験され、結果が出てそれが重要だと判断されるからこそ知識として増やされていく。
ただ、結局そうした情報は実験した炎さんが詳しいことまで認識しているため、新しい知識を増やされたところで特に意味はなかったわけである。普段なら気になるところは全て調べるし、関連知識に穴など生まれないのだから。
だが今回は禁忌が関連しているという事もありあまり深くまで踏み込めなかったからこそこうした知識の更新が役に立ったのだ、
「じゃあ、もっと無限の活用ができそうですか?永遠の方も」
「それは少し難しそうですね。禁忌に引っかからずにできる事など移動くらいしかないので。他はだいたい全部禁止されてしまっていますよ」
「それは残念ですね。もっと禁忌関係を活用できればダンジョンも私の勉強も発展させられそうだと思うんですけど」
伊奈野としては永遠などを自分の勉強に活用したいという思いがあった。そのためある程度禁忌が許される条件が解れば使えるのではないかと考えていたわけだが、そううまくもいかないようである。
ただ、成果が何もないというわけではない。
そもそも知識の更新と言う今までうまく活用できていなかったものを上手く使う方法に気づいたため今後ダンジョン側で詳しく調べることが難しい物も軽く実験して知識の更新を待って確認すればいいという事にもなる。特に禁忌が関係するものやDPの消費量が多く手が出しづらい物も先に結果を知れるという事になるだろう。伊奈野の得られる恩恵が大きいかと問われると微妙なところではあるが、ダンジョンの得られる利益はかなりのものとなることが予想される、
実際、すでに炎さんや骸さんは活用する方法を色々と考えているようで、
「DPはかかるものの制限なく強化できるモンスターなどがいるので、今はそれにつぎ込んでみてどうなるのかを確かめています。この後能力の上がり幅が数値一定なのか割合一定なのか、あとは必要なコストがどのくらい増えていくのか知りたいので」
「そんなの分かる物なんでしょうか?元からあるダンジョンの機能だってことを考えると、後から詳しいことが明らかになるとも考え難いんですけど。確かに等差数列なのか等比数列なのか分かることは良い事だとは思いますけどね」
『それに関しては余もダンジョンマスターと同意見だな。ということで、余は少し炎よりダンジョンのシステムから外れた方法をとっているぞ。水中ステージに魔法で無理やり水を追加するとどこまで水圧を高めることができるのか試してみているのだ』
「なるほど。確かにそっちの方が説明の追加はありそうですね」
炎さんの実験は兎も角、骸さんの方は期待通りの結果は得られそうではあった。
伊奈野は感心するとともに、少なくない驚きを覚える。
「骸さんに水圧の概念があったんですね」
『ん?どういう意味だ?』
「完全な思い込みですけど、骸さんが水圧と言う概念に詳しいとは思っていなかったので。そもそもそんなもの知らないし考えたこともないと思っていました」
それこそ水圧の詳しい仕組みなど勉強をしていない伊奈野の方が知識では負けている可能性がある。そんなことを思えるほどには衝撃的な発想だった。
もともと水圧と言う概念はこのゲームの中では一般的なのか。それとも何かしら今までの経験(と言う名の設定)で関わることがあったのか。伊奈野としては気になることが多く、それこそ特定の分野はこのゲームの中で本を読むなりした方が知識を深められるのではないかと思うわけなのだが、
『これはグリモワールから得た知識だぞ?ダンジョンマスターの知識ではないのか?』
「え?黒い本の知識?確かに物理基礎のデータは入れ込んだ気がしますけど…………」
伊奈野は目を見開き、黒い本へと視線を向ける。
そこには当然、自分の与えた知識だけでそこまでの詳しいことを知れたのかと言う驚きが込められている。
そうして視線を受けた黒い本は伊奈野の近くに寄るよう合図を出した後机の陰で人化して伊奈野に耳打ちをして、
「ご主人様みたいな人達が図書館にいたから、そういう人のノートを盗み見して学んだの」
「受験生のノートを勝手に観たってこと?それはまたひどい…………」
バレたら問題になりそうなことを平気で口走っている。
持ってきているデータも問題集などのコピーだったりする可能性が考えられるため、それを学習してしまっていれば著作権などの面で問題が起きかねない。
場合によってはゲーム側の責任問題となってしまう事すら予想される。
ただ、逆にそこにさえ目をつむればかなり利益のある行為であることも間違いない。
伊奈野も含んだ受験生の関わる学問は様々なことの基本になる部分であることが多いため、そこの知識さえ押さえておけば色々と応用が利くのだ。伊奈野のカバーしていないような物理や地学なども学習すれば、黒い本の知識の基礎はかなりしっかり固まることになる。
こうして骸さんなどにアドバイスをすることだってそう難しくはないというのも当然の事だった。
《スキル『偵察指示』を獲得しました》
お久しぶりです
親族関係や確定申告などの問題に振り回され(振り回し迷惑をかけ)ていたらいつの間にかこんなに時間が………
親族関係がまだ解決していないので今まで通りにではないですが。またぼちぼち更新していきます




