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39話 僕達とどこぞの使者

全然投稿しなかった割に短いです、すいません;;





「着いたー!」


 と、声を上げるのは勿論僕。凝り固まった身体をぐっと伸ばしながら、手をあげる。


「んー長かった」

「道中魔物も出たしな。随分と陽も落ちちまったし。入ってすぐに宿を取ろうぜ」

「だねぇ」


 乗合馬車の御者さんにお礼をしてから、シルズの門番へと声を掛ける。


「ソーズから来ました、冒険者パーティ、セカンドブレイバーズのグロースです。他、金級冒険者のリーゼと、同じく金級冒険者のミスケル。あとは従魔のセイランです」

『僕もいるよー!』


 知ってる。


「……確認した。入るといい。この道をまっすぐ行って、大広場に出て、右側の大通りを直進した先に、俺の叔父がやっている大楯投擲亭という宿がある。従魔同伴可能の宿だ。良かったら利用してくれ」

「ありがとうございます!!」


 ……大楯投擲亭??すんごい名前の宿だなぁ。


 暫く道なりに進み、紹介された大楯投擲亭の前まで着く。すごくわかりやすい。濃い緑色の大楯のエンブレムが掲げられた、三階建くらいの大きな宿だ。


「手続きはワシがしよう」

「頼みます」


 宿へ入ると、正面にカウンターがあり、ミスケルが挨拶を交わしている。知り合いなのか?

 そのカウンターの右側に両開きの扉があり、入ると、暖色の光を放つ魔石の付いた高い天井とふっかふかのソファと綺麗な石の長机が並んでいるエントランスが広がっていた。


「凄い綺麗だなぁ」

『広ーい!!』

「……大丈夫なのか?高くないのか?」

「確かに……。凄く高そう……というか、冒険者が泊まってそうにないんだけど」

「問題ございませんとも!!」


 どこから現れたやら、聞いたことのある声を全体に響かせ現れるのは、オールバックに金髪の執事姿になっている、いつぞやの使者。


「レギオンさん!?」

「お待ちしておりました。グロース殿。リーゼ殿。ワタクシ、領主様がご用意した高級宿、大楯投擲亭の管理者、レギオンで御座います」


 優雅に礼をするレギオンさん。いや、それよりも、


「お待ちしておりました??」

「ええ。我が主人はグロース殿達がこの街へといらっしゃるのを、それはもう心待ちにしておりました」

「心待ちに??」

「はい」

「おいおい、部屋とってる間に、なんでこう妙なのに絡まれてんだ?」


 鍵を持ってこちらへ歩いてきたミスケルが、レギオンさんを見て、嫌そうな顔をしている。


「おやおや、ミスケル殿。あの時以来ですかね??」

「あぁ。お前に執拗に迫られて以来だな」

「執拗に」

「迫られて??」


 リーゼさんと僕が首を傾げていると、ミスケルがバックパックを指差して、


「コイツの噂を聞いて、ディレクトルまできて、売ってくれ!!ってな」

「断られてしまいましたがね」

「それで、グロース達に何の用なんだ?」

「大した用ではないのですけどね。是非我が主人へ、お会いしていただきたいのです。勿論、強制ではございませんが……如何でしょう?」


 ……え、本当に何の用だろ。リーゼさんへの勧誘は断ったし……。


「ここで内容を聞く事はできねぇのか?」

「いや、寧ろ会う事が必要と言いますか……申し訳ございません、ワタクシにも主人の意図がわからず……」

「まぁなんだ。コイツは兎も角、コイツの主人は信用出来ると思うぜ、グロース。まだ代替わりをしていないなら、レイベル伯爵のままだろ?」

「ええ。しかし、ワタクシの事は信用出来ないのですか?一応白銀級の冒険者でもあったのですけど?」

「階級とテメェの人格は別物だろうが。正直テメェと意気投合した伯爵がどんな奴かと思えば、会ったら会ったで話のわかるやつだったからな」


 なんか不敬罪になりそうな会話してるんだけどこの人。


「不安そうなお顔をしなくとも大丈夫ですよ。このくらいじゃ何もしませんとも」

「まぁ、レイベル伯爵は、ブレイブリィの中じゃ力の強い貴族ってのは聞くから、あんまり雑にするのも良かねぇが……」

「それで、如何ですか?日を改めても問題はございませんが……」

「どうします?」

「私は別に……」


 リーゼさんはちょっと嫌そう。僕はどっちでもいい。


『早く甘い物食べたいなぁ』


 ファイはそもそも我関せず。


「キュッキュ」


 セイランはファイと一緒に体をゆらゆらと揺らしてなんか言ってる。


「ワシはどっちでもいいぜ」

「うーん。とりあえず、今日はやめて、明日伺うという事でいいですか?」

「……ええ。問題ございません。では、明日の昼頃にお迎えにあがりますので、それまでにご用意をお願いいたします」

「はい」


 レギオンさんは一礼して、速やかにエントランスから出て行った。


「……しかし、なんでアレに目を付けられてんだ?」

「それは、かくかくしかじかで……」


 通じろ僕の思い!!


「よくわからんが、会う機会があったんだな。記録晶かなんかに映像を撮られて、レイベル伯爵に見られたんだろうな」


 伝わってないけど伝わった!?


「因みに、レイベル伯爵ってどんなお方なんで??」

「…………悪い奴ではない。ただ癖が強いんだ。貴族が皆そうってわけではないんだが……あと、一応ディレクトルの王太子と若干の繋がりがあるとかなんとか。あの王太子に気に入られている時点でなぁ」


 ディレクトルは行く機会が無いと思ってたから、正直全然わからないんだけど、王太子様、そんな変な人なのか?


「まぁ、ワシ達が関わる事は殆どないはずだ。王太子の事は気にするない」

「ですね」


 ちょっと気になるけど、エントランスでいつまでも話してるのも他のお客さんに邪魔になりそうなので、取れた部屋に移動する。


「うわぁ……広い……」


 取った部屋は二つ。僕とミスケルの部屋と、リーゼさんの部屋……。


「明らかに高級宿なんだけど。ベッドふかふかだし……待って、まさか……」


 部屋に隣接された扉を開けると、そこには……伝説のお風呂が……お風呂があった。お貴族様しか使えないと噂の、お風呂だ!!


「まさか、こんな所で会えるとは」

「おう。因みにディレクトルには、全宿に設置されてるぜこれ。王太子の政策で、何故か風呂の設置が進められてな……大衆浴場っつー一般人も使えるデケェ風呂もあるぜ」


 王太子……何者なんだ??いや、王太子なんだろうけど。


「なんでも、滅茶苦茶な風呂好きなようで、風呂がないなんて考えられないっていうくらいには好きらしい」

「へぇー」


 そんな理由で国中にお風呂を設置する王太子がいるんだ。……それと仲がいいらしいレイベル伯爵って。


「さて。明日もあるんだ。ささっと飯食って風呂入って寝ちまおうぜ」

「だね」


 僕は人生初のお風呂を経験しつつ、満足感を得ながらベッドに身を沈ませた。

 というか本当にお金大丈夫かな………………。



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