41話 僕達と伯爵
連続投稿できませんでした。スヤっとしました。
最近本当に耐え難い眠気に襲われるんですよね。
「私がシトナ・レイベル伯爵だ」
そう、レイベル伯爵が名乗った瞬間、僕はなんともなかったのだが……リーゼさんが腰を低くして即座に臨戦態勢に入り、ミスケルがその後ろに速やかに隠れ、セイランとファイが身構える。
「……ほう?良い反応だ。金級と銀級のパーティと聞いていたが……従魔も、良いな」
「なんのつもりだ貴様」
「えっ?えっ?」
レイベル伯爵は舌舐めずりをしながら、リーゼさんとセイランを流し見し、僕へ視線を向ける。
「あぁ。少年には何も向けていないからな。状況がよくわからないのは仕方ない。端的に言えば、私が彼女達に殺気を当てただけなんだが……」
戯けたように片目を瞑り、リーゼさんを見やるレイベル伯爵。リーゼさんは息を吐きながら臨戦態勢を解く。
「ふむ。戯れが過ぎたかな。謝罪するよ」
「あービビった。ワシには刺激が多過ぎるぞ」
「あぁ、ミスケル。久しいな」
「あぁ。まぁまたアンタに会う事になるとは思ってなかったがな」
「私もだ」
ミスケルはのそのそと歩いて、僕達の前まで出ると、レイベル伯爵と話し始める。
「立ち話もなんだ。座りたまえ。レギオン、茶を」
「かしこまりました」
レギオンさんは一礼して退出し、僕らはソファに腰掛ける。
「……さて。諸君は何故呼ばれたのか理解できていないだろう。まずその話をしようか」
「おう。実の所それがよくわからんよな。ワシもグロース達から話は聞いてるが、お前さんが興味を持つ理由が見当たらん」
「だろうね。まぁまずはなんだ……『日本人』って意味がわかるだろうか?」
「「??」」
な、なんて?
「よし。わからんか。そうかそうか。これで大半の要件は済んだわけだが……確か、リーゼといったか。君は記憶がなくなってしまったらしいが、その後進展はあったのか?」
「……言わなければいけないのか?」
「おっと。そう殺気をもらさないでくれ。……しかし、そうか。……うぅむ」
最初の妖艶な雰囲気はどこへやら。レイベル伯爵は顎に手をやり、考え込む。
「あの、何かあったんですか?」
「何かがあったわけではない。あったわけではないのだが……そうだな。簡単な依頼を君達に頼みたい」
ええー。なんか面倒くさそう……。
「そう嫌な顔をしないでくれ。君達の目的を阻害もしないから」
「本当ですか??」
「あぁ。本当も本当さ。君達の目的は精霊がいるとされる遺跡を周る事だろう?」
「そうですけど」
そこでだ!とレイベル伯爵は声を張り、指をパチンと鳴らす。
そしていつの間にやら部屋に戻ってきたレギオンさんが、飲み物を置いていく。
「ありがとうございます」
「はい」
「鮮やかに中断されたけどいいかね?」
「す、すいません」
「君達にする依頼はこれさ」
と、懐から取り出されたのは三つの封筒。それぞれ、赤い紐と青い紐と白い紐で括られている。
「この三つの封筒をそれぞれ、精霊の遺跡の近くにある都市のギルドマスターへ渡してくれ。どのみち寄るだろう?報酬は金貨三枚。どうだ?」
「寄りますけど……」
なんか嫌なんだよなぁ。それだけに金貨三枚なのも怪しい。
「ズズ……うめぇなこれ。でよ。その封筒、内容は変なもんじゃねぇよな?」
「勿論。近況報告の返事だ。君達も気を付けるといい。最近遺跡からの魔物の氾濫が多くなってきているからな」
「そうなんですか?」
「そうだ。元々は一年から半年に一度くらいの頻度で、起こっていたものなのだが、ここ三年程かけて、緩やかに数を増やしている。故に近隣のギルドに調査をさせているところだ。王都でも同様に確認されているからな。情報伝達は出来る者にやらせておきたいわけだ」
「でも、そういうものを、ただの冒険者にやらせていいんですか?」
普通はありえないが、とレイベル伯爵は僕を見る。
「あのゼミスが信用できるというのだから、使わないという選択肢はないな」
「ゼミス!?」
あいつ行くところ全てで名前が出るな!?
「君達が訪れる少し前に、アポも無しにやってきてな。自分は暫く旅に出るから、用があったらグロースを頼れと言われたよ。なので、頼らせてもらおうかと」
「原因はあいつか……!」
「あっはっはっは!その反応でどういった関係か何となく察せられるな。それで、受けてくれるかな?」
両隣に座るリーゼさん達を見るが、僕に一任……かな。
「届けるだけでいいんですよね?」
「あぁ」
「お受けします。届けるだけですからね」
「よし。頼んだよ。何か質問が無ければ帰っていい」
「はい。二人は特にない?」
「おう」
「あぁ」
『僕質問したい!!』
「ファイ??」
今帰る雰囲気だったけど、どうしたんだ?
『その人から––––様の匂いがするんだ』
誰それ。精霊?
『違う……?神霊様の匂いだと思う。なんでなのか、知りたいんだ』
「うん?」
紫紺の瞳を見つめ返し、僕はファイの問いを伯爵に掛ける。
「……そうか、精霊使いという話だったな。それは確かに、気になるか。この世に十柱しか存在しない神霊。その人柱に加護をいただいている。私には見えていないが、それで納得いただけたかな?」
『納得〜』
「納得したそうです」
「そうか。もういいかな。思ったより長引いてしまったし、ここらでお開きとしよう」
なんだかよくわからない心の取っ掛かりを残したまま、僕達は領主邸を後にした。




