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44話 僕達と盗賊 アンカーへ到着。




 翌朝。まだ朝霧が残っているくらいの時間にガタゴトガタゴトと音を立ててゆっくりと山を登るのは僕達が乗っている幌馬車。何かの拍子で馬が歩けなくなってしまったり、最悪切り離されて、馬車が山道を逆走する事のないように気を付けて進む。


「もう少しで山頂です。海が見えますよ」

「海!!」


 僕はガンズ周辺からは出た事ないから、海を見るのは初めてだ。蒼くてどこまでも広いと噂の海。


「さぁ、見えますよ!」

「おぉおおおおー!!」


 遠く、遠くの方で、陽の光を反射して煌めく、蒼い海が見える。まだ木々が多くて遠くの方しか見えないけど、きっと近くで見れたらまた別の感動を感じられるのだろうなと、ワクワクする。


「まぁ、今は海賊も山賊もいて、観光には向いていないのですがね」

「あ、」


 そうだった。そもそもそいつらからルクソンの親父さんを助ける為に来ているわけだから、あんまり楽しめはしないかもしれない。

 そうしょげていると、そんな僕を見兼ねてか、レギオンさんが口を開く。


「と、言いましても、あちらの領主にも協力してもらい、事が早く済ませられる様、連絡は済ませてありますので、多少時間は余るかもしれませんよ。ワタクシも元々白銀級冒険者ですので」

「おぉー!期待してます」

「はい」

『僕も海見るの初めてだから楽しみー!』


 ワクワクするなぁ!!





 と、思っていた時期もありました。太陽が真上くらいまでに差し掛かった頃、山を降りきり、整備されている街道まで出れた所でなーぜか柄の悪い男達に囲まれてしまう僕達。

 検問の様に街道を塞ぎ、僕達の前で顔全体が剛毛で毛むくじゃらな男が声を荒げて怒鳴る。


「悪いこたぁいわねぇ!!この街に近づくな!!無理矢理通ろうもんなら、金目のもん全部奪って皆殺しだ!!!」


 悪漢の数は大体二十人程。中央の男は凄く山賊っぽいし、大多数はそれっぽいのだが、その中に三人くらい、明らかに雰囲気の違う人間がいる気がする。目付きが違うというか、ただの盗賊ではなさそうだ。

 と、考えていれば、レギオンさんが御者席を降り、一人前に行く。僕とリーゼさんが慌てて降りようとしたが、目で制され、ミスケルにも手を掴まれてしまう。


「何故止める、ミスケル」

「だぁい丈夫だ。交渉するなり、戦いになるなり奴は負けねぇよ。腐っても元白銀級冒険者だぞ?」


 そう言われるとなんとなく安心感が。ゼミスがそこにいると考えれば楽勝な気がしないでもない。


「なんだぁテメェ。目が見えてないのか?」

「いえいえ。ワタクシの目はソニックホークより遠くを見定め、増殖蜘蛛よりも周りを見渡せますとも」


 なんかよくわからない例え方するなぁ。


「なんだあの例え」

「ソニックホークっつのは鳥の魔物で、エゲツねえ距離から獲物を見つけ、これまたエゲツねぇ速度で突っ込んできて掻っ攫ってくやつで、増殖蜘蛛は……っとこの話は後にするか。やるみたいだぞ」

「うん」


 そういえば、レギオンさんって強いって話は聞くけど戦闘スタイルとか全然知らないんだよな。どんな戦い方するんだろう。


「ワタクシ、元白銀級冒険者のレギオンと申す者なのですが、それでもここを通さぬ……そう仰ると?」

「白銀級……?!」

「馬鹿め!!白銀級が何でこんなところで執事の姿で御者なんぞしてるんだ!!テメェら、やっちまえ!!」


 確かにそれにはちょっと思う所はあるけど、真偽を確かめずに攻めてかかるのは失敗だと思うなって目の前の光景を眺める。

 僕もきっと馬鹿みたいな顔してるんだろうなって思う。だって意味わからないもん。


 執事姿のレギオンさんが腕を振るえば、盗賊が否応無しに吹き飛ばされ、防御もできず、剣も槍も弓も取り上げられて、近づく事さえ叶わず倒されていく。


「凄い……」

『すごぉおおおい!!見て見てグロース!!すっごい高く飛んでる!!楽しそう!』


 ファイが見上げた先に、叫び声を上げながら、高く高く投げ飛ばされている山賊がいた。いや、あれは絶対楽しくない。


「凄まじいな。私には何が起こっているのか、今のところ全く理解できないが」


 レギオンさんは表情一つ変えず、微笑みを絶やさず。いつだったかガンズに来ていて、母さんに見せられた音楽団の団長が指揮棒を振るうように、しなやかに両腕を踊らせる。

 盗賊は鮮やかに吹き飛ばされていく。


 数分。たった数分で、盗賊は全員戦闘不能まで追い込まれ、街道の邪魔にならないように積まれていた。底の人とか凄く苦しそうなんだけど大丈夫……ではなさそうだなぁ。

 しかもなんだか、僕が確認した以外にもいたらしい黒装束の人間まで山に積まれてるんだけど。いつから気付いてたんだろう。


「さて。グロース殿、如何しますか?この場で処分しても良し。拘束して町まで行くも良し。あまり良くはありませんが、逃しても良しですよ?」

「いや、逃しちゃダメでしょう?あと、処分というのもちょっと……」

「おや。お優しい。ではとりあえず先程の男を……よいしょっ」


 レギオンさんが見えない何かを引っ張るように手を引くと、山賊の山から、先程の怒号を発していた毛むくじゃらの男がズルズルっと引き出された。


「いでぇっ!?」

「幾つか、お話よろしいでしょうか?」


 そう言いながら山賊に向けられたものは、いつもとは違う、とても凄惨な笑みだった。





 それから結局山賊全員を縛り上げ、レギオンさんは指を折りながら語り出す。


「纏めますと……、彼らはルクス様を誘拐した一味に雇われている下っ端山賊で、あの黒装束の者は、見張りにあたるそうです」

「いやにあっさり話したな」

「ご、拷問したんですか?」

「いえいえそんな。お話を少々……しただけですよ」


 いや、絶対嘘だ。ちょっと教育に悪いので離れていただいてって言われて離れてたわけだけど、そこから聞こえてた悲鳴の数々。確実に何人かの山賊が何かされてる。じゃなかったら、あんな呆けてない。もうなんか魂口から出てそうだもんあれ。


『出てないよ』


 わかるの!?


 いや、ちょっと衝撃だったけどそれはさて置き。


「次からが重要な話です。見張りの方から聞き出せた話ですが、二日後ヘルズニアの船が秘密裏に来航するそうです。そちらにルクスが乗船予定なのだと」

「ええ?待って、ヘルズニアの船がなんでこっちまで来るんですか?ルクスさんって本当に何者??」


 しかもヘルズニアからって滅茶苦茶遠いぞ……?ディレクトルを挟んで更に東の方の大陸に行かないといけないし……。


「ワタクシの口からはなんとも……」


 でも、レイベル伯爵よりも上の貴族だって言ってたし……。というか伯爵の上ってなんだっけ……。


「まぁ偉い人って事さえ覚えときゃいいよ、グロースは」

「うん」


 良いのかなぁ?


「さて。情報も得られた事ですし、彼らを連れて進みましょうか」

「このまま?」

「いえ。流石に歩かせますよ。ねぇ皆さん。立てますよね?」

「「「はい」」」


 うわぁ。呆けたまま一斉に立った。この人何したんだ??


「よろしい。では行きましょうか。これだけ近い距離にこれらがのさばっているということは、アンカーもあまり良い状況ではなさそうですね」

「確かにな。だがそれならこいつらゾロゾロ連れて町に入るのは大丈夫なのか?目をつけられないか?」

「問題ないでしょう。どの道ルクスを拐っている時点で警戒は最大限にしているでしょうし」

「そうか」


 とりあえず納得はしたのか、ミスケルは幌馬車へと戻る。


「馬車に奴等を繋ぎます。後ろをワタクシが。御者はミスケル殿にお願いします。グロース殿は馬車の左側を、リーゼ殿には右側に付いてもらい進みましょう」

「了解です」


 そうして、盗賊を拘束し、進む事一時間程。白くて綺麗な壁に囲まれた街へと辿り着く。

 手続きはミスケルに任せて数分。盗賊達は数十人と集まってきた衛兵に連れて行かれた。


「ちょっと時間は掛かりましたが、ようやく着きましたね。ワタクシは領主殿に用がありますので少し離れます。ルクスの容姿は伝えましたよね」

「はい。淡い水色の髪で、銀色の瞳をしている軽薄そうなお兄さん……なんですよね?」

「そうです。前髪が鬱陶しい感じで、ニヤケ顔のイラつく男です」


 説明に棘があるなぁ。


「海の近くに、さざめき亭という宿がありますので、そちらで集合としましょう。予約はこちらの方で取っておきますのでお気になさらず。それでは」

「了解です」


 言うことを言うだけ言って、レギオンさんは足早に去っていった。


「……それじゃ、探そうか?」

「そうだな」


 なんともしまりのない様な状態から、ルクスさんの捜索が始まった。

 


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