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45話 僕達とメイド男と紅の精霊使い





 野を越え山を越えやっとこさ辿り着いた港町アンカー。知らない土地で別れて探すのもちょっと怖いので皆で捜索する事にした僕達です。

 

「淡い水色の髪ってのだと結構この辺だと限られそうだな」

「そうなの?」

「そうなのってお前、ブレィブリィ周辺だとあんまり見ねぇ髪色してるからな。この辺だと、黒か金か、あるいは茶髪くらいが多く見かける髪色で、ゼミスみてぇな緑の髪とかは結構珍しいもんだぞ」

「へぇー知らなかった」

「まぁ……そこまで気にせんか」


 ミスケルが少し肩を落としていると、リーゼさんが自身の髪先を摘み、


「私の髪色なら、どの辺が多いとかあるのか?」

「あぁー?リーゼは赤茶だからなぁ……。ワシもあんまり見た事はないが、いなくはない程度かねぇ」

「そうか……」


 意外といそうな色をしてるんだけど、確かにあんまり見ないんだよなぁ赤茶色の髪の人。一応この辺も気を付けて周ってみようかな。


「しかし……綺麗な街並みをしているのに、どこかどんよりとした雰囲気をしているな、ここは」

「ですね。活気が無いというか、ちょっと怖がってるみたいな……」


 街は海に向かう程に狭くなる扇型で、建物は屋根が何かの殻のような茶色い物で、一律明るめの白い壁で統一されている。遠くの方で海面が太陽で照らされて、眩しいとさえ思える風景なのに、それを上回るくらいどんよりとした雰囲気で覆われている。


「……先程の盗賊の様な見た目の輩が増えてきたな」

「冒険者って可能性も捨てきれませんけど、周囲の方の反応を見てると……」


 そうなんだろうなぁ。街中でも平然と闊歩しているのを見ると、かなり危険な状況なのではとさえ思う。流石に街中じゃ襲われないだろうけど、気をつけておこう。


 暫く歩いていると、[オクトー通り]と書かれたアーチのある市場の入り口が見えてきた。


「市場っぽいが……」

「閉まってますね。開いているお店もありますけど……」

「キュ!!」

『なんか良い匂い!!』

「お、おい!?」


 僕達の困惑を他所に、セイランとファイが、勢い良く飛び出していく。


 僕達は慌ててファイ達の後を追うと、そこには、やたら顔が良く、程よく筋肉質で、腕や足が見え、ニコッと笑顔を浮かべて大きな魚の尾を両手で持って奥様方に囲まれている。淡い水色の髪のメイド服を着た男がいた。


「こちらマナを潤沢に含んだ海で培養した、エルダーヴァイト!!永く生き、引き締められた魚体!!その身には溢れんばかりのマナが凝縮され、一度食べれば身事蕩け、肉体に還元される至高の一品!!一匹辺り金貨百枚!!安いよ安いよ!!」

「いや、安くないわよルクちゃん!?」


 突っ込みどころ満載過ぎるだろ……?


 もうルクちゃんとか呼ばれてるし、見なかった事にしたいくらい今の風景を受け入れられない。拐われたんじゃないのか!?

 街中はどんよりしてたのに、ここだけ凄く異質な雰囲気を発してるんだけど。お店が畳まれてて、閑散としてる中でメイド姿の美丈夫が、やたら高級な魚を叩き売りのようにして、やたら高く売ってるんだ。


「えぇ……」

『グロース!!これ食べたい!!すっごい食べたい!!丸焼きにしよう!?』

「キュキュキュキュ!!!」


 可愛らしい二匹が、目を輝かせて魚を要求してくる。違うそうじゃない。そうじゃないだろう君達。


「おいおいおい!遂に僕は魔物まで魅了してしまったのかなぁ!?」

「何この子!?可愛い〜!」

「ルクちゃんそれ安くならないの?!」

「待って順番守りなさいよ!!私まだルクちゃんと喋ってないんだけど!?」

「まぁまぁ、お嬢さん方!!僕は何処にも行きはしませんよ……そう、僕はここで魚を売らねばならないからね!!」


 金貨百枚なんて、一般の方は持ってませんけどね!?


「何とかしてあのカオスな空間を突破しないと……ってリーゼさん?!」


 リーゼさんは、メイド姿の男の周りにいる女性達を強引に退かして、前まで歩いて行く。


「な、何よ!!横入りとか許されないんだけど!?」

「……すまない。私はこの男に用があるのだ。少し時間をくれないか?」

「は、はひ……」


 うわぁぁあ!凄いキラキラしてる……!凄い本当の騎士様みたいだ。いや、騎士様なのか。いやいや、本当の事はわからないけど……。正直可愛らしいと思っていたんだけど、やっぱり所作は騎士様っぽくてかっこいいんだよなぁリーゼさん。もうかっこいいと可愛いが同居して、最強なんじゃないかリーゼさん……!?


「ぐ、グロース?何百面相してんだ?」

「あ、いや、何でもない」

「しかし、アレが誘拐されたルクスって奴なら、このまま確保して終わりか?」

「流石にこのまま確保は出来ないんじゃないかなぁ。というか今更なんだけど、接触しちゃって大丈夫なのかな」

「行けそうな気もするが。ワシならあの変態は野放しにしない」

「流石に逃走防止に何か魔道具を仕掛けてる可能性も……ないかなぁ?」


 と話しているうちに、リーゼさんがメイド姿の男を連れてやってくる。大量の奥様方も一緒だ。


「ちょ、ちょっとやめたまえ!僕はあの店から離れようとすると身体に電……ッ??!!」

「うわ」


 ビリビリビリッと首に嵌められていたチョーカーから電流が流れて、メイド男が痙攣しながら、その場に倒れてしまう。


「ああー!ルクちゃんが!!」

「何してんのよアンタ!!」

「アンタ達この女の仲間!?ルクちゃんに何すんのよ!?」

「ええー!?僕達何もしてな––––」


 押し寄せる奥様方に言い訳しようとした瞬間、思わず耳を塞いでしまうような大きさの怒号が市場に響き渡る。


「テメェ!!また逃げようとしたなァ!?」


 声が聞こえた方向を見れば、店の奥に、荒々しい紅髪を、無造作に伸ばしている暗い紫色のローブを着た男がこれでもかというくらい目を釣り上げて、鋭く赤い瞳でメイド男を睨み付ける。


「ち、違う!!僕はこの子に……!」


 と、メイド男はリーゼさんを指差すが、それを見た紅髪の男はつまらなそうに見て、口角を上げ、目を細め、次の瞬間先程の怒号を更に超える声量で怒鳴る。


「テメェまたナンパしてんのかァ!?ぶっ殺すぞ!!!!」

「ヒィッ!?」


 怒号に耐えきれず、周囲の奥様方は蜘蛛の子を散らすように、そそくさと逃げ出し、残るは僕達と、涙目になるメイド男。


「ナンパは僕の使命だ!!」

「うっせぇんだよクソ男!!!!」


 涙目ながら、胸を張りそう言い張るメイド男の頭を思いっきり叩き倒し、肩で息をしながら怒りを収めるように目を瞑る。


「わりぃなテメェら。コイツは非売品だ。二日後には国を出る予定だし、あんまり深く関わんねぇ事をオススメす……って、テメェら、検問を抜けてきた冒険者か!?」


 と、目を開きこちらを見た男は、ギョッとしながら僕達を指差す。

 僕は頬を掻きながら苦笑いを浮かべると、男はわなわなと身体を震わし……。


「………………あぁ何見てんだよ。別に何もしねぇよ」

「え?何もしないんですか?」

「…………………………」


 すっごい考え込んでる。正直すぐにでも攻撃を仕掛けたいって顔に書いてあるけど、すっごい我慢してる……。


『あははー!面白いね!グロース、ちょっと遊びに行くね!』


 ええーいきなり!?自由だなぁ!?別に遊びに行きたいなら後ででも……。


「うるせぇ!!今忙しいから、遊びてぇならどっかいけ!!」

「え?」

「あぁん?」

『行ってくるー!!』


 お、おう。行ってらっしゃい……。なんだろう……会話が被った気がするんだけど……。


「もしかして、精霊使いの方ですか?」

「………………あぁ」



 謎な一体感が僕達を包む。


「……わりぃが、同じ精霊使いでもコイツをくれてやるのはできねぇ。詳しいこたぁ言えんがな。ギルドからの依頼とかで来てんなら、断っとけ。俺が違約金なら払ってやる」

「え、えぇ……」

「悪いが、ギルドからの依頼ではない。この男の肉親からの依頼だ。私はこの男を必ず連れ帰ると約束した身だ。力づくでも拐わせてもらおう」

「あぁ??テメェ……」


 うわぁ、一瞬大丈夫そうだと思ったけどやっぱダメそう。一触即発って感じだ。


「きゃー。私の為に、争わないでぇ!?」

「うぜぇ!?」

「ぐふぅ……青年。僕はもうダメだ、後は……頼ん、だ」


 そこそこに気持ち悪い裏声で、リーゼさんと紅髪の男の間に入り、間髪入れずに殴られて僕の前で崩れ落ちるメイド男。

 なんだかわからないけど頼まないでくれ。


「俺達は逃げも隠れもしねぇ。やれるもんならやってみろ。だが、ここで戦いになりゃ、俺は手加減しねぇ。周りを巻き込んでいいならやってやるがな」

「……」

「リーゼさん」

「……あぁ。ここは引かせてもらう」

「帰れ帰れ」


 リーゼさんは剣にやりかけてた手を引き、息を吐く。


「因みに……お名前を聞いても?」

「テメェ……この状況でそれを聞くのか?」

「あ、すいません、気になっただけなんです」

「気になったから聞くのか……最近の若え奴はわからんな。まぁいい、精霊使いのよしみだ。教えてやらァ。俺は、ネロだ」

「ネロさん……」

「テメェは?」

「僕は、グロースです」

「そうかァ。良さげな名前だなァ?」

「ありがとうございます。へへ」


 やはり謎の一体感。なんか口は悪いけど、悪い人じゃなさそうな感じがするんだけど……。


「グロース」

「あ、すみません……」


 リーゼさんが責めるように僕を呼ぶ。


「おう、テメェの名前はなんだ」

「敵に聞かせる名などない」

「あぁ?やっぱりここでおっぱじめっかァ?」

「ネロ。僕はお腹が空いたよ!!」

「うるせぇ!?」


 剣呑とした雰囲気になりそうになると、またメイド男が同じように叩き倒される。なんかこれ、わざとやってないか?


「チッ。まぁいい。さっさと帰れ」


 ネロは店の中にメイド男……ルクスを連れて戻って行く。というかあれでルクソンという息子がいるんだもんなぁ。ルクソンになんて言えばいいんだ?


「とりあえず、目当ての人間は見つかったんだ。ギルドに寄って、んでもって宿へ行こうぜ」

「わかった」

「了解です」


 なんとか穏便に済ませられないかなぁ。


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